言い訳

内海孝一。一年三組五番。身長は170半ば、体重は知らない。クラスの中ではそれなりに目立つ方であり、授業中にもよく発言する。放送委員会に所属しており、部活には入っていない。清水恭平、三波和弘と仲が良く、良く一緒にいる。勉強は可もなく不可もなく、数学が少し得意で英語が少し苦手。好きなものはゲームと漫画。どこからどう見てもの少年。清水が計画した肝試しに参加、発案者の清水よりも積極的に動き、抜け道の制作もノー残業デーなどの情報も彼が掴んできた。集合時間前に清水恭平を何らかの形で呼び出し、殺害。その後肝試しのために校内に侵入し、どこでかは知らないが三波和弘を殺害。死体に赤い服を着せるなどして緋ずきんさんの犯行に偽装、それを部長に看破され、殺害しようとしたところで私に阻止される。

これが、私の知る内海孝一のすべてだ。

彼は殺人犯だ。私のようにうやむやにならなかった、正真正銘の殺人犯。それも友人を殺した畜生だ。

彼は自身の計画を看破、というより自分の殺人を貶した部長を殺そうとした。よっぽどの自身があったのだろうか。私が止めなかったら本当に殺しただろう。

部長が煽らなければ...と思わなくもないが、元々全員殺す気だったかもしれない。というかそもそもなぜ緋ずきんさんの仕業に見せかけたのか。私達はともかく警察は誤魔化せないのでは?...まあいい。そもそもの殺人の動機も知らないのだ。実は二人にいじめられていたとかかもしれないし、ただ人を殺したかっただけかもしれない。怪異に見せかけて殺したかった。とか。

彼は危険だ。処理しなくてはならない。

逃げれるのなら逃げるのが一番。だが私や部長、不死身の神宮さんはともかく長谷川さんは一般女子高校生だ。追いつかれる可能性が高い。だから逃げられない。

だから、

気絶がなにかさせるのもハードルが高い。

ただ殴りつけるだけではそう簡単に気絶しないだろうし、そもそも私の獲物はナイフだ。

だから、

コイツは危険だ。私が部長をかばったことで私達にも殺意を向けるだろう。

だから、

コイツは死んでもいい人間だ。そもそも向こうも殺そうとしてくるから正当防衛だ。だから、だから、



いや



。言い訳を重ねるのは。

殺すべき理由を並べて、もっともらしく言い訳するのはやめよう。

素直になろう。

私は、彼を殺すべきだと...いや、殺したいと思った。

だから、殺す。

あの日のような衝動のままの殺人ではない。

私は、初めて、自分のはっきりとした意識を持って彼を、


殺す。


考えなんか、それだけで十分だ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る