七不思議
神宮さんと部長を参加させる許可を取り、苦労して部長の指示通りに会議を進める。
そんなこんなをしていると、もう決行日の前日になっていた。
決行日はノー残業デーらしい金曜日。一応顔を隠せるものを持っていくとのことだ。
そして一番大事なことは、赤い服装をしてこないこと。
渋る男子たちを何とか納得させたがどうなるかは分からない。もし着て来たら部長が何とかするらしい。...無理やり着替えさせるのだろうか。あって一週間程度しかたってないが、それくらいのことはしそうな気がする。
「っと...電話」
スマホが震える。誰からだろうか。明日のメンバーのうちの誰かだろうか。それとも神宮さんか、画面に映るのは...
「やあやあどうも狩谷君。調子はどうだい?」
何で連絡できるんだこの人。
「おっと、連絡先なら神宮君に教えてもらったよ。君が教えてくれなかったからね」
何でこいつらは揃いも揃って心を読むのだろうか。そんなにわかりやすいのか、私。
「まあそんなことはどうでもいい。別に明日でもよいのだが、君に七不思議のことを少し教えておこうと思ってね」
そういえばあの時は結局何も教えてもらっていない。聞いておいて損はないだろう。
「はあ...お願いします」
「ではまずは基本からだ。うちの学校の七不思議は異様に多いが、なぜだかわかるかい?」
「わかんないですけど、七不思議ってそんなものじゃないんですか?」
七不思議。中学生のころは3つしかなかったから逆に多いところがあってもおかしくはない。
「まあそんなものだ。特にうちの学校は七不思議がすべて分かっていない」
七つ以上あるのに、すべて分かっていない。その矛盾はこれから説明するのだろう。
「うちの学校の七不思議は前にも話したが、七つすべてを知ると死んでしまうという話がある」
「だから、正確に言えば七不思議の七つ目の候補が多いんだよ」
七つ目の候補が多いということは、つまり、
「六つ目までは分かってる。ということですか?」
「その通り。花丸をあげよう」
別に要らない。
「と、いうわけで詳しいことは明日現地で聞いてもらうにせよ名前と概要ぐらいは今日説明しようと思ってね」
「一つ目から五つ目まではメジャーなものだ。君も名前を聞けばすぐにわかるだろう。13階段、笑うヴェートーベンの肖像画、異界につながる鏡、動く人体模型、そしてトイレの花子さん、だ」
13階段は上りと下りで段が違う階段。笑うヴェートーベンの肖像画、動く人体模型は名前のまま。異界につながる鏡は丑三つ時にのぞき込むと異界に行ってしまう鏡、トイレの花子さんは言わずもがなだ。
「正直この五つはあまり危険度が高くない。異界につながる鏡は少し危険だがほとんどは何も起こらない。つながってしまっても人が入ろうとすれば弾かれるだけだ。ヴェートーベンは笑うだけだし階段も段が違っても何かあるわけではない。人体模型も動くといっても瞬きをする程度。花子さんもそこにいるだけだ」
「だが、六つ目に関しては注意が必要だ。君も聞かされたと思うが、緋ずきんさんだ」
緋ずきん。赤い服を着ているだけで殺されかねないのは確かに危険だ。
「危険なのは殺されることだけではない。便宜上彼女とするが、彼女には明確な殺意がある」
「他はそういう現象だ。花子さんもAをされたらBをするというものでしかない。だが緋ずきんさんは違う」
「緋ずきんさんを怒らせると、ルールに抵触していなくても、つまり赤い服装をしていなくても殺される可能性がある。」
「基本的に赤い服装をしている時にしか来ないはずだがもし出会ってしまったら、できるだけ刺激しないようにして立ち去るんだ。いいね。最悪死なない神宮君をおとりにしろ」
その言葉にこもっている感情は、単なる知識というだけではないことを私に伝える。もしかしたら、殺されかけたことがあるのかもしれない。触れられたくはないだろうから、そっとしておこう。
「それは助かるよ」
「せっかくそっとしておこうと思ったのに台無しじゃないですか」
人の善意を何だと思っていやがる。
「はは、ごめんごめん。明日に備えて私は寝るよ。君も疲れを残さない様にな」
そう言って通話が切られる。時計を見るともう結構いい時間だ。
「よし...寝るか」
特にやることもないのなら、寝るべきである。by私。
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