第2話 たまたまがなってしまう

「春はちんちん。

 ようよう大きくなりゆくマラには、少しシコりて、

 イキリ立ちたる竿は強く輝きたる。」


きんたまをみつけた。


というか、きんたまに似た生き物を見た。


路地裏でTIN QOS(マルミエ5mmハード)を吸っていたらゴミ箱の後ろにきんたまが

1セット(ニコイチ)あった


ひょいと拾い上げるときんたまは芋虫のように蠢き、私は気味悪く落としてしまった。


おチン、じゃなく落ちない


気球か凧のように少し風に煽られながらも上下に揺れつつ浮いている


「...」


咥えていたタバコが口から滑り落ち、灰がきんたまへ降りかかろうとした。


するときんたまの周りに透明な球体のシールドが出現し、

そのシールドの上に灰が積もった。


私は慄き、腰がヘコりと地面に萎え落ちた。


そのまま呆然ときんたまを眺めていると、やがて、テカテカとした円から黒い毛が生えてきた。


「成長…している…?」


頭に【幼体】という文字が浮かび上がった。


生物は2種類に分けられる

卵を外で育てるか中で育てるか


我々人間は胎内を選んだ。


胎内での命は、母体に依存し、常に保護者と共にあるため安全だが、その分母体には多大な負担がかかる。


一方、卵は母体から離れ、生まれて直ぐに孤独を味わう。

卵は母体に依存しないため、数を産み、繁殖が大量にできる。

だが、外敵にはめっぽう弱く天敵には格好のエサと化す


         「もしその弱点を消すことが出来れば…?」


さながらダンテの考えている人(ロダンの考える人)の如く顎に手を当てて(唇に手を当てて)思考を巡らせていた私(32歳童貞Fラン卒コンビニバイト7年目)は、目に黄色い刺激を感じ、思わずその出処に目がイク。


きんたまは、まさしく”金色に輝く玉”と化していた。

金玉は、小学館ギャグコミックのつるつるのふぐりから、コンビニコミックでしか描かれない劇画エロのような雄雄しさを放っていた。


「な…なんなんだ…」


腰が抜けている私が捻りだした言葉は、戸惑いだった。


答えるすべすべなどないほどもじゃもじゃになった金玉は、ロケットが射出するかのような轟音を鳴らしながら、プルプルとツインエンジンを震わせていた。


そして、聞こえるはずのないカウントダウンが頭の中に浮かんでくる。


3,2,1…。


GO! ON THE BED!


完成された目の前のモノは、飛び、立ち、空中にとどまり、爆発四散した。


花火。


涙、そして、落雷。


こうして、種は蒔かれた。


私たちの知らぬ間に生命は死に、生まれ、枯れて、咲いて。


ぽたりと、一粒。


私の頭の上に落とされた命のかけらが、芽吹く。


頭にたまたま、タマタマ生えた。


頭にたまたま、タマタマ生えた


頭にたまたま、タマタマ生えた。


噛んでも噛まなくても現実は笑えない。


頭に小さいおタマがひょこりとふたつ生えました、


例え私が死んでも思い出してくれますか?


あの花火の彩りと潤んだ眼に反射した希望の光を。

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