第156話 整備
ベイサイドでユニオンに関する決め事を話し合っていたユーヘイ達。それなりに有意義な調整が出来そうだぞ、というタイミングにテツから渡された無線機が鳴った。
「おっと、はいはい、こちら大田」
『おう、俺だ。今、大丈夫か?』
「あらテツのとっつぁんじゃないか。何かあったか?」
ユーヘイはテツからの通信に応じながら、無線機の声が周囲に聞こえるよう音量を上げる。
『まずは結構な修羅場を潜り抜けて良かったな。安心したよ。第一分署をそこに送り込んでしまったって水田の兄ちゃんが、それはもう動揺してたわ』
「あらまぁ。そこは気にしなくて良いのに。確かに情報をくれたのは水田先生だけど、ここに来るって決めたのは俺らだからなぁ」
『そこはほれ、水田の兄ちゃんだから、って事で』
「あー、確かに気にしそうではあるなぁ。確かにヤバかったけど、楽しんではいるんだぜ? 俺らは」
『その状況を楽しめるってのはお前らくらいだと思うぞ?』
「ははははは、誉めるな誉めるな」
『微妙に皮肉なんだがなぁ』
呆れたようなテツの口調に、周囲のDEKA達の半分が苦笑を浮かべて頷き、残りの半数は『この状況を楽しめるってどういう神経してんだよ』的な表情を浮かべていた。
「んで、本題は?」
『おう。お前達の苦境を見て水田の兄ちゃんが動揺しまくってな。だからフィクサー部隊の拠点を先に発見なり特定なりすりゃ、もしかしたらクエストが進んで、お前らに有利な状況を産み出せるかもしれないぞ、と唆して働かせた』
「……それを有効な手段だと水田先生が判断したのが信じられねぇよ」
『おう。だから動揺しまくってたっつったろ? 本題もそこに絡むんだが、一応、ある程度の絞り込みは出来たんだが……これを確認したら、更なる修羅場が出現しそうだろ? だから、ちょっと持て余してんだわ』
「確かに、そんな事したら運営が喜んで地獄を顕現させそうだよなぁ」
『だよなぁ……』
テツの判断を称賛を送りながら、ユーヘイはダディの方に視線を送る。
「いや、ちょっとクールダウン挟もう。あれだけ拳銃を撃ちまくったし、山さんにメンテナンスしてもらわないと怖い」
「確かになぁ……それよりも俺は、ユニオン全員の装備関係もチェックしないと怖いなぁって思ってる」
ダディの提案にユーヘイが頷きながら懸念を伝えると、ダディはギョッとした表情で松本と谷城を見る。
「あーっ! そうか! 他のギルドに鑑識って居ないのか!」
ダディの叫びに二人は困惑の表情を浮かべて頷く。その反応にユーヘイは困ったように首を鳴らしながら、テツに呼び掛ける。
「とっつぁん、一旦、クールダウンというか準備タイムが必要だわ」
ユーヘイが無線機に向かって苦笑混じりに言うと、テツがだよなぁと応じた。
『あれだけの激戦だもんなぁ、そりゃぁ整備は必要か』
「んだ。拳銃だけじゃなくて、多分、車両の整備も必要になるはずだろうし……とっつぁんのところに自動車整備士みたいなジョブの人間おるか?」
『あーあー、いるいる。後でSYOKATSUに行かせるか?』
「頼むわ。拳銃の整備でウチの山さん忙殺されそうだし」
『分かった。すぐに向かわせるわ。んじゃ、フィクサーの拠点はタイミングを合わせて、って形だな?』
「それで頼むわ」
『おうよ。具体的な日取りが決まったら連絡頼むわ』
「はいよ」
無線を切り、ユーヘイは周囲を見回し、パンパン! と手を叩いた。
「よぉーし! 撤収! 撤収! SYOKATSUに戻るぞ!」
ユーヘイの号令でDEKA達が動き出し、後に『ベイサイド・ラプソディー』などと呼称される戦いの幕が閉じるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ゲーム内掲示板スレッド
【マジで】祝! DEKAユニオン結成スレッド【良いんですか!?】
・マジDEKA
ユーヘイニキの提案で、ほぼ全てのDEKAプレイヤーがユニオンを結成する事が決定!
まだユニオンに参加していないDEKAは声をあげよう!
我々は何者も拒みはしない!
・マジ一般人
ユニオンって何?
・マジDEKA
ギルドが気心が知れた仲間の集まり。同盟がそのギルド同士の緩い繋がり。ユニオンはギルドとかソロプレイヤーも含め、お互いが持つ情報とか技術とかをがっつり提供し合うような集まり、かな
・マジYAKUZA
全DEKAプレイヤー、第一分署化計画……総DEKAプレイヤー補完計画発動……
・マジDEKA
いやいや、無理無理。いくらユーヘイニキに監修してもらったって、そんな感じにゃならんって。それにどっちかというとユニオンという名前の巨大なギルドつう感じだぜ?
・マジDEKA
んだんだ。あまり第一分署の方々におんぶにだっこは申し訳ねぇって事で、そこらへんの決め事はガッチリしといた。第二と第三のギルドマスターが
・マジYAKUZA
お前じゃないんかーい!
