第302話 胎動 ②

【朗報】白井 ラリふっかぁぁぁぁぁぁつ! ふっかぁぁぁぁぁぁつ! ふっかぁぁぁぁぁぁつ!【お帰りなさい】


546.名無しの通りすがり

マジ待ってた!


547.名無しの通りすがり

ほんそれ


548.名無しの通りすがり

ほぼ同期のジュラちゃんのサードソロライブってタイミングに復活って、これから本格的に活動するんかな?


549.名無しの通りすがり

ふ、ふつくしぃ……っぱラリよラリ!


550.名無しの通りすがり

概要欄を嫁、概要欄を


551.名無しの通りすがり

白井 ラリは俺の嫁


552.名無しの通りすがり

は?! 俺のだが?


553.名無しの通りすがり

ラリなら俺の横で寝てるZE


554.名無しの通りすがり

それは幻覚よータカシー


555.名無しの通りすがり

かーちゃーん


556.名無しの通りすがり

概要欄を見る限り、復帰に向けてのリハリビみたいな感じっぽいぞ


557.名無しの通りすがり

そもそも、なしてラリちゃんって休止したん?


558.名無しの通りすがり

自分で調べような?


559.名無しの通りすがり

あまり気持ちの良い事じゃねぇしな、胸糞だし


560.名無しの通りすがり

嫌な……事件だったね……


561.名無しの通りすがり

無期限休止からの卒業って思ってたから、こうしてまた歌が聞けて嬉しい


562.名無しの通りすがり

例の事がなけりゃ、今頃Vラブのトップに立ってたって言われてるしなぁ、実際


563.名無しの通りすがり

昨日アップで、一日で800万再生だもんなぁ


564.名無しの通りすがり

納得の歌声っちゅうか、こう、胸に来るっちゅうか


565.名無しの通りすがり

ヤヴァイよなコレ


566.名無しの通りすがり

リピートが止まらん


567.名無しの通りすがり

なんか、告白されてるような気分にされるっちゅうか、すげぇ胸がドキドキするっちゅうか


568.名無しの通りすがり

貴方の事がずっと好きでした〜♪ ってトコ?


569.名無しの通りすがり

そうそう! そこそこ! ヤッヴァイよな?!


570.名無しの通りすがり

アーカイブで見直したけど、前よりも情感豊かっていうか表現力が上がったっちゅうか……や、前から歌は凄かったんだけど


571.名無しの通りすがり

サラス・パテの歌姫っちゅうと、真っ先に名前があがるのがこの方ですしおすし


572.名無しの通りすがり

名だたる歌上手Vラブの中でも頭二つ三つ抜けてるしなぁ


573.名無しの通りすがり

このまま本格的に活動してくれないかなぁ。またあのポンコツ可愛いお姉ちゃんに会いたいわ


574.名無しの通りすがり

分かり過ぎる! ポンコツだから可愛いよな、ラリちゃんって


575.名無しの通りすがり

凄いしっかりしてそうなお姉ちゃんっぽいのにな、天然で抜けてらっしゃるっていう


576.名無しの通りすがり

分かり過ぎる!


577.名無しの通りすがり

マジで例の事件引き起こしたヤツ、コロコロしたいわ


578.名無しの通りすがり

マイナスワードを隠せて偉い!


579.名無しの通りすがり

最近のSNS叩きも厳しいからな、注意出来るところは注意しないと


580.名無しの通りすがり

はいはーいプロバイダーでーす、裁判所から開示請求がきましたー


581.名無しの通りすがり

ひぇっ?!


582.名無しの通りすがり

マジでメールで来るらしいぞ? 俺の会社クビになった知人がまさにそれだった


583.名無しの通りすがり

あー会社の機密情報保持に問題ありでクビってヤツ?


584.名無しの通りすがり

そう、それ。優秀なヤツだったけど、一発アウトだった。今じゃAランク大学卒業者にしてコンビニ店員やってんぞ、バイトだけど


585.名無しの通りすがり

うわぁ……


586.名無しの通りすがり

法整備も進んだし、ラリちゃんも安心して活動出来るはず!


587.名無しの通りすがり

事務所が事務所だもん、そこいらは全力尽くすんじゃない? Vラブ業界最大手だけど、未だ引退者も卒業者も出してない超優良企業だし


588.名無しの通りすがり

コンプラ関係の研修とか、月二回あるらしいしな(らいちっち情報)


