第142話  暴風警報発令

 ゲーム内掲示板スレッド


【いや運営君さぁ】第一分署を応援するスレ Vol.98【一部お気に入りをコスリスギィ!?】


・いやDEKA

この板はギルド『第一分署』をこっそり応援するスレッドです。彼らのプレイングやスキル構成、その他の検証などは他の板でやってますのでそちらを参照しましょう。

また、彼らのギルドに対するアンチコメント、アンチ反応、アンチ行為全般はやめましょう。いやマジでやめましょう。光速の早さで運営が反応します、マジで洒落にならないのでやめましょう。

ネチケットとルールを守り、運営が規定しています利用規約を守った書き込みをしましょう。お願いします。




・いやYAKUZA

……狙い撃ち? なして凄そうな中ボス感溢れるNPCがニキ達を知っとんねん


・いや探偵

前に三つの勢力が協力したクエストの時も、確かフィクサーの奴らがニキ達の事を認知してたよな? それにしたって、中ボスって……


・いや一般人

ニキだけじゃなくてテツの親父も認知されてなかった?


・いやYAKUZA

あーそうだったなぁ


・いやDEKA

あー知りません?


・いやYAKUZA

何がよ?


・いやDEKA

ここのNPCへの好感度とか、この世界の秩序とかそう言ったルールを守護する人達って、物凄く広く黄物世界の人達に認知されてるってご存知ない?


・いやYAKUZA

ふぁっ!?


・いや一般人

ふぁっ!?


・いや探偵

ファーーーーーー!


・いやDEKA

それはゴルフですがな


・いやYAKUZA

ゴルフはどうでも良いんだけど、認知されているってマジで?


・いやDEKA

マジマジ。今度地上に観光しに来た時とか、そこらのお店のおっちゃんおばちゃんに聞いてみ? 此花このはな なつめってどうよ? みたいな事。きっと「ああ、荒くれ者の中でも一本筋が通ってて偉いねー」みたいなコメントくれるぞ?


・いや一般人

マジでっ!?


・いやDEKA

たまたまさ、俺らのギルドメンバー揃ってメシ食ってた時にポロっと、ユーヘイニキ達みたいにゃ出来んよなぁ、みたいな愚痴を言ってたらさ、「いやいや、彼らは彼らで大変なんだよ。だからアンタ達が彼らを助けられるように頑張んな? 腐ってる暇なんてないだろう?」みたいな説教食らった。イエローウッドの大衆食堂のおばちゃんに。


・いやYAKUZA

ふあぁー


・いや探偵

ふあぁー


・いや一般人

ふあぁー


・いやDEKA

いやまあ、正論過ぎて何も言えんかったんだけど、確かにとも思ったからさ、今回のイベントの後半は結構頑張ってるよ、うちのギルド


・いや一般人

あれ? それってもう広く知られてると思ってたんだけど、知らないの?


・いやYAKUZA

初耳です


・いや探偵

すまそ初耳


・いや一般人

初耳だね


・いや一般人

YAKUZAつーかアングラって新聞とかねーの? つーかノービス・探偵は新聞読めよ。普通に大手ギルドが解決したクエストとかの事件が掲載されてるぞ? それ繋がりでNPCが広く有名プレイヤーを知ってるんだろ?


・いやYAKUZA

ふぁっ!?


・いや探偵

マ、マジかよっ!?


・いや一般人

それ、マジで知らなかった! 結構高いじゃん新聞って。出費がなぁ……


・いや一般人

定期購読だと少しお得。つーかわりとクエスト関係の取っ掛かりになったりするから、見といた方がいいぞ? 稀ではあるけどユニークジョブクエストに派生する場合もある


・いや一般人

マジでっ!?


・いやYAKUZA

ちょっと調べた。つーか普通に地上の新聞、定期購読出来るわ。してきたけど


・いや探偵

したんかいっ! つーかユニークつーと、イリーガルじゃない方の探偵の情報とか出たり?


・いや一般人

無くはないんじゃない? 黄物の運営だよ? 


・いや探偵

い、言い返せねぇ……


・いやDEKA

そして当たり前のように第一分署さんが窮地な訳なんだが


・いやDEKA

これ、配信を見ました、って助けに行っても良いんだろうか?


・いや一般人

どーなんだろう……でも、運営がこうやって見せたって事はヘルプに入っても良いんじゃないの?


・いや探偵

ちょい待ち……あー、DEKAのニキ、今どこ?


・いやDEKA

へ? ベイサイドにおるけど?


・いや探偵

詳しくはクエスト失敗しそうだから言わんけど、リバーサイド寄りのベイサイド郊外を巡回して欲しいって


・いやDEKA

詳しくはクエスト失敗ね……了解、そっち巡回するわ。他のDEKAにも?


・いや探偵

あー……


・いや一般人

一体、何が起こっているんです?


・いやYAKUZA

第三次世界大戦だ


・いや探偵

ちゃうわ! ええっと、イエローウッド方面の郊外にも一定数回してだって


・いやDEKA

了解了解、何となく何をして欲しいか理解。つまりニキ達の助けになるって事だな?


・いや探偵

詳しくは言えんけどね


・いやDEKA

急行する!


・いやYAKUZA

マジで何が起こってるんだ?


・いや一般人

何だか嵐の予感が……殿! あ、嵐が、嵐が来るですじゃぁあぁぁぁぁっ!




