懐疑の目
「...って何してるんですか?」
訝しげな眼を私たちに向ける。そりゃそうだ。悲鳴が聞こえて行ってみたら抱き合う同級生。いつも心を読まれているがあれは私にもわかる。そっち系の趣味でもあると思っている目だ。
「いやあ、長谷川さんがちょっと腰が抜けちゃってて」
「腰が?...ああ、
「じゃあ、這ってでもいいから取り合えず出てください。少し死体を調べたいので」
死体を調べたかったが、今の彼女を放っておけない。死体を調べる所を見たくもないだろうから丁度いい。
「分かった。肩、貸すよ。立てる?」
「あ、はい」
そもそも私が調べても死んでいる以上のことが分かりそうにない。死体を見慣れている...というより死体によくなっている彼女なら何かわかるかもしれない。
「あ、あの、部長さんは?」
そういえばいない。まああの人のことだ。大丈夫だとは思うが、
「あの人は悲鳴が聞こえたときに私より早く走って行っちゃいました。まだ来てないなら寄り道でもしてるんじゃないんですかね。まああの人なら心配はいらないでしょう」
「さて、と」
私は、濃い血の匂いを振りまく
切り裂かれた服、暗くて見えにくかったがこの部屋は入り口から点々と血で汚れている。廊下にはなかったから、どこかで襲われてこの部屋まで逃げ込んだ時に切られて、奥で死んだか、この部屋で襲われて、死んだ。どっちかだ。死因は恐らく心臓を貫かれたこと。そして血に汚れて少し見にくいが、
「面倒な...」
どっかの企業のロゴがでかでかと描かれたTシャツ。それは結構有名な企業でロゴの大部分は赤色だ
覚えている。結構衝撃的な死だったから。赤い服を着て、夜の校舎に忍び込んだあの日、足音が聞こえて、緋いフードを被った人影が見えた瞬間、
気が付いたら私は死んでいた。近づいてくる。と思う間もなく死んだ。復活した時にはとうにその場から離れていたが、その場で服を脱ぎ捨てていなければもう何回か殺されていただろう。それが、今。
「緋ずきん、さん」
「さっさとほかの人たちと合流して、さっさと出ましょう結構面倒なことになりました」
出てきた彼女は開口一番、そういった。
犯人がまだいるかもしれない。そう考えるとさっさと逃げた方がいい。通報は外に出てからでも遅くはない。長谷川さんももう動けるようになっている。
「彼は赤い服装をしていました。もしかしたら」
「...緋ずきん?」
そんなものが...いるんだった。彼女から聞いていたがゆえにすぐに納得できた自分と違い、
「そ、そんなもの、いるわけが、」
「いるかいないかはどっちだっていいんです。人が死んだことは確かなんですから。サッサと合流して、出ますよ」
取り合えず内海と三波と合流だ。部長...はもう自分で何とかするだろう。
さっさと連絡。「今どこ?」と連絡をして、五分、十分、
既読すらつかない。
「そっちはどう?」
「こっちも、既読すら」
女子からの連絡をスルーするとは、なんて野郎だ。
「もう直接出向きましょう。彼らは物理室か科学室か体育館にいるはずです。さっさと会いに行きましょう」
私にしがみ付いている長谷川さんから、何やら圧を感じる。
「それで、そろそろ離れてくれないですかね」
「やだ」
「その、長谷川さん。動きにくいから、」
「真理愛」
「長谷川さん?」
「真理愛」
「...真理愛、動きにくいから離れて」
「...やだ」
やだもうこの人話聞いてくれない
「痴話げんかしてないで、早く行きますよ」
...ゴメンナサイ
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