第12話 リバーサイド区へ
ゲーム内掲示板スレッド
【こらぁっ!】第一分署を見守る会【運営くんさぁ~】
549.見守るYAKUZA
……ドン引きってレベルを越えてるんだが運営さんよぉ……
550.見守る一般人
DEKAのクエスト鬼畜すぎん? ねえぇっ! 運営くんさぁっ!
551.見守るYAKUZA
こっちのアングラ関係のクエストもきっついっちゃきっついが……さすがにこれは無いだろ……
552.見守る一般人
ねぇねぇ、DEKAと似たようなクエストって言うと、一般人の探偵職だと思うんだけど、こんなきっちぃ感じ?
553.見守る探偵
んなわけあるかーぃ! このやぶすきってKEN警の刑事さんと遭遇した事あるけど、ここまでねっちょりしたキャラじゃ無かったぞ? いやまぁ、探偵の場合はKEN警よりもKC庁と関わりが深いから絡まないって言うのもあるけど
554.見守る一般人
なぁなぁ、それよりもユーヘイニキの睨みにうざすぎがビビってたけど、そういう威圧みたいなスキルってあんの?
555.見守る探偵
うざすぎ……言いえて妙だな……精神に作用するスキルはないよ
556.見守る一般人
え? じゃぁ何でビビったの?
557.見守るYAKUZA
ああ、多分、兄貴はかなりの廃人だったんじゃねぇかな? プレイングとか見る限り、その気配は感じるし
558.見守る探偵
ん? 廃人だとAI制御のNPCがビビるの?
559.見守るYAKUZA
何と説明すれば良いか……説明は難しいんだが、廃人レベルでVRゲームを遊んでいると、ある日突然VR内で当たり前のように使えるスキルを現実世界で使えたりするんだ
560.見守る一般人
へ?
561.見守る探偵
ああ! VR野球ゲームでバカスカ打ちまくってた強打者プレイヤーがプロテスト合格したとかってニュースあった!
562.見守るYAKUZA
もちろん非現実的なスキル、例えば魔法であったり錬金術であったり、そういうスキルは使えんぞ?
そうそう、そのプロ入りしたヤツも野球ゲームの廃人だったヤツだ
563.見守る一般人
つまりどういう事だってばよ?
564.見守るYAKUZA
殺気を飛ばす、闘気を燃やす、気合いで相手を圧倒する、これ系統のスキルを習熟した状態だった場合に別のVRゲームにそれを持ち込める。リアルで使えるレベルで馴染んだこの手のスキル、いやもう完全に技能だよな、純粋なプレイヤースキルとしてゲームが認識する
565.見守る探偵
でもAというゲームに威圧はあるけど、Bというゲームには威圧は無い、っていう状態でそれって通用するの?
566.見守るYAKUZA
する。というかなんでそれが通るか、VRの産みの親である人達がわかんね、って言ってたから何で通じるのかは知らんぞ?
567.見守る一般人
VR摩訶不思議アドベンチャーじゃん
568.見守る一般人
もうそう言うモンだと割り切るしかねぇんじゃね? ほら皆大好きなアニキが言ってたじゃん。割り切れよ、じゃないとお前が死ぬぞ?
569.見守る一般人
はいねーーーーーー!
570.見守る探偵
はいはいテンプレテンプレ。でもなるほど、だからスキルアシスト関係をあそこまで細かく設定してたんだ。すげぇ納得した
571.見守るYAKUZA
大田テンプレートはそうじゃなくても神懸ってるけどな
572.見守る一般人
うおおおおおおお! ニキすげぇっ!
573.見守る一般人
リスペクトスキルって……どんだけあんたは大柴下 キョージを愛してるんだ! 大好きだー! ニキー!
574.見守るYAKUZA
……でもリバーサイドか、あそこヤバイが……
575.見守る探偵
でも、この三人だったらどうにかしてくれそうな勢いはありそうだよね
576.見守る一般人
ニキもネキもダディもがんがえー!