ーーーーーーーーーーーーーーーー


「どうしたよ? 急にリバーサイド方面に向かうって」


 ギルド仲間の不審そうな視線に多少の居心地の悪さを感じながら、視界内インターフェイスシステムを操作して、ゲーム内掲示板スレッドを消し、真面目な表情を仲間へ向ける。


「詳しい説明は俺も聞いてない、つーか掲示板使ってやり取りした場合クエスト失敗する事があるから、してもらえてないと言うか、聞いてないんだが……けど多分、ユーヘイニキ達のフォローが出来る、と思う」

「思う、ねぇ?」


 どこか馬鹿にしたような口調で鼻で笑われ、彼はムッとした表情を批判的な仲間に向ける。


「別にやりたく無いなら強制はしねぇよ。俺らのギルドはエンジョイだから、ゴリゴリの攻略をしてないからな。ただ、車は使わせてもらうから、君はバスなり電車なりを使って移動しろよ?」


 彼はそう言うと、他の仲間に視線を向ける。どうよ? と問い掛けられたと感じた他の仲間達は、力強く頷いて即、車に乗り込んだ。


「ありがとう!」


 彼は運転席に乗り込み鍵を回す。


「ちょちょちょ!? お前らマジかよ!?」


 一人批判的な態度をしていた仲間が、車に乗り込んだ彼らを信じられない表情で詰め寄る。


「別に第一分署の手助けをしなくたってイベントは進むだろ?! ポイントだってまだまだ稼げてねぇじゃねぇか! パーティー推奨のクエストレベルなのは、お前らだって理解してんだろ?!」


 一人残されそうになった批判的な仲間に、他のメンバーが冷めた目を向ける。


「これが他のゲームみたいに、イベント進行度みたいな感じで状況が分かっているなら、君のその意見も分かる。けど黄物では全プレイヤーが協力して動かないと、本当にヤバイんだ。ここの運営は特にマジでヤバイ。そんな状況で自分だけ良ければいいやって考えで動くのは、自分的には無いと思ってるんだ」


 他の仲間が誰も説明しないから、仕方なく運転席の彼が、あり得ないという表情をしている仲間を諭すように言う。


「あ゛っ゛?! たかがゲームだろっ!?」


 まさか反論されるとは思っていなかったのか、顔を真っ赤にして怒る仲間に、運転席の彼が溜め息混じりに告げる。


「そのたかがゲームに本気出して遊んでるから面白いんだろ?」


 それは彼が大田 ユーヘイという、このゲームでトップ・オブ・トップを独走し続けるプレイヤーを見て勉強した事である。


 本気だから悔しい。真面目にやったからクリアーした時の達成感が凄い。真剣に取り組んだから被害者の『ありがとう』に功績ポイント以上の価値が出る。それらは全てから学んだ事だ。


 だけどそうじゃないプレイヤーもいる。もちろんスタンス的に、ただただゲームをエンジョイしているだけのライト層プレイヤーも多い。それを否定しないし、その遊び方も尊重している。だからこそ、自分達のギルドを作ったギルドマスターは『エンジョイ歓迎』というスタンスをしている訳だし、間違っても否定はしていない。


 そのギルドマスターは、バリバリの『第一分署』フリークであるけれども……


 運転席の彼は、何言ってんだコイツ、という表情をしている批判的な仲間の手をドアから外し、シフトレバーをドライブへ入れる。


「君のスタンスを馬鹿にはしないし、君の考え方を否定はしないよ。だから俺達の行動を否定しないでくれ。俺達は、このゲームの本当の楽しみ方を教えてくれた人達を助けたいだけなんだから」


 批判的な仲間に略式の敬礼をして車を出し、運転しながら彼は他の仲間に指示を出す。


「ベイサイドにいる他のDEKAプレイヤーへ無線を入れてくれる? ベイサイドのリバーサイドとイエローウッドの郊外へ、巡回に向かうよう指示を出して欲しい。出来ればバランス良く分散出来るような形で」

「了解! 第一分署の助けになるって言えば大丈夫かな?」

「それで良いと思う。俺らみたいな馬鹿は他にもいると思うからさ」

「「「「馬鹿はひどくないか?」」」」


 運転をする彼の言葉に、一緒に動いてくれた他の仲間が言葉を揃え、続いて心底面白そうに笑い出した。


 ゲラゲラと笑いながら、助手席に座る仲間が無線を手に取り、通信を入れる。


「あー、こちらギルド『夕暮れの太陽』の馬鹿野郎だ。ギルド『第一分署』好きなプレイヤーに告げる。彼らをフォロー出来るかもしれない方法がある。俺達はベイサイドのリバーサイド方面の郊外に向かい、そこでしばらく巡回する予定だ。もしもユーヘイニキ達をフォローしても良いって思ってくれる、俺達のような馬鹿がいたら、出来ればバランス良くイエローウッドとリバーサイド方面の郊外へ振り分けたい。誰か良案があったら教えてくれ」


 お前、それはちょっと無いんでないの? 仲間達が通信を入れた仲間に微妙な視線を向けると、返事が返ってきた。


『こちら馬鹿二号、ギルド「バレットバスターズ」だ。俺らは場所的にイエローウッドの方が近いからイエローウッドに向かう。今、ギルドホームに常駐してる奴に指示を出してもらう予定だ。それで良いか?』


 まさかの返事に、彼らはニヤリと笑って手を叩いた。もちろん、運転している人物を除いてだが。


『こちら馬鹿三号、ギルド「情熱のアソビの律動」です。協力しますよ。指示下さい。こちらはリバーサイドからもイエローウッドからも遠い、海岸付近でパトロールしてました』

『うぇーい! 馬鹿四号だぞ! ギルド「烈風の憧憬」だぜぃ! その祭り、俺らも一枚噛ませろや!』

『馬鹿五号、ギルド「麗しの騎士」です。自分達も是非、その作戦に組み込まれたし』


 そして続々と集まる自分達と同じベクトルの馬鹿達に、彼らは歓声をあげて喜んだ。


 ギルド『第一分署』を喰らう罠を打ち破る布石は、着実に構築されようとしていた。

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