589.名無しの通りすがり

きちゃない言葉遣いの暴言(可愛い!)はあるけど、ある一定のラインは超えないもんな、サラス・パテのタレントさん達って


590.名無しの通りすがり

それはそれですげぇんだけど、な


591.名無しの通りすがり

まぁ、あそこも頭オカシイ張り付きのアンチ組織あるしなぁ


592.名無しの通りすがり

小賢しいんだよなぁ、アイツら。本当、ひっかからないギリギリの誹謗中傷すっからムカつく


593.名無しの通りすがり

そのうち、社長がキレそうだけどな、あれ


594.名無しの通りすがり

ママン「血の雨降らすぞ、ゴラァ」


595.名無しの通りすがり

あそこの社長ならやりかねないのがまた……


596.名無しの通りすがり

ま、気長に待とうや。この新しい歌声を聞きながら、さ




――――――――――――――――――――


 捜査課のデスクで、珍しくユーヘイが疲れた様子で突っ伏している。虚ろな表情で、眠たげな充血した瞳を半眼にして、デスクに溶けるような感じにぐったり体重を預けて。


「どうしたんですか? お疲れですか?」


 キーッとウェスタンドアを開けて、ログインしてきたトージが、珍しいユーヘイの姿に目を丸くしながら声を掛ける。


「あー、おはよう」


 ユーヘイはグラグラと小刻みに頭を揺らしながら上半身を持ち上げ、一つ大きく伸びをし、両手で首筋を揉みながら大きな口を開けて欠伸をする。


「寝不足ですか? ゲームやってないで寝れば良いんじゃないです?」

「正論あんがと。ご尤もなんだけどな……」


 トージの尤もな言葉に苦笑を浮かべ、切なげに小さく溜息を吐き出す。


 先日、元婚約者の悪夢を見てから、なんだか立て続けに悪夢を見ているのだ。しかも、全部が女性関係。


 初めて付き合った幼馴染のあれこれやら、高校の手痛い失恋だったり、大学時代の七面倒臭い騒動に巻き込まれた三角関係だとか、今じゃ風化して笑い話になっているような、だけど当時は頭がハゲるんじゃないかと思うくらいには思い悩んだ出来事のフラッシュバックの詰め合わせ、そんなのが連日連夜夢に見る。


 それでも短時間の仮眠は出来ているので、何とか最低限の睡眠は確保出来ているが、体の芯に残るような疲労感は溜まっていく一方だったりするのが問題だ。


「まだゲームやってる方がマシなレベルなのがなぁ……仮眠中は白井 ラリの新しい歌ってみたがあるから、睡眠の質は良いんだけども」


 首を左右に傾げ、バキバキと盛大に鳴らしながら呟き、ふわぁっと再び欠伸をする。


「ユーさん徹夜でもしたの? 眠そう」

「……そんなトコ」


 キーッとウェスタンドアが鳴り、アツミがログインしてくる。彼女の姿を確認し、ユーヘイは瞬間硬直したが、すぐに何事もないような態度へ戻り、ぐったりデスクへへばりつく。


 ユーヘイはアツミが白井 ラリである事を知っている。だから彼女はこのままゲームから去り、再びネットアイドルの道へ戻るんだろうなぁと思っていたのだが、普通にログインしてきたから、不覚にも反応がぎこちなくなってしまったのだ。それを誤魔化すように、デスクへ突っ伏したのだった。


「おっはよー! って、どうったの? ユーヘイ」

「町村、浅島さん、おはよう。珍しいな、大田がそんな姿してるなんて」

「おはようございます!」

「おはよう。今日もご一緒で仲が良いですねー」

「……うぇーぃ」


 元気一杯なノンさんに、いつも通りのダディ。そんな二人から声を掛けられ、ユーヘイは力無く手をヒラヒラさせて無気力な声を出す。


「いやさ、ここ最近、夢見が悪くて」

「あらら」

「悪夢にうなされるって感じか?」

「あー、もう風化した記憶をほじくり返されて、それで当時の感情を引き出されて叩き起こされるって感じの事が続いててなー」

「うわぁ……」

「それは、ちょっとキツいな」

「短時間の仮眠はちょいちょいできてるんだけど、やっぱガッツリ寝たい。けど、まだゲームやってる方が精神的には楽っていう感じでなー」


 本当に元気の無いユーヘイに、ノンさんとダディは顔を見合わせ、トージとアツミにも視線を向ける。


「なら縦山先輩がログインしたら、ちょっと軽めそうな低難易度のクエストをやって、良い感じに疲れてログアウトすれば、今日は良く眠れるんじゃないですか?」


 トージの提案にユーヘイは、面倒臭そうに上半身を持ち上げ、グリグリと目頭をマッサージしつつ頷く。


「んじゃ、それで頼むわ。足引っ張ったら、容赦無く見捨てていいからよ」

「あ、じゃぁ、私がユーさんのフォローするね。いつも助けてもらってるから」

「そいつはすまねぇなぁ、アツミさんや」

「それは言わないお約束ですよぉーユーヘイさんや」


 苦笑を浮かべてアツミにペコリと頭を下げ、ちょっとした軽口を叩けば、アツミも分かってますよという感じに返事を返す。そんな二人のやり取りを、トージ達はニヤニヤした目で見守るのだった。

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