第237話 悪意(合間劇の俺等) ④
毎度お馴染みの俺らの鑑賞会
「ヒロシニキ、何かおかしいくね?」
「『第一分署』そのものがおかしいんだよなぁ」
「ほんそれ」
「いやいやいや、そういうネタ的な話では無くて――」
「分かってる分かってる、アレだろ? 配信が切れて、そっから配信が復帰してから、何か自然体になったっちゅうか、より
「そうそう」
「それ言うたら、あっちゃんのユーヘイニキとの距離感だってバグってらぁなぁ」
「あー、どっちかつーと元ネタにより近づいた感じがしてるだけって気がしてるんだけど」
「良いよなぁ、キョージとユーカの男女の壁を超えた悪友感ってさ。それはさておき、どっちも配信が途切れて復帰してから、か?」
「……これあれか? 他のゲームでもあったけど、芥川現象?」
「おー! おー! おー! ドッペル君!」
「あーっ! アレだっけ? トージ君レベルだと配信出来るけど、よりセンシティブっちゅうか個人が特定されるような相手だと、謎の配慮が入る妙に優しい迷惑行事」
「嘘か真か、VRに愛されしプレイヤーへ訪れる小さな親切大きなお世話。乗り越えれば大きな成長につながるけど、逃げ出すと二度とやってこない生涯一度っきりイベント」
「え? じゃぁ二人共乗り越えちゃった?」
「乗り越えたんだろうなぁ、状況を考えるとあっちゃんの方が大変だったみたいだけど」
「妙に疲れてたからなぁ、ヘビーだったんだろうなぁ」
「ドッペル君って、そんなポンポンクリアー出来るもんなん?」
「克服タイプ、トージ君みたいな終わり方だと結構ライト」
「「「「あれ、ライトだったか?」」」」
「ライトなんだよ! しゃーねーだろ! そういう認識なんだからさぁっ!」
「まぁまぁ、トージ君の場合は悩みが比較的具体的だった、トラウマの形が明確だった、みたいな所があるから、あれでも軽い、ライトだったと言われちゃうんだ」
「「「「わぁーお」」」」
「より熟成された、蓋をして見ないようにして放置されていた、そもそも無視して忘れていた、って感じになると激烈になる、らしい。そこまで行くと無視して逃げるっていうプレイヤーが増えるらしいけどな」
「「「「ほへぇ」」」」
「ちなウィキペディア知識だけどね」
「「「「ウィキがあるのっ?!」」」」
「クリアー云々の話に戻るけど、ポンポンクリアー出来ないらしいぞ。結構な数が脱落してるってウィキに書いてあった。本当かどうかは分からんけど」
「「「「ウィキすげー」」」」
巨大なスクリーンを前に、整列して体育座りで配信を見ている一同が、わいのわいのと騒ぎながら『第一分署』の活躍を眺めている。
「つかサラス・パテ、すごない?」
「凄いなぁ。特にかっちょーぅとかジュラ様とか普通に活躍してるのすげぇよ」
「これ、ワンミスアウトだろ?」
「アウトだな」
「俺だったら逃げるぞ? それこそ明日に向かって」
「「「「貴様に明日は無い」」」」
「ハモるなっ! それと余計なお世話だっ!」
「ジュラちゃんも凄かったけど、ユウユウとらいちっちが凄い事してんぞ?」
「これはユウナ様が凄いんであって、らいちはいつものPONだろうがい」
「そのPONを撮れ高に、神憑りな幸運に繋げる配信業界の女神はいつも通りの通常営業」
「本当、仕込みを疑うレベルでいつも凄いよなぁらいちっち」
「VRで仕込みは出来ないとあれ程言うとろうがぃ」
「どっちにしろ格好良いタルゥ〜」
「さすがPON神! Vラブ最強! 格が違うぜぁ!」
「そしてそんな二人をフォローするよう、一番恐ろしい場所で超接近戦闘を行うタテさん……あれ、タイラ――」
「それ以上イケない! 変態ドM軍人を素体に作られた生物兵器と言ってはいけない!」
「あー、だから急にタテさんの配信に、あの会社のコピーライトが入ったのか」
「「「「うわっ! マジだ!」」」」
「そこに配慮してる余裕があんなら、とっととこの状況を何とかしろよ」
