Sorry

「失礼します」

 健の謎の権力で総理のいる部屋まで案内された。なんていう部屋だっけ。まあいいや。

「あら健じゃない」

 幼い頃の友達の母親みたいな声をしている。「あらー久しぶりねぇ」と話しかけてきたり、ご近所さんの話の中心になっていそうな人の声。

「お久しぶりです。加濃愛水かのう あいみさん」

 加濃愛水というらしい。残念ながら私は人の名前を覚えるのが苦手なのだ。なにしろ健の名字すら忘れてしまった。

「初めまして。健の親友の馬崎隣です。隣という名前と、見た目と普段使っている一人称で少しわかりずらいですが、男子です。鳥人です」

「そうなのね私は加濃愛水。鳥人で、私はトリ族なの」

「僕はブッコロー族ですね」

 ちなみにこの鳥人の種族について説明すると、トリ族は一般的な鳥人。ブッコロー族は色や柄などが茶色、オレンジ色がメインの鳥人である。100年前ぐらいにはある書店の動画配信に先祖が出ていた。R.B.ブッコローだったかな。私も馬崎(Basaki)隣(Rinn)なので、イニシャルでもR.B.ブッコローを名乗れる。

 ちなみにブッコロー族はその名前から戦闘狂だと思われがちだが、死んだ後も本に化けて出るといわれるぐらい本好きで、好奇心旺盛である。

 先祖代々正直者。先祖は話の回し方がうまいらしいがそこは引き継がれなかった。「鳥の姿になってもらってもいいかしら」

「まあ別に」

 体の力を抜いて腕が板になるように腹が膨らむように意識する。目線がどんどん下がっていく。

 自分の手を見ると確かに茶色の翼が見える。成功したようだ。

「これでいいですか?」

 翼を広げる。ちなみに服が消えているが、それはもっふもふの羽毛の中にある。人間に戻るときに服も普通に来ている状態になるのはそのためだ。

「かわいいですね」

「いえいえ」

 ちなみに言い忘れていたが、初対面の人にはだいたい人見知りが発動する。いい人そうな人だったらまあ、大丈夫だが。厳しそうな人だとだと一気に人見知りが発動する。勢いの強い人も苦手。勢いの強そうな人も苦手。

「あなたのテロを止めに来たんですけど、どうすれば止まってくれますか」

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