第25話 夏祭り

 夏祭りの華やかさと音楽で盛り上がる中、俺は佐藤と知佳と一緒に歩いている。学校の近くではなく、隣駅にもやっている夏祭りだ。学校近くの夏祭りに生徒たちが行っているため、うちの生徒は少ない。佐藤は、屋台や遊びを指さしながら、目を輝かせている。金魚すくいに参加させようと俺の腕にしがみついたり、それで困った俺を面白がったりしている。

 俺の反対側を歩く知佳は、その穏やかな存在感で俺を落ち着かせる。俺の腕にそっと手を伸ばし、静かに安心感を与える。俺は、そんな彼女の姿を見て、感謝の念を抱いた。俺は、彼女の優しさと穏やかさにいつも感心し、彼女の存在に安心と安定を覚える。この落ち着きは幼馴染だから出せるのか、職業柄なのかよくわからない。

 屋台の食べ物の香りが漂ってくる中、俺は佐藤と知香と一緒に屋台を回っていた。焼きそばの香ばしい匂いや、たこ焼きの熱々の匂いが鼻をくすぐり、直希の胃も空腹でグーグーと鳴っていた。


「あ、焼きそばですよ。食べませんか?」


 と佐藤が興味津々に焼きそばの屋台を指さしながら言った。


「確かに、いい匂いだな」


 俺もうなずきながら言った。


 知香も目を輝かせながら


「私も焼きそばがいいかな。あ~でも、たこ焼きも気になるなぁ」


 とそんなこと言った。

 俺たちは夏祭りの屋台でおばちゃんにお金を渡し、焼きそばを注文し、待ちながら楽しい時間を過ごしていた。

 屋台の店主のおばちゃんが大きな鉄板の上で麺を炒めている姿を見ながら、俺は思わずつばを飲み込んでしまった。


「焼きそば、待ちきれないですねぇ」


 と佐藤が言って、今か今かと待っている様子だ。それには知香も笑顔で頷いた。

 俺は焼きそばは好きな方で屋台では欠かせないと思っている。


「お待ちくださいね」


 とおばちゃんが言って、熱々の焼きそばを用意してくれた焼きそばの香ばしい匂いが漂ってきて、三人の胃袋を刺激していた。

 やがて、屋台のおばちゃんが三人の前に、熱々の焼きそばを持ってやってきた。焼きそばは鉄板の上でパラパラと炒められており、野菜の色鮮やかさと、肉の香ばしい香りが食欲をそそる。

 俺たちは、それぞれ箸を持って焼きそばに手を伸ばした。三人は箸を持って、一気に口に運ぶと、熱々の麺と野菜、ソースの絶妙な味が口いっぱいに広がった。


「美味しい! やっぱり屋台の焼きそばは最高ですね」


 佐藤は一口食べると、思わず目を丸くして言って、にっこり笑顔を見せた。


「確かに、美味いな」


 と俺も同意して言った。

 知香もニッコリ笑って満足そうに


「うんうん、本当に美味しい。おばちゃんの焼きそば、やっぱり最高だよ」


 と言って、うっとりとした顔で食べていた。佐藤は満足そうに笑いながら、俺も美味しいと言う言葉を言葉にして、満足そうに頷いた。

 俺たちは屋台の焼きそばをじっくりと味わいながら、夏祭りの賑やかな雰囲気を楽しんでいた。焼きそばは香ばしくて、麺はもちもちとした食感があり、野菜と肉の絶妙なバランスが口の中で踊るように美味しかった。


「食べ終わっちゃった」


 と佐藤がちょっぴり寂しそうに言った。


「また食べに来ようね」


 と知香がにっこり笑って言うと、俺も微笑みながら頷いた。


 三人は満足そうに焼きそばを食べ終わり、夏祭りの賑やかな雰囲気を楽しんでいた。


 俺たちは夏祭りの屋台を歩きながら、暑さをしのぐためにかき氷を食べることに決めた。屋台の前には、いくつものかき氷の味が並んでいて、見た目も美しく、彩り豊かなかき氷が目の前に広がっていた。


