第8話 調査パート
ゲーム内掲示板スレッド
【やったね】関係ないねちゃんねるを語るスレ【DEKAが増えるよ!】
※ここはDEKAプレイヤー・ユーヘイ氏と、最後の砦として踏ん張っているネキと旦那さんを見守るスレです
※マジで最後の希望なので彼らに対する誹謗中傷はやめましょう。というか見つけたら処されるので注意しましょう。
※迷惑な奴を発見したら運営に報告しましょう。スレの平和はみんなで守ろう。
215.関係ない一般人
ま……祭りじゃ! 祭りの時間じゃぁぁっ!
216.関係ない一般人
何が始まるんです?
217.関係ない一般人
第三次世――ってちゃうわ!
218.関係ない一般人
実際、何が起こってるんです? 今ちょっと作業してて把握出来てないんですけど
219.関係ない一般人
神がご降臨された
220.関係ない一般人
黄物最強のラスボスの攻略法が今解明された
221.関係ない一般人
えっと?
222.関係ない一般人
ゾロ目げと
223.関係ないYAKUZA
ステータスアシストの調整方法とそのテンプレート設定が公開されて、一気に攻略に弾みがついたってとこだな
224.関係ないYAKUZA
うひょー! セントラルのチンピラがすっかり雑魚になったぜ! これだよ! 俺達はこれをやりたかったんだよ!
225.関係ない一般人
ステータスアシスト? って何ですか?
226.関係ない一般人
え? 頭とか胴体とか腕とかにポイント振ってないの?
227.関係ない一般人
振ってはいますけど、頭にしか振ってないです。自分、新聞社で働いてるので
228.関係ない一般人
ああ! それならステータスアシストのクソさは実感出来ないか。ステータスアシストというのは、ステータスによるアバターへのアシスト機能の事だ
229.関係ない一般人
なるほどわからん?
230.関係ない一般人
俺、説明苦手なんだよ……キテキテ! 解説ニキ、キテー!
231.関係ない一般人
呼んだ? 呼んだね? では説明しよう。
今まで→リンゴを食べようとリンゴを手に取るとリンゴを握り潰す。
神の降臨後→リンゴを食べようとするとちゃんと手に取れるし、途中で飽きたから握り潰してジュースにしよう、ぎゅっぎゅっ、それをガラスコップを割らずに受け止められる。
ドヤァ~
232.関係ない一般人
ああ! なるほど! つまり微調整が出来ない感じだったと!
232.関係ない一般人
正解! ボッシュートになります!
233.関係ない一般人
なんでやねん
234.関係ない一般人
ゾロ目無視された……しょぼん
235.関係ないYAKUZA
おめおめ。んでそのお陰で本来雑魚にカウントされてる敵対YAKUZAのチンピラ相手でも苦戦してたんだが、ユーヘイ兄貴の通称大田セッティングのお陰で色々と捗るって感じになってな、かなりお祭り騒ぎになってるぞ
236.関係ない一般人
一般人の専門職である探偵関係のプレイヤーもぴょんぴょんしてた
237.関係ない一般人
ユーヘイ兄貴のお陰で心がピョンピョンするんじゃぁっ!
238.関係ない一般人
これでDEKAプレイヤーが増えてくれると嬉しいんだけどなぁ。ユーヘイの兄貴が言ってたように、一人であれはキツいって。最低でも車三台は欲しい感じだし、フォローとかサポートで相棒も欲しい感じだしよ
239.関係ない一般人
なー、ほんそれ
240.関係ない一般人
もっとドラマチックなDEKAの活躍が見たいぞ~!
241.関係ない一般人
聞いてる~? 運営~? 息してっか?
242.関係ない一般人
気持ちは分かるが、煽るな煽るな
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「うわっ?! こんなに違うの?!」
「マジかぁー……本当にDEKAの勘が働いて、今まで気づかなかった部分まで反応してるし……」
ユーヘイが設定したステータスアシスト関係の調整を伝授し、スキルポイントがそれぞれ温存していた分があったから『DEKAの勘』を二人に取得させると、二人は愕然とした表情で周囲を見回す。
「二人はレベル上げてるし、調査に関係すっるから頭にもポイント振ってるだろ? だから俺より反応する範囲は広いだろうし、俺より見つけられるポイントは多いと思うんだけど?」
「そうね。ちなみにどこが反応してる?」
ノンさんに聞かれて、ユーヘイはスキルが教えてくるポイントを指で示す。
「うん、私より数は少ないわ。なら、ユーヘイは分かる範囲で調べてくれる? 私達はユーヘイが反応してない範囲を調べるから」
「はいよー」
余っているスキルポイントを使って『調査』と、『DEKAの勘』のスキルレベルが上昇した事で現れた『DEKAの直感』も新しく習得して、ユーヘイは調査ポイントを調べる。
「んっと?」
来店した客が忘れたのだろうか、それとも強盗騒ぎで逃げ出したのか、乱雑に新聞が投げ捨てられていて、それが激しく自己主張するようにチカチカと瞬くので、ユーヘイはそれを手に取り眺める。
「火曜の銀行強盗団……」
デイリーウッドというちょっとゴシップ寄りの新聞であったが、連続強盗事件の記事もしっかり書かれており、強盗が必ず火曜日に現れる事、狙う銀行は同系列である事、押し入る銀行はセントラルステーションから距離が離れた場所である事などの情報が書かれていた。
「……火曜日……必ず火曜日……」