「部署が違うだろ。これはこれでちゃんと仕事してるってこったろ?」
「お前みたいなのが一定数いるから、ほれ見れ、お外の掲示板では運営大炎上中じゃぞ」
「うげ、また騒いでるのかよ、この掲示板……サイバー警察にマークされてるとかって話あったよな?」
「SNS関連の問題が多いから、より素早い犯罪への抑止力とかっちゅう話が進んでて、そこらの法改正が進んでるっていうのはニュースにあったな」
「最近多いもんなぁ、SNS関連の犯罪」
「匿名じゃねぇっつうの! って奴な。言ったもん勝ちとか思ってるのがすげぇよ」
「なー」
色々な話に脱線しながら、ノリは完全に修学旅行のバスの中状態。そして『俺ら(一部、私らも)』は絶好調でさえずり続ける。
「最初の個別クエストで、俺なら死んどるなぁ」
「つーか黄物やってて別のゲームが始まったら、その瞬間頭バグるで?」
「迷うなよ、死ぬぞ?」
「うっせぇ! 宇宙に帰れ!」
「でもこれ、いつまで続けるん? あのクソゲークリアーしたところで、結局運営がどうにかしないと終わらんだろ?」
「そうだなぁ、でもニキ達が抵抗するのはプラスに働くんだぜ?」
「へ? そうなの?」
「おう。無理矢理インストされてるプログラムがそれだけ活発に動くって事はだ、インストされている場所を特定されやすいってこったろ?」
「「「「あっ!」」」」
「さすがに運営もそろそろ特定するぞ、これ」
「無事に終われば笑い話。配信的には大勝利。運営も適切な活動をしていたと証明出来るってか」
「外の炎上はその程度じゃ収まらないだろうけどな」
「ここの会社に喧嘩売るとか、阿呆なの?」
「阿呆なんだろうなぁ、可哀想」
「専門の法務部持ってるのにな。しかも、負け無しの無敵部隊っていう折り紙付き」
「初期の頃の荒れてた時、何人か迷惑系VラブとかVランナーが訴訟されてアボンしたって有名な話なのにな」
「ちゃうねん、俺達は掲示板のまとめで騒いでるだけであって、おまいらの会社を直接ディスった訳ちゃうねん」
「……本気でそう思ってそうるのがいそうな感じがががががが……」
「お、お、お、おす、おす……」
「荒野に帰ろっか? ほらクルマが待ってるぞ」
「あれのVRMMOとかでねぇかなぁ」
「だいぶカオスになるだろ、さすがにあれは」
「お、かっちょーぅ組も動き出した!」
「相変わらず、サマーが鼓膜直撃する悲鳴を出してますなぁ」
「素の声がデカいからね」
「こっちは……こっちのゾンビは何だ?」
「ゾンビか? 何か生物兵器っぽい感じが増してるような?」
「……どこぞの洋館のガンシュー?」
「あーあーあーあーあーっ! タイピングゲームにもなったあれ?!」
「っぽいなぁ……当たりだぞ、コピーライトが出た」
「「「「全方位に喧嘩を売ってくスタイル」」」」
「監視してる運営の人が泣いてそうだなぁ」
「つーか、他のクソゲーはフリー素材の奴ばっかりだったけど、こっちもあっちもフリーじゃないだろ? これ大丈夫か?」
「大丈夫もクソも、犯罪者に何言っても無駄だべや?」
「だから運営の人も泣いてるじゃないですかっ! 止めて差し上げろ下さい!」
「本気で泣いてそうなのがまた……」
「案外、有名な配信者が出てるライブ映像に映ってラッキーとかだったり?」
「そりゃ無いだろう。運営側は全くの不可抗力ではあるが、確実に連絡は来てるだろ絶対」
「どっちにしても死んだな」
「ウィルス送り込んだ犯人がな」
「誰だろうなぁ? こんな馬鹿丸出しな事した奴」
「余程に頭がお花畑なんじゃねぇの?」
「だーな」
『俺ら』はライブ映像を眺めながら、この騒動を引き起こしたであろう犯罪者に合掌をする。きっちり逮捕されて成仏されますように、次やったらシバく、そう心を一つにしながら……。
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