第26話 今後の予定

 夏祭りを3人で楽しんでいると、射的のブースで盛り上がっている様子に気づいた。人だかりができているそのブースによく見てみると、そこにはなんと小林先生がいた。しかも、射的の的に次々と的中させ、商品を無双している姿が目に飛び込んできた。


「あれ、小林先生が射的をやってるんだ!」


 と佐藤が驚いた声を上げると、知佳と俺も興味津々の表情を浮かべた。


 俺たちは興味津々で小林先生の射的を見守りながら、彼女の腕前に感心していた。小林先生は的を見事に的中させ、景品を手に入れている。その的中の確度とスピードに、周囲の人たちも驚きの声を上げていた。小林先生がこちらに気づいたように手を振る。


「橋本くん? そちらも賑やかそうね」


「えぇ、まぁいつものことですが」


「すごいですね、小林先生!射的が得意なんですか?」


 と知佳が声をかけると、小林先生はにっこりと笑いながら返答した。


「いえ、初めてやってみたのよ。そしたら、なんだか楽しいし、それが上手くいっちゃって」


 と小林先生がにっこりと笑顔を見せた。まじか、カリスマ教師は射的もできるのか。俺と持っているものが何もかも違う。これで同い年なのだから差を感じてしまう。……俺は一体何に差を感じているんだ。


 すると、小林先生が次に狙った的を見事に的中させ、さらに高得点の景品を手に入れると、周囲からは拍手喝采が沸き起こった。おい、それはすごいが屋台のおじさんを見てみろ。泣きそうな目でこちらを見てるぞ。その辺でやめてやれ。


「すごい!小林先生、また的中させてる!」


 と知佳が感嘆の声を上げると、小林先生はにっこりと微笑んで頷いた。いやいや、にっこりしてる場合じゃないでしょ、小林先生。あなた優秀なのに空気読めないとかないですよね。ほんとに気付いてないようで少し怖い。


 小林先生は三人ににっこりと微笑んで、手にした景品を近くの子供たちにプレゼントしてくれた。


「これ、みんなにあげる。みんなで仲良く分けて楽しんで」


 と小林先生が優しい声で言うと、子供たちはありがとうと頭を下げてお礼を言った。生徒だけでなく小さい子供にまで愛されるのがカリスマ講師なのか。


 夏祭りの射的ブースでの小林先生の活躍を見て、知佳と佐藤は笑顔で彼女を称えた。

 小林先生はこちらを向いて射的の景品をくれた。


「橋本くん、これどうぞ」


「え、いいのか? 自分で取ったものだろ?」


「いいのよ、私があげたいんだから」


「そういうのなら遠慮なくもらうぞ」


 そういって受け取ったのはゲームのカセットだった。いわゆるアクションレースゲームだ。ゲームは休日にしたりするが、最近はゲームをする時間が取れていなくて離れていた。ちなみに持っていないものだったので素直に嬉しい。喜んでいる俺を横目に知佳と佐藤がジト目で見てくる。とりあえず、その目をやめてくれ。


「私は普段ゲームをしないので、橋本くんにあげるわ。これなら佐藤先生や小野寺先生とも遊べるでしょう?」


「えぇ、まぁそうですね」


「ただ、やる時は私を最初に呼ぶこと!」


「「「え?」」」


 俺だけじゃなく、知佳と佐藤もそのことに同じ反応をしていた。小林先生は普段ゲームをしないと言いながら、どうやらプレイしたいらしい。


「私があげたんだから当然の権利よ」


「……わかった。あとで暇な時間教えてくれよ? そのうち誘うことになるからな」


「そ、そう。では、誘われるのを楽しみにしているわ」


 かくして、小林先生とゲームする予定ができてしまった。さて、いつにしたものか? ゲームをするんだから俺の部屋ですることは確定だろ。その辺分かっていっているのか? 実は抜けているところもあったりするのかもしれない。


「直くん、私は?」


「そうですよ、先輩。私とはしてくれないんですか?」


「後ででいいだろ。だいたい、お前たちは俺が呼ばなくてもしょっちゅう来てるじゃないか?」


 この前、佐藤が来ていたのは相談事だったが、あれは珍しい部類だ。いつもは遊びに来て酒飲んで帰ってく。こういうところも学生の頃の延長って感じがする。知佳も似たり寄ったりだな。あいつとは、小さいころから一緒に遊んでいたから不思議じゃない。だが、小林先生は別だ。帰ったら、少し部屋の掃除をしておくか。


「絶対呼んでね、直くん?」


「いつになってもお誘いなかったら、直接行きますからね」


 ということなので、忘れないうちにこいつらを呼んでおかないと、ほんとに家に来ることになりかねない。


「橋本くんこの後も一緒に回ってもいいかしら?」


「もちろん、俺は別にいいけど……」


 俺は別に構わないが、判断は残る二人次第だな。俺は二人に顔を向けて反応を待った。


「はい、もちろんいいですよ」


「小林先生と少ししゃべりたいと思ってたんだ」


 ということで小林先生も一緒に夏祭りを楽しむことになった。俺と女性3人というのは、男性の身として肩身が狭い。俺が歩いているのをよそに3人は仲良くおしゃべりをしている。女三人寄れば姦しいという言葉がある通り、盛り上がっている。かと思えば静まっておしゃべりしたりとせわしない。


 その後も、夏祭りの屋台を楽しみながら、踊りの輪に参加したりと、みんなで一緒に夏祭りを満喫した。


 夏の夜空には、星の輝きが広がり、屋台の灯りがキラキラと輝いていた。みんなの笑顔と歓声が夏祭り会場に満ち溢れていた。


「夏祭り、最高だな」


 俺が満足そうに言うと、みんなもにっこり笑って言った。


「そうですね、本当に楽しかったです!」


「今年の夏祭りも最高だった!」


 佐藤や知佳、小林先生も大満足そうに笑顔を見せていた。夏祭りの雰囲気に包まれながら、友達と一緒に過ごす時間はとても特別で、思い出に残るものだった。


 夏祭りの終了時間が近づいてきた頃、みんなは別れを惜しんだ。


「また来年も夏祭り一緒に楽しみましょうね!」


 知佳が言うと、みんなが笑顔で頷いた。来年とは少し気が早い気もする。来年には花火もやれるといいな。


「絶対に来年も参加するぞ!」


「楽しみだな、来年の夏祭り!」


 夏祭りの終了後、俺は少し疲れたけれど、とても充実した気持ちで家路についた。

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