――――― 欠片<カケラ> ―――――
少年は幼い頃から生き物が好きだった。
犬、猫、金魚、カメ、インコ。
とにかくどんな生き物にも興味が湧いた。
直接触れたい、家に連れて帰りたい。
そんな欲求にかられるが、諸事情から少年の家ではペットが飼えなかった。
長い間、生き物に対する欲求を抑えてきたが、ある時その気持ちが爆発する。
愛らしい瞳、柔らかそうな毛並み、綺麗な足、可愛い声。
一目ぼれだった。
親に話せば反対されるのは分かっていたので、少年は内緒でその子を連れ帰った。
ずっと欲しかった可愛いウサギ。
少年の腕の中でその子はプルプルと震えていた。
家に来た当初は不安げにあたりを見渡していたが、次第に状況に慣れ、少しづつ食欲も出て来た。
少年の手のひらに餌をのせて口元に運んでやると、ウサギは鼻をひくつかせ美味しそうに食べ始めた。
その愛らしい姿を見ていると、たまらない気持ちになる。
男にも母性なんてものがあるのだろうか。
少年には、この気持ちに名前をつけることができなかった。
この子をずっと大切にしよう。
不安げな瞳で少年を見上げるウサギを見て、少年は心の底からそう誓った。
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