ーーーーーーーーーーーーーーーー
セントラルステーション西口からリバーサイド区を真っ直ぐ横断できる四号道を、ユーヘイらを乗せたレオパルドが走行していた。
「場所は四号道一橋越えた二条通り辺りだっけ?」
ナビゲーションマップを見ながらユーヘイが確認するように聞くと、助手席で地図を広げていたダディがそうだと返事をする。
セントラルステーションから西に広がるリバーサイドは、その名前の通りに巨大な川が区内を蛇行するように流れている。エイトヒルズやイエローウッドと比較すると、若干道が複雑だ。それとリバーサイドは倉庫や貨物の集積所、工場等が密集している関係もあって非常に迷い易い構造をしているのも特徴である。
「なんでこんな場所に闇カジノだの闇金だのヤクザだのが幅を利かせてるのかしらね」
夕焼けに染まる灰色の倉庫街を眺めながら、ノンさんが呟く。
「身軽に動ける場所だからじゃね?」
ユーヘイがサングラスをグイッと持ち上げて位置を調節しながら言うと、ノンさんが不思議な顔をする。
「滅多に人が来ない。悪い事をしてもバレにくい。バレたらバレたでさっさと撤収できる。廃工場とかだったら尚更好物件」
「ああ、納得した」
ユーヘイが悪い事を企みそうな奴らの考えそうな事をつらつら羅列すると、ノンさんは確かにねと苦笑を浮かべた。
「ああ、あれだ」
「ん? ああ、あの看板ね……ってかホテルというよりモーテルやん」
二人を会話を聞きながら周囲を見回していたダディが、道路の脇に設置された巨大な看板を指差し、それを確認したユーヘイはこのまま直進ねと進む方向が合ってる事を確認しつつ、看板に写っている写真に突っ込みを入れる。
「いやまあ、モーテルもホテルの一種だからね」
「知っておりまする。いやさ、マッチに書かれてるホテルのロゴがさ、都心とかにあるような高層系のイラストだったから」
突っ込みに突っ込みを入れられ、ユーヘイは苦笑を浮かべながら、胸ポケットからマッチを取り出して、それをノンさんに投げる。
「うん、これはちょっと肩透かしをするかもね」
マッチをキャッチしたノンさんが、書かれてるホテルのロゴを見て苦笑を浮かべた。
「でしょ?」
だよねと頷きながら、ユーヘイはミントシガーを口に咥え、そのままダディに菓子箱を渡す。
「ホテルはどんな役割があるんだろうな?」
ダディはありがとうと片手を挙げて菓子箱を受け取り、一本取り出して、あーと口を開けて待っていたノンさんの口へそのまま突っ込み、もう一本取り出して自分の口に咥えながら言う。
「待ち合わせか、依頼人との顔合わせか」
ミントシガーをクイクイと揺らしてユーヘイが呟くと、カリカリとリスのようにシガーをかじるノンさんが、それだと在り来たり過ぎない? と反論する。
「在り来たりじゃないのなら……依頼を受ける場所か?」
菓子箱をユーヘイに返しながら、ダディが呟くとノンさんが苦笑を浮かべる。
「それって待ち合わせじゃないの?」
「ああいや、言い方が悪かった。つまりだ、何らかの方法で仕事があるとスナイパーに知らせが行くだろ? んでまずはホテルに一泊させる……かならず決めれた部屋で」
「ひゅー♪ 確かにありそうな感じ」
「で、決められた部屋で決められた手順のようなモノが用意されていて、その手順に従って動いていく……一泊した後は喫茶一橋に行って、そこで新しい手順を踏んで、次はショットバーカルマへ、とか?」
「なるほどなるほど……ありそうな感じがするよ」
二人にありそうと言われたダディは、推理小説とか好きなんだよ、と照れたように小鼻をコリコリと掻く。
「仮の推測としてダディの案を採用して動くか?」
「そうね。どっちにしたって他の二つも回らないとならないし」
「だな。それと一旦そこで区切ってログアウトしないとな我々は。連続ログイン時間がそろそろヤバイだろ?」
「あ゛っ!?」
今後の方針を決定し、じゃぁそうやって動くか! と気合いを入れたノンさんに、冷静なダディが会心の一撃を入れた。
どのようなVRゲームでも同じ決まり事があって、最長連続ログイン時間というものが設定されている。どのゲームでも連続ログイン時間は七時間と決められており、これはそれ以上ログインし続けていると、脳への負担がよろしくない、という理由から絶対に守らなければならないルールとして設けられている。
「折角盛り上がって来たのに……」
「こればかりはしっかり守らないとな。強制ログアウト食らったら一週間ログイン出来なくなるんだよ?」