・マジDEKA
いやいや、うちのような弱小ギルドにそんな発言権はねぇよ
・マジDEKA
いや、しゃべった感じ、ユーヘイニキ、そういう格付けみたいなのマジで無関心だから、案外聞いてくれそうな雰囲気あったぞ?
・マジDEKA
いやいやいやいや! 勘弁してくれって! 有名人フルメンバー相手に何かを言うとか無理無理無理無理無理!
・マジDEKA
そんな身構えんでも……ユーヘイニキにしろヒロシ兄貴にしても、トージ君にしても、マジで配信で見たまんまだったから、普通に話せよ。むしろこっちが身構える方が失礼になるぞ?
・マジDEKA
えええぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇ……
・マジDEKA
そういう感じだから、まだ参加してないDEKAは参加した方が特だぞ。第一分署の射撃室、申請すれば使わせてくれるらしいし、質問すればアドバイスとか訓練方法を指導してくれるとも言ってるからな
・マジイリーガル探偵
裏山! こっちは射撃訓練する場所すら確保するのが大変なのに!
・マジYAKUZA
アングラのYAKUZAギルドに声かけたら? 一応、アングラのYAKUZAも射撃場つう名前の空き地があるし
・マジイリーガル探偵
わぁお! 貸してくれるかな!?
・マジYAKUZA
大丈夫じゃないの? 大丈夫だよな?
・マジYAKUZA
大丈夫じゃね? 時々、『不動探偵事務所』のギルメンとか借りに来るから
・マジイリーガル探偵
よっしゃぁっ! すぐにアングラへ行こう!
・マジYAKUZA
おいでやすぅ
・マジYAKUZA
一時間一億万円なりぃ
・マジイリーガル探偵
ひぇ?!
・マジYAKUZA
冗談冗談
・マジDEKA
悪質な営業はやめような?
・マジYAKUZA
はっ! ごめんちゃい! ポリスメェン!
・マジDEKA
それよりさぁ、消耗度ってアレマジ?
・マジDEKA
マジらしいぞ。今回ドンパチしまくった奴ら、後もうちょっとで消耗しすぎてロストする寸前だったらしいぞ。車両の方もヤバかったらしいぜ
・マジDEKA
ひょっ?!
・マジDEKA
っていうか、鑑識の山さんがヤバい感じになってたけど、あれ大丈夫か?
・マジDEKA
大丈夫じゃない。問題だ。
・マジDEKA
一番良い装備を頼む
・マジDEKA
シャダるなシャダるな。でも鑑識ってこれから絶対必要だろう? どーすんだ?
・マジDEKA
普通にDEKAやるよりかは敷居は低いだろうし、生産関係が大好きっていう層は多いから、DEKAよりかは来るんじゃないの?
・マジDEKA
いやでも、山さんのせいで印象が悪いようなぁ
・マジDEKA
いや、あれでも腕は確かだぞ?
・マジDEKA
腕は良いけど変態やぞ?
・マジDEKA
ひ、否定出来ねぇ……
・マジDEKA
でも必要だよなぁ、鑑識系
・マジDEKA
クエストでも必須になる可能性が上がるしな。まさにユーヘイニキ達が受けたクエストがそうだったし。あれも鑑識から事件が動いたからなぁ
・マジDEKA
もうちょい情報を開示してくれてもええんやで? 運営さん(チラチラ
・マジDEKA
どーもすみますぅん!(by運営
・マジDEKA
……マジで言いそうなのがなぁ
・マジYAKUZA
一応、アングラにもブラックスミス系だけど整備できる職業はあるぞ?
・マジDEKA
いやいやいやいや! DEKAの装備(国民の税金の結晶)をYAKUZA(非合法暴力装置)に整備って! そりゃぁアカンやろ!
・マジYAKUZA
いやまぁ、ちょっと言ってみただけ。食いついたら食いついたで面白いとは思ったけどな(ボソ
・マジDEKA
ネタに全振りすんなや
・マジDEKA
でもこのままだと、時間がかかって大変なんじゃ?
・マジDEKA
そこは頑張れ、だけど。うちのギルドマスターなんかは、この暇な時間を使って訓練しようぜ、って話はしてるし有効活用しようや
・マジDEKA
訓練か。ユーヘイニキに質問してアドバイスもらおうかなぁ……もらえるかなぁ
・マジDEKA
だから構えるなって。本当に配信まんまの人だから、フレンドリーに「今、ここがちょっと難しいと感じてるんすよ」って聞いてみ、配信まんまに教えてくれっから(経験済み)
・マジDEKA
経験済みって……が、頑張って聞いてみる!
・マジDEKA
おう、頑張れ
・マジDEKA
行ってきます!
・マジDEKA
いやぁ、ユニオン良いよね。これまでのDEKAってちょっと閉塞感というか孤立感あったけど、凄い世界が広がったように感じる
・マジDEKA
それな
・マジDEKA
それな
・マジDEKA
こんな感じだから、怖がらないで一声かけてくれよ! ユーヘイニキからも大歓迎って言葉をもらってるから! 皆で今回のイベント成功させようぜ!
・マジDEKA
あ、あの……自分達凄い少人数のギルドなんですけど……
・マジDEKA
いらっしゃい! 大丈夫大丈夫、とりあえずSYOKATSUの第一分署のオフィスへ――
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