第2話

一歩、外に出ると街並みは一気に近代的な建物が多い令和に戻っていた。だが今の三村にとって街並みより、早く帆花と交わりたいという気持ちで高ぶっていた。

「帆花ちゃんの家は何処かな?早くしよう」

と、言いながら、帆花の小さく膨らんだ胸を触っていた。

「ここだよ」

二人は白壁の六階建てマンションに入っていく。静かなエントランスにエレベーターが開く音が響いた。

帆花は四階を押す。すると、三村は我慢が出来ずに、帆花の首筋にキスをし始めた。

帆花は笑顔で受け入れていると、四階で扉が開いた。

「着いたよ。部屋で激しくエッチしよう」

と、言うと。悪戯ぽく微笑んで走り出した。

三村は野生動物の如く追いかける。

すると「こっちだよ」と、玄関を開けて待っていた。

足早に入ると三村は、その場で帆花のワンピースを脱がそうとした。

だが、帆花は手を払って拒否ると、スタスタとリビングに入っていく。そしてソファーの前に立つと、こっちに来てと言わんばかりにソファーの背もたれをバンバンと叩いた。

「分かったよ。そっちでしたいんだね」

三村は、ニヤニヤといやらしい顔で帆花に近づいた。

すると帆花はテーブルとソファーを押し蹴り、スペースを作った。

「さあお兄さん、全部脱いで」

「もしかして、帆花ちゃんは攻めたい派?」

「嫌?」

三村は笑顔で首を横に振った。

「私が先に、たーっぷり攻めるから、その後で、淫らになった私を楽しんで」

と、言うと、自らワンピースを脱いで放り投げた。月明かりに照らされた帆花の体は美しく、襲いたい気持ちを抑えながら、全裸になった。

「脱いだよ。次は?」

「仰向けになって」

言われた通り、腰を下ろして仰向けになった。

すると三村の体を跨いで仁王立ちをした状態で、純白なブラジャーを外した。

張りのある小山の先に薄ピンクに色づいた乳首が顔を出す。

我慢できなくなった三村は上半身を起こして帆花に抱きつく。そして帆花を、しゃがませて乳首に吸い付いた。

帆花は腰をくねらせて喘いだ。

「あっ…ん…まだダメ…」

三村を倒して乳首から離した。そして首筋にから足の先まで舐め回すと、熱り立つペニスを咥えた。

ちゃぷちゃぷと、帆花の生暖かい唾液が絡み付く。その度に三村の息遣いが荒くなった。

「ハアハア…もうそろそろ入れよう…ハァ…我慢できい…」

帆花は、咥えたペニスをゆっくりと離した。

「いいよ。けど、私が先に上になる」

と、言うと、下着を脱いで覆い被さった。

三村は自分のペニスを掴んで、帆花の中に入れようとしたが、止められた。

「焦らないで。どうして皆、すぐに入れたがるのかな?光彦って奴も、ちょっと誘ったら、すぐに裸になって突っ込もうとしたのよ。まあ食べる為に誘ったのは私なんだけどね」と、言って、天使のように微笑んだ。

「えっ…光彦…食べ…!?」

困惑している間に、帆花は鋭い牙を出して、三村の喉仏に噛みついた。

牙から出る毒で、声も出せず悶にえ苦しむ。

全身に毒が回ると、三村の動きが鈍くなった。そして足先まで痺れだすと痙攣を起こした。

「一週間ぶりだから、お腹ペコペコなのよね。早く死んでくれないかなー」

と、三村の心臓が止まるのを待った。

帆花が見つめる先で、三村は次第に生気を失っていく。痙攣が止まると、三村の顔は苦痛に歪んで白目を向いていた。

「そろそろ、いいかな?」

と、食べ頃を確認すると、帆花は両方の肩を揺らした。するとポトンと両腕が落ちた。

そして胸の中心から臍にかけて皮膚が裂けると、鋏角類特有の足が一本づつ、伸びをしながら出てきた。

八本の足が全て出ると、ブルブルと震わせながら、胴体と頭を出した。

帆花の正体は、桜色に山葵色の斑になった絡新婦(じょろうぐも)の子の妖怪だった。

1メートル程の小さな絡新婦は、亡骸になった三村の腹に牙を指した。

牙の周りから赤黒い血と毒で溶けた臓器の液体を吸いながら食べていく。

ブチブチと肉を噛みちぎり、じゅるじゅると柔らかい内臓を吸う。

一通り吸い終わると、白目を向いた目玉に足を刺した。そしてグチョグチョと、かき混ぜた。血液に白身を混ぜたような液が目尻から垂れ流れる。

絡新婦は美味しそうに混ぜた液体を吸った。

お腹が減っていた絡新婦は一気に、三村の眼球を食いつくした。

綺麗に空洞になった穴に足を入れて、口にも二本目の足を入れた。そして、三本目の足で口をこじ開けると、くるんと縮まった舌を器用に四本目の足で引っ張り出した。

まるで爪楊枝で栄螺を、くり出すかのように舌を出した。

絡新婦は小さなお口で、舌先からムシャムシャと少しづつ食べていく。

だが、まだ子供の絡新婦は食べている途中で睡魔に襲われた。

食べたい欲求と眠たい欲求から、絡新婦は、目玉と舌と臓器を失くした三村の傍らで、足をすぼめて眠りについた。



薄暗く急な階段を、カスミ、横田、ハシノキの順に登っていく。

階段を上がりきると、ひんやりとした空気に横田は寒気を覚えた。

「あの……」と、横田が声をかける。

カスミは、ゆっくり振り向いた。

「娘の部屋は、この奥です」

一際、薄暗い廊下の先を示した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る