「ぐおぉっ?! 一週間は生殺しすぎるぅ!」
そしてこの連続ログイン時間の制限を破ると、どんなゲームでも重たいペナルティが課せられる事が多い。黄物だと強制ログアウトから一週間のログイン禁止処分。他のゲームでは一発ブラックリスト入りのアカウントBANという一発アウトもあるくらいに、最長七時間ルールは徹底されている。
「んじゃ俺も一旦ログアウトすっかな。食事の準備とか諸々済ませて、スッキリした状態で進めたいし」
それに俺だけログインしている状態で、このクエストが進んだら絶対詰む、と大真面目な表情で言うと、ノンさんとダディがそらそうだと笑う。
「でもそこら辺の仕様ってどうなってるのかな? クエスト参加者全員ログアウト状態だと、クエストの進行状態って一旦停止? それともゲーム内部の時間経過の影響を受けるのかしら?」
「どうなんだろうな……GMちゃぁん!」
「はいはい、呼びました?」
「うわっ!? いきなり呼ぶな! そしていきなり横に現れるな!」
「てへりんこ」
分からないなら聞く精神でGMちゃんを呼び出すユーヘイ。そしてすぐさま現れたGMちゃんはノンさんの横にちゃっかり座って、にこにこと笑う。
「んで、俺達の疑問のそこんところどうなの?」
「はい。クエストの詳細を確認してもらえますか?」
「ん?」
GMちゃんに言われ、ダディがクエストボードを確認する。
「クエスト詳細には、しっかりログアウト時のクエストの状態が説明されてますよ」
「あ! マジだ! クエストに参加しているプレイヤーが欠けた状態だとクエストが一時停止状態になる。ただし、不参加のプレイヤーが進めるように許可を出している場合は、クエストを進める事が可能って書かれてる」
それは助かる仕様だね、とユーヘイは満足そうに頷く。
「まっ、それでも二人と同じタイミングでログアウトすっけどな」
こんな濃いクエスト進めてる状態で、のんきにお使いクエストとかやってられないしな、とユーヘイは苦笑を浮かべる。
「ありがとうGMちゃん、助かるよ」
「いえいえ……それとですね、一部の仕様についての弁明を」
「あん?」
じゃぁまた! しゅぱんと消えると思っていたら、GMちゃんはちょっともごもごした感じで呟きながら、凄い申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「KEN警の刑事の介入ですが……こんなに早く登場するはずではなかったんです」
「はい?」
「不幸に不幸が重なりまして……まさかまさかのフラグが立ってしまい、こんなに早く出現トリガーが引かれるとは運営も思っていませんでした。申し訳ありません」
深々と頭を下げるGMちゃんに、三人は困惑の視線を向ける。
「つきましては具体的な救済処置の検討を――」
「「「ヤメテ!」」」
「へ?」
運営から三人に向けて何かしらの救済処置を考えてまして、と切り出したGMちゃんに三人はちょっと待ってとストップをかける。
「いらんいらん」
「ここからが燃えるんじゃない」
「大丈夫、まだまだ巻き返せる」
三人が余計なお世話と、GMちゃんの申し出をバッサリと切った。
「GMちゃん」
「はい」
「俺達は楽しんでるよ。だから運営の心遣いの気持ちだけは受けとる。具体的な救済処置はいらない。OK?」
「よろしいのですか? アイテム交換券とか渡そうかと」
「ぐぅっ!? それは魅了的だけど……大丈夫よ、私達はこの程度じゃ折れないから」
「そうだね。それに理不尽な状況ってヤツは残念ながら慣れてるからね」
はははははと目も口も笑ってない乾いた笑いを浮かべるダディに、二人も確かにと苦笑を浮かべる。
「本当によろしいんですか?」
「「「よろしいです」」」
「本当に本当ですか?」
「「「本当に本当によろしいです」」」
「分かりました」
GMちゃんは改めて深々と頭を下げてから、それではいつでもお呼びくださいと残して消えた。
「ちょっともったいなかったかも」
「かもな。大田、そこだ」
「あいよー」
ダディが指差した場所、ホテルの入り口へとレイパルドを進め、そのままチェックインカウンターがある建物へと車を寄せた。
「さて、ダディの推測は当たるかな?」
「当たったらそれはそれで嬉しいが」
「聞き込み聞き込み」
三人はレオパルドから降りると、楽しそうにチェックインカウンターへと向かったのだった。
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