第29話 色の理由?


 その後、ピクニックの準備が終わったので、レベッカを呼び戻す。


 レベッカも池の周りを見て回るのが楽しかったようで、いくつか花を摘んでいた。

 レベッカが花を持つと可愛らしくて、なんだかとても似合うわね。


「レベッカ、何を摘んできたの?」


 私達は地面に敷いたシートに座って話す。


「種類はわかりませんが、綺麗だと思った花です!」

「そう、それはいいわね」

「はい! 三つの色の花を摘んできたんです。その、私とお母様とお父様の分で……」


 レベッカは少し恥ずかしそうに顔を赤らめて言った。

 か、可愛い……レベッカの可愛さは留まることを知らないわね。


「ありがとう、レベッカ。私はどの色なの?」

「黄色です! お母様の髪はとても綺麗な金色だからです!」

「ふふっ、嬉しいわ。レベッカとお揃いの髪色よね」

「はい!」


 私は黄色の花を受け取って、レベッカと顔を見合わせて微笑む。


「レベッカは何色なの?」

「私はピンクです! 理由はピンク色が好きだからです!」

「そうね、レベッカに似合っているわ」

「ありがとうございます!」


 ピンクの花を持って笑うレベッカは本当にとても可愛らしい。


「その、お父様のも持ってきたのですが……お花は好きですか?」

「好きでも嫌いでもない。だが、レベッカが摘んでくれた花は好きになれるかもしれない」


 意外とアランもレベッカが摘んでくれた花を楽しみにしているのかしら。


 レベッカがアランに差し出した花の色は、青色だった。


「これです! ど、どうですか?」

「ふむ……レベッカ、なぜ青色を選んだのか聞いてもいいか?」

「えっと、お父様が着ている服の刺繍の色に合わせました」


 なるほど、確かにアランは黒の上着に青色の刺繍を施している。

 家族でお揃いの服を作る時に、わざわざ青色を指定したくらいだ。


 レベッカは観察眼が高いわね。


「そうか、それなら私が青色を選んだ理由はわかるか?」


 青色を選んだ理由? ただ好きだからじゃないの?


「なんとなくわかりますが、あっているかどうか……」


 えっ、レベッカはわかるの? なぜか私の方をチラッと見たけど。


「間違っていてもいい、言ってごらん」

「その……お母様の瞳の色が青だから、ですか?」

「……えっ?」


 全く想定していなかった答えに私は目を丸くしたが、アランは口角を上げた。


「ああ、正解だ。よくわかったな」

「ありがとうございます!」

「こちらこそありがとう、レベッカ。この青い花は、とても気に入った」

「よかったです!」


 アランとレベッカは幸せそうに微笑み合っている……けど、ちょっと待って?

 わ、私の瞳の色?


 確かに私の瞳は青色だけど、まさか本当にその理由で選んだの?


 言われてみればあの時、アランが色を指定する寸前に私と視線が合った気がするけど。


「このままでは枯れてしまうから、押し花にして栞にするのはどうだ?」

「わぁ、とても素敵だと思います!」

「それならよかった。ネオ、手配しておけ」

「かしこまりました」


 私が呆然としている間に、レベッカが選んだ花は栞になることに決まったようだ。

 それは嬉しいんだけど……!


「ソフィーアもそれでいいか?」

「えっ、あ、はい! もちろんです!」

「どうした、顔が赤くなっているが?」

「いや、その……!」

「私は君の瞳の青色を選んだが、赤くなった頬の色でもよかったかもしれないな」

「っ、わ、わかって言っていますよね?」

「さあ、どうだろうか」


 私が睨んでも、アランはとても楽しそうに笑っていた。


 その後、持ってきたお弁当やスイーツなどを食べながら、ゆったりとピクニックを楽しんだが……私はドキドキが収まらず、アランと視線を合わせるのが恥ずかしかった。

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義娘が悪役令嬢として破滅することを知ったので、めちゃくちゃ愛します ~契約結婚で私に関心がなかったはずの公爵様に、気づいたら溺愛されてました~ shiryu @nissyhiro

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