執着心 前編
1話
俺の名前は椿 風雅(つばき ふうが)。
お祓い屋という詐欺まがいの商売をやって細々と生計を立てている。
誰かに呪われているだの、家に悪霊が出るだの、依頼者が連絡を寄越す事象の9割近くが勘違いや思い込みだ。
呪いなんてものは自分に心当たりがなければ心配する必要もない。
しかし、大抵の依頼者は人に恨みをかうような出来事があり、そこから思い込みが激しくなって全てのアクシデントを霊現象と結び付けてしまうのだ。
何もないところで躓いてケガをした、居眠り運転で事故りそうになったなど、よくある現象が彼らの口を借りれば全て霊現象になりえる。
俺は依頼者の話し相手になり、偽のお祓いとメンタルサポートを上手く使い分けながら商売を成り立たせている。相手の状態によってはメンタルクリニックへの通院を勧めることもある。
呪いなんてものは、自分の気分が上向けば意外とすんなり解決することが多い。相談料という名目でお金を貰うことに多少なりと後ろめたさはあるものの、お互いに満足してウィンウィンの関係になるのだから万事OKだと言い聞かせている。
しかし、商売をこなしていく中で、ひとつだけ面倒なパターンがある。それが「本物」に出会った時だ。
どうせ思い込みだろうと鷹を括って依頼者に会いに行けば、本当に霊に憑かれていることがある。こうなるとやっかいだ。
俺は霊が見える体質なのだが、お祓いはできない。依頼者の心をポジティブにすることはできても、本物相手だと焼け石に水だ。
そういう時は最低限の費用だけ貰って退散することが多い。欲を出して金儲けに走ればこっちが呪われるかもしれない、請求額は交通費+食事代程度だ。
今回紹介する話は、こういった偽霊現象の仕事が多い中で、一風違った味付けが成されたものだ。
依頼者とその家族のことを思い起こすに、いろいろ考えさせられる事件だったと感じる。ぜひとも、忘備録として残しておこうと思う。
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