第117話 後半戦の後半

 ゲーム内掲示板スレッド


【うるせぇ! そんな事より】今回のイベントを語るスレ No.45【筋肉だぁ!】


・肉DEKA

このスレッドは今回のイベントのあれやこれやを語るスレッドです。攻略云々は別の板なのでそっちに行ってね

ここでは単なる雑談に花を咲かせるだけなので、検証とか情報収集とかは別のスレッドに行くべし

ネチケットを守って楽しいスレッドライフをれっつえんじょい!




・肉YAKUZA

つーわけで、何も進展せずに一週間、あのマッチョブリブリを放置しておる訳ですが


・肉一般人

いやぁ、ユーヘイニキの配信に登場したなつめちゃんは強敵でしたね


・肉探偵

なぁ、あれで男なんだぜ? 詐欺だよなぁ


・肉YAKUZA

そーゆー事言ってるから、いつまで経ってもなつめはソロプレイしか出来ねぇんだけどな。いっそのことDEKAにコンバートして第一分署に行くのもアリだと俺は思ってる


・肉一般人

それはそれで見たい気もするが……戦い方が完全にYAKUZAだからなぁ、好きなんだろうし、それは無理だろ?


・肉YAKUZA

だからかわいそうだって話よ


・肉DEKA

なつめの話は置いておくとして、やっぱりネイガーは倒せない感じ?


・肉YAKUZA

現状最強の攻撃力を誇るゴルフの十三番のスナイパーライフルの弾丸すらバリアー抜けないのに、どうやってあのたーみ兄ちゃんを倒せと?


・肉DEKA

だよなぁ……こっちはワイルドワイルドウェストの連中が色々試してくれてはいるんだが、どれも糸口に繋がる様子が無いから


・肉探偵

あれ、凄いよね。生存時間が伸びてきてるし、段々相手の攻撃パターンとかも分かってきて、これであの無敵状態が消えたら、大分楽して叩けそうな雰囲気はある


・肉DEKA

マジリスペクト。あれは俺には無理だ。あんな毎回ボコボコにされて、しゃぁっ! 明日もやんぞ! ってな風にはならんよ


・肉YAKUZA

でも結束強いんだろ? WWWのメンバーって


・肉DEKA

ユーヘイニキの焚き付けもあるし、トージ君がキリツギ討伐してくれた事もあるし、ここで男を見せなきゃこのままゲームを楽しめねぇ! って感じらしい。あそこに入った友達が言うには、ギルドマスターとかの幹部連中がローテーション組んでやってるから、他のメンバーはイベントをしっかり楽しんでるらしいよ。これは自分達のケジメだから、とか何とか


・肉YAKUZA

是非、こっちへ来て欲しい根性じゃねぇか。おいちゃん、そういう馬鹿好きやで


・肉探偵

配信とか今凄い人気だしな、WWWの動画


・肉一般人

盛り返したよな。意図せずだけど


・肉DEKA

ま、黄物関連の配信者の成功者ってそういうパターンが多いから


・肉一般人

自称エンジョイ勢? 自称一般プレイヤー? 自称有名ギルドの金魚のフン? 自称嫁の付き添い? 自称花嫁修行中? 自称なんか勢いで入れちゃった? 全方位から認識されている変態?


・肉YAKUZA

全部『第一分署』の面々じゃねぇか


・肉DEKA

救援要請で助けてもらったけどさぁ、本当にユーヘイニキってさ、あのまんまなんよ。配信してようがいまいが、ずっとあれなんよ……やっぱさ、そう言うのを直で見ちゃうと、『自分自身が』エンジョイ勢っていう意味なんだろうなぁって思う


・肉DEKA

楽しそうだもんな、第一分署。少なくとも、俺みたいにクエストがクソ難しいんじゃボケェって感じにならんし、クリアーしてるところしか見てないけど、クリアー出来なくてもそれはそれで楽しむんだろうなっとは思う


・肉YAKUZA

YAKUZAプレイヤーでも第一分署の心得を真似して成功したギルドとか多いからなぁ


・肉一般人

そうなの?