 佐藤は目をキラキラさせながら、


「私、ブルーハワイ味にします!」


 と言って、おじちゃんに注文を告げた。おじちゃんはにっこり笑って、手際よくかき氷を作り始めた。


 知香は考え込んでいたが、


「やっぱりメロン味にしようかな」


 と言って、おじちゃんに注文を伝えた。おじちゃんは微笑みながら、メロンのシロップをかけていった。


 一方、俺は


「レモン味でお願いします」


 と言って、おばちゃんに注文を告げた。おばちゃんはにっこり笑って、レモンのシロップをかけてさわやかな香りを漂わせた。

 三人はそれぞれのかき氷を手に取り、スプーンを持って一口食べると、思わず顔を見合わせて笑顔がこぼれた。

 佐藤のブルーハワイ味のかき氷は、甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がり、青い色が目を引き、トロピカルな雰囲気が楽しめた。彼女は満足そうに


「美味しい! 夏らしい味ですね」


 と言って、にっこり笑った。


 知香のメロン味のかき氷は、甘みの強いメロンの風味が口の中で広がり、鮮やかな緑色のかき氷が目を楽しませた。彼女はにっこり笑顔で


「やっぱりメロン味は最高だよ」


 と言って、こちらもかき氷を満喫していた。


 俺のレモン味のかき氷は、さわやかな酸味と甘さのバランスが絶妙で、夏の暑さを吹き飛ばすような爽やかな味わいが楽しめた。俺は内心微笑みながら”これ美味しい。レモン味の選択は正解だった”と一人思って、かき氷をほおばっていた。


 佐藤はにやりと笑って、直希にかき氷を差し出した。


「じゃあ、先輩にもこれ食べてみてください!」


「いや、別にいいって……」


「いいから、いいから……はい!」


 俺は戸惑いながらも、佐藤の勧めに従いかき氷を受け取り、口に運んだ。すると、口の中に広がるひんやりとした甘さに、俺は思わず目を見開いた。そして、佐藤に微笑んで言った。


「……うまいな」


 佐藤はにっこり笑って頷いた。


 その様子を知佳は橋本が笑顔で過ごす姿を見て、微笑ましく感じながらも、少し嫉妬心を抱いていた。


「じゃあ私は直くんのもらおうかな」


「え……なんで?」


「なんでって私、かき氷のシロップの味に悩んでたじゃない? その時、直くんレモン味を買ってくれた。これって私に一口あげるために買ってくれたんだよね? 直くんのやさしさに感激だな~」


 知佳がとんでもない勘違いをしている。俺がレモンを味を選んだのは、ただ俺が食べたかったからで、知佳が食べたかったのには気づいてなかった。


「え……そんなつもりは……」


「……直くん?」


 ここは俺が折れるべきだな。お世話になってるから、ここで素直にかき氷をあげとくべきだな。知佳が少し怖かったからとかではない。……本当だからな。

 知佳は俺の一口分のかき氷を美味しそうに食べていた。何はともあれ、喜んでくれて何よりだ。


 三人はかき氷を食べながら、屋台の周りの賑やかな夏祭りの雰囲気を楽しんでいた。かき氷は口に入れるたびに舌を冷やし、喉を潤してくれて、暑さを忘れさせてくれるようだった。

 屋台のおじちゃんも満足そうな顔で、三人がかき氷を美味しそうに食べているのを見て微笑んでいた。彼が作ったかき氷は、見た目も美しく、味も素晴らしいものであり、三人はその味に満足していた。

 かき氷を食べ終わった後、三人は満足そうにお互いを見合わせ、にっこり笑った。夏の暑さを吹き飛ばすかき氷の味を堪能した彼らは、元気に夏祭りを満喫することに決めた。


 屋台のかき氷は、夏の風物詩として、子どもから大人まで幅広い人々に親しまれている。三人も、その美味しさと夏らしい味わいを堪能し、屋台のかき氷と共に素敵な夏の思い出を作ったのであった。

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