妙に引っ掛かるモノを感じながら、新聞を畳んで椅子の上へ戻すと、『DEKAの直感』が働く効果音がピロリンと鳴り、視線が勝手に誘導される。
「ん?」
視線を強制的に向けられた先には、ちょっと汚れた感じの衣服を来た老人が立っており、ちょっと気になる目付きでこちら側を伺っている様子が見えた。
「プレイヤー?」
頭上に目を向ければ、プレイヤーである事を示す表示、グリーンの矢印のようなマークが見えた。
「ノンさん、ちょっと外す」
「ん? あまり遠くに行かないでよ?」
「大丈夫大丈夫」
ノンさんに一言断って外へ出ると、老人がゆっくり歩いて行くのが見える。ユーヘイは少し小走りに老人に駆け寄ると、どうもと声をかける。
「あんだい?」
老人は気難しそうな表情で、ケッと威圧するようにユーヘイを睨むが、ユーヘイはまぁまぁとなだめながら、食べます? とミントシガーを差し出す。
「菓子なんか食ってられっか。わしゃこっちが好みじゃわい」
老人はそう言うと、くいっとコップを持ち上げる仕草をする。ユーヘイは素早く周囲を見回し、小さな酒屋を見つけると老人を誘導して、店でワンカップを購入して老人へと渡す。
「分かってるのぉ若いの」
老人は嬉しそうにフタを開けて、ゴクリゴクリと旨そうに酒を飲む。
「銀行を見てましたけど、何か気になる事でもありましたか?」
ぷはぁーっと一気にワンカップを飲み干した老人に、二本目のワンカップを渡しながら聞くと、老人はギロリとユーヘイを睨みつけ、周囲をこっそり見回すと少しだけ距離を詰めて、あくまでも独り言であるようにブツブツと喋りだした。
「リバーサイドを中心に放浪してるシンちゃんってダチがいてな。時々、売れる物がねぇかってごみ捨て場を見て回ってんだ。そのシンちゃんがよぉ、リバーサイドで闇金やってるチンピラの話を聞いちまったらしいんだわ」
「ほうほう」
「闇金を仕切ってるYAKUZAが殺されたってんだ。
「……」
ユーヘイは何でもありませんよ、という雰囲気でゆっくりミントシガーを口に咥え、三本目のワンカップを老人の目の前で揺らす。
「闇金、しかもYAKUZAがやってるような所でYAKUZAが殺された。しかも金は奪われなかったらしいんだが……シンちゃんは耳が良くてな、聞かなくても良い話も聞いちまってな」
老人は三本目のワンカップをもぎ取ると、乱暴にポケットに突っ込み、もったいぶったように歯抜けの口でニカァと笑う。
「へいへい」
ユーヘイは四本目のワンカップを渡すと、老人はうへへへへと笑って、兄さん分かってるじゃなぇかと嬉しそうに四本目をポケットに突っ込む。
「失くなったのは武器、拳銃だったって話だ。それと最近、龍卜会の構成員の動きが激しいらしい。きぃーつけな」
「協力ありがとうございます。んで、じーさん、ヤサはどこよ?」
「わしはベイサイドを中心にうろついとるよ。何か聞きたい事があるなら、ベイサイドでテツはどこだ、って仲間に聞けば教えてくれるぜ、ユーヘイのダンナ」
「……配信視聴、ありがとうございます……」
「ひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇ、頑張りなー」
老人テツは手をヒラヒラと振って立ち去った。残されたユーヘイは、ガリガリと頭を掻きながら、重い溜め息を吐き出す。
「マジで本格的な刑事ドラマになってるじゃねぇか……マジかー、これマジかー」
プレイヤー達は勘違いしているが、このゲームにおいてクエストの失敗とは、他のゲームとは仕様が少し違う。
普通のゲームではクエストを失敗すれば、そのクエストの最初からやり直し、というのが普通である。しかしこのゲームでは、クエストの失敗とは物語が進む事を意味するのだ。つまり、単純だった事件がどんどんどんどん複雑に、より深く深く物語が広がっていくという事を意味する。
なのでこのゲームにクエスト失敗というモノは存在せず、ガンガンガン内容が複雑化して解決するのに必要な行程が増えていく、つまりは難易度が上がっていくというのが仕様になっている。もちろん、運営からのお知らせは存在せず、プレイヤーは誰一人としてこの仕様を把握していない。
「リバーサイドの事と、
まぁこれもヤベェDEKAっぽいっちゃぽいな、それはそれで良し! と呟きながら銀行に戻る。
「ん?」
悪いねと規制線の前に立つ警官に片手を挙げながら中に入れば、ノンさんがきっちり七三分けしたいかにも管理職っぽい男性に、あの妙にねちっこい感じの顔で、ぬとーと顔を近づけながら、何やらブツブツと語りかけていた。
「何あれ?」
近くのカウンターで何やら帳簿を見ているダディに声をかければ、彼はトントンと帳簿を指差す。
「ん?」
ダディが指差す先を見れば、そこにはイエローウッド商店街集金うんたらかんたらという表記と、集金日は毎週火曜日である事が書かれていた。
「火曜の強盗団」
「妙な一致だと思ってね。で、私よりもノンさんの方が頭に振ってるポイントは多くて、それに連動する形であちらの人に反応があったって感じ」
「ほーん……何者?」
「支店長」
「……リーク?」
「十中八九」
ダディにミントシガーを差し出しながら、マジでドラマになってきたじゃん、とユーヘイは苦笑を浮かべた。
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