嗚呼、泣けてくる日常
日常だった。タイピング練習が終わり、健に総理大臣の前まで連れてこられて。
そして今、インドア人にはつらいぐらい振り回されている。
「どうしてこうなった」
さっきも書いたが、答えは知っている。総理大臣のテロを止めるため、100万円を受け取るためだ。「どうしたらテロをやめてくれるか」という問いに、「じゃあ買い物に付き合って」という答えになってない答えを返されたからだ。
「次はあそこに行くぞ!」
「へい親分」
ただ買い物や買い物や買い物の荷物持ちをするだけの役職。一体いつになったら解放されるのだろうか。
「なあ、隣はどっちがいいと思う」
気づけば服屋にいた。我が国の総理大臣が満面の笑みで聞いてくる。変装も兼ねた若作りのせいでなかなか魅力的だ。その手うには迷彩服と『彼女募集中』と書いてあるTシャツ。真っ黒な布にでかでかと横に白い文字で『彼女募集中』と書いてあった
「どっちでも似合うんじゃないですか」
「隣の好みも聞いておこうと思ってな。ほら、相手の好きな格好になっておけば、頼み事も聞いてもらいやすそうだろ」
好きなものを選ぶついでに人を少しでもうまく扱おうとする。すごい人だ。まあその、……チョイスがすごいが。
「こっちの方がいいと思います」
そう言って『彼女募集中』のTシャツを指さした。これで日本でも同性婚がようやく認められるだろう。
「じゃあ買ってくるね」
そう言ってお会計へ。
買ったTシャツをもって試着室へ直行していた。着て帰るんだろう。
「じゃーん。どうだ」
「似合ってますね」
ほどなくして出てきた加濃さんはあのTシャツを着ていた。本当によく着たな。
「で、これ、私が今日着てた服ね。ほいっと」
私が持っている荷物の上に置こうとするが届かず、放り投げて積む。これもう漫画だろ。謎に湧いてくる気力で何とか持っている状態だ。
「さ、帰ろっか」
「やったー!」
今日一番感情がこもった声が出た。私が家を出てからもう5時間経っていた。
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