19_生存遊戯_AT_ナガト
どうやらセレネは経過観察のために安静しているが暇なようだった。
「ほっ! よっ! えい!」
セレネはしきりに中指と薬指だけを曲げた状態で手首を突き出している。
「何してるの?」
「かなり古い名作映画に蜘蛛の力に覚醒する男の話があるのよ」
「うん」
「私もせっかく蜘蛛の力を得たのだしできるのかなって」
セレネは手首から糸を出そうと試行錯誤している。
「セレネ」
「何かしら?」
「蜘蛛の糸は体の部位で言うところお腹、もっと言うと尻になるんだ。つまりどう踏ん張っても手首からは糸が出ないと思う」
「ナガト、あなたは知らないようだけど、人間が蜘蛛の力を得たら手首から糸が出ると相場が決まっているの。あなたは古い映画をもっと見るべきよ」
「いや、待って、それはおかしい映画はフィクションだよ?」
ノックする音が響く。
「おいっす、相変わらず元気そうだな」
カナメが暇なのか遊びに来る。
「あ、カナメ! あなたに聞きたいことがあるのだけど?」
「どしたMiss.セレネ」
「セレネでいいわよ。それより人間が蜘蛛の力を手にしたら糸はどこから出てくると思う?」
「そりゃあ、手首だろ」
「でしょ?」
「人間が蜘蛛の力を手に入れたら手首から出てくるって相場が決まっているな。指は中指と薬指を曲げて、こんな感じでさ」
「でしょー!」
「なんで……おかしいよ」
「あっ! やっぱり手首から出てきたわ!」
「ほら見ろナガト、やっぱ手首から出てくるんだよ!」
「いやおかしいでしょ」
後ほどカナメから生物の重要器官が必ずしも人間に例えたときに当てはまる部位に出てくるとは限らないという話を聞きナガトは渋々納得する。
「やっぱり私、スパイダーマッ――」
「セレネ、それ以上は言ってはいけない気がする」
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