・肉YAKUZA

そうなんだよ。何事も楽しもうぜ! ってスローガンで遊んでるギルドでな。今、トップスリーがその方針に切り替えて化けた連中だし


・肉一般人

第一分署効果すげぇー


・肉探偵

すげぇー……ってか、こっち界隈だと完全に親愛なる隣人の友の連中がそのタイプか


・肉一般人

中嶋ァ! ですか


・肉一般人

カティかリーナと呼んで差し上げて


・肉DEKA

第一分署の一部では絶対に呼ばれないんですね分かります


・肉YAKUZA

あれ、分かっててやってるのが凄くスコ


・肉DEKA

わかりみ!


・肉探偵

分かります


・肉一般人

理解しまくり!


・肉DEKA

皆、第一分署大好きだよなぁ


・肉YAKUZA

うん! 大好きSA!(※1)


・肉探偵

やめい! 妙なレコードとか出ちゃうからやめい!(※1)


・肉DEKA

頭の中に爆弾が!(※1)


・肉探偵

だからやめい!




ーーーーーーーーーーーーーーーー


「あ、ありがとうございましたぁ!」

「あいよー」

「また何かあれば救援要請出してくださいね」

「はい!」


 ガッチガチに緊張して、顔を真っ赤にしながら頭を下げる新規加入プレイヤー達に手を振りながら、レオパルドの運転席に乗り込んだユーヘイと、助手席に乗り込んだトージは、車を走らせると途端に気を抜いた。


「こればっかりは慣れないな」

「はい、配信で露出してはいますけど、ここまでこう、アイドルみたいに扱われるのはちょっと」

「だよなぁ」


 救援要請をこなせばこなす程、何度も同じような視線や態度を向けられる事に、二人は苦笑を浮かべる。


 この配信を見ている視聴者からすれば、お前は何を言っているんだ? と突っ込みを禁じ得ない事を言っているのだが、二人にその意識は無い。


 配信界隈で限定すれば、ユーヘイにしろトージにしろ、業界最大手であるサラス・パテに所属するトップタレント、サラス・パテの稼ぎ頭である華樹かじゅ らいち、LiveCue視聴登録者数もうすぐ二百六十万人を突破するようなトップVラブとタメを張るレベルで人気なのだから、そういうキャーキャー言われるのは当たり前なのだが、やはり当人達にその自覚は皆無である。


 Vランナーとしては非常識な事に、ユーヘイにしろトージにしろ、人気云々に関してはどうでも良いと思っていたりするのが、実にらしいと言えばらしい。


「その事はどうしようもねぇから放り投げるとしてだ、あれから進展ねぇなぁ」

「四天王の事ですよね?」

「ああ、ちょいちょい団長の配信なんかはアーカイブで確認してるんだが、攻撃パターンとかの参考にはなるんだが、糸口が全くねぇのがなぁ」

「そうですよねぇ、もうすぐイベントも終わっちゃいますよね」

「後一週間はあるけどな」


 なつめを呼び出して話を聞き、結局は何か動くまで何も出来ないからと、あれから一週間、ひたすら救援要請を受けてお茶を濁している。だが未だに動きがない状態に、さすがのユーヘイも焦れてきていた。


 そんなユーヘイにトージが説明された事ですけど、と口を開く。


「なんと言うか、僕らがそれぞれの区画のパーセンテージを減らす速度が予定より早かったから、だから運営が手を回してストップをかけたんじゃなかろうかみたいな」

「ダディがそう言ったのか?」

「はい。そして吉田先輩的には時限式じゃないかと予想してるみたいです。わざわざストップをかけたのは、イベント期間の期日を目一杯まで使ってフィナーレまで持っていきたい苦肉の策じゃないか、って」

「……あり得そうなのがまた……」


 トージの説明にユーヘイが苦笑を浮かべる。


 確かに今回の四天王にしろセントラルのコマンドーにしろ、ちょっと運営っぽくないなと感じていた。特にプレイヤーの動きを限定するようなバリアー、あれは本当にここの運営らしからぬ処理だとも思っていたから、ダディの推測通りなんじゃなかろうかとユーヘイは頷く。


「時限式だとすれば、早ければ今日、遅くても明日辺りかな……」

「え? どうしてですか?」

「いや、団長達のお陰で四天王の動きなんかの情報は結構出揃ってるけど、もしも団長達が動いてなくて、何も情報がない状態であれらと戦え、ってなった場合を考えてみれや」

「……情報収集にそれなりの時間が必要」

「そゆこと。しかも一撃が重たい化け物相手にそれをしろって、一日二日でどうこうなるレベルじゃねぇべ?」

「なるほど、だから残り一週間か遅くても明日、と」

「希望的観測も含むけどな」


 ユーヘイが肩を竦めながら、お馴染みのミントシガーを口へ運ぶ。その横でトージは自分のナビゲーションマップに視線を向ける。


「……あれ?」

「ん? どうした?」

「えっと、ヘルプマークが消えました」

「はい?」


 ユーヘイは車を路肩に寄せて一時停止し、消していた自分のナビゲーションマップを呼び出す。運転に集中する為に、マップ関係は全部トージに任せていたので、消していたのだ。


「マジだ。一気に消えたな」

「……先輩、これって」

「どうやらダディの予想が当たったみたいだぞ」


 ユーヘイはニヤリと笑って無線機を掴み、通信を入れる。


「こちら大田。ナビゲーションマップを確認せよ」


 ニヤニヤと笑いながら自分のナビゲーションマップを縮小して、ゲーム全体を確認するが、やはりどこの区画にもヘルプマークは無くなっていた。


 やがて通信から仲間達の声が聞こえてきた。


『……は?』

『ヘルプマークが消えてる?』

『キタキタキタキタキタキタ! イベントキター!』

『ふぇ?! イベント?』


 ノンさんは唖然とした声を出し、ヒロシがなんじゃこりゃみたいな感じの口調で呟き、ダディは嬉しそうに叫び、その叫びを聞いたアツミが驚いたように聞き返す。


「ダディ、大当たり」

『やっぱり時限式だったか、これで後半戦の後半の始まりって事だろうね』

『ちょっと二人で通じ合ってないで説明しなさいよ』


 不機嫌そうなノンさんの言葉に苦笑を浮かべつつ、ユーヘイはトージに運転代われと合図を送り、運転席から降りて助手席へ。トージはうえぇ?! と嫌そうな表情を浮かべながら、器用に助手席から運転席へと移動した。


「とりあえず署に戻れ」

「へーい」


 トージに指示を出し、ユーヘイはそのまま無線を続ける。


「どうする? 一応、今は署に戻る感じだけど、捜査課のオフィスで落ち合った方が良いかな?」

『そうだね、多分、情報が向こうから来そうな予感がするから、そっちの方が良いかも。だからその時に説明するよ』

『ぶー、分かったわよ。あっちゃん、車に向かうからあっちゃんも戻って』

『あ、はい、直ぐに行くよ』

『んじゃ俺もこのまま署までツーリングと洒落混みますかね』


 ユーヘイは無線機を切ると、ぐっと伸びをしてトージの肩を軽く叩いた。


「忙しくなりそうだぞ!」

「さらば平穏、こんにちは騒動、そして久しぶり物騒な時間」

「お前も言うようになったなぁ」

「お陰さまで。先輩と一緒にいると事欠きませんから」

「お前もトラブルメーカーだろうが」

「違いますぅ! 勝手に向こうから来るだけですぅ!」

「それをトラブルメーカーっちゅうんだよ」

「そんな愛などいらぬぅ!(※2)」

「あきらめろん!(※3)」


 騒々しく楽しく言葉のプロレスを続けながら、これから始まる騒動に、なんだかんだ胸を踊らせる二人なのであった。




※1 博士! お許しください! ァアァァァァァァー……で有名な古いアニメです。一時期、某笑顔の動画サイトでリバイバル的な流行を起こしましたね。懐かしい。

※2 世紀末救世主伝説の、最近だとターバンのガキに命を狙われているお方の台詞。

※3 とある宇宙で三角関係のうんたらこうたらするアニメで、とある声優さんの演技で諦めろ! がアキラメロンに聞こえたっちゅう空耳だとか。自分は某笑顔の動画サイトで知りました。

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