第69話 69
69
俺と安藤さんは、神奈川県横須賀駅へと降り立った。
俺達は衆議院議員、
「こんにちは、お待ちしておりました」
オオヤマさんは頭を下げて俺達を出迎えてくれた。
ここからはオオヤマさんの運転での移動になる。
俺達は高級車に揺られる事しばし少し高台にある、屋敷とまではいかないが大きな家へとやってきた。
家の扉はたくさんの人が出入りするのだろうか、観音開きのような豪華なドアになっていた。
俺達はオオヤマさんの案内で室内へと通された。
室内は大人数が生活しやすいような作りになっていて、一般住宅とは少し違ったような感じに思えた。
違うと言っても絵画や壺が飾ってある訳でもない。
ただ、廊下を歩いているとたくさんのドアがあるのが普通と違う風に見えたのだ。
そして俺達は広いリビングのような部屋へと通された。
そこには以前占いで来た事のあるようなスーツを着た50代くらいの男性と、少しふっくらとした体形の頭頂部がハゲているが横の髪が長い、赤いタコの文字が入った浴衣を着ている男性がソファーに座っていた。
俺達も向かいのソファーに座り挨拶をした。
「シグナルスキャンです」
「サポート役の安藤です」
「ようこそおいで下さいました。自己紹介させて頂きます」
髪型をオールバックにした目つきが鋭い感じの人が口を開いた。
「私は衆議院議員、
「
「それではさっそくシグナルスキャンさんには病気占いを始めてもらいたいのですが、占ってもらう人がバラバラにいますのでオオヤマさんの指示での移動をお願いします」
「わかりました。よろしくお願いします」
こうして俺達は病気占いを始める事にした。
俺はチラリと自分の腕時計を確認する。時刻は既に16時半を過ぎていた。
当然と言えば当然だ。待ち合わせ時間が15時付近だったからだ。
俺達はお昼ぐらいからを望んだが、どうしても夕方からでないとダメと言われこの時間からのスタートとなった。
最初理由を問おうと思ったが、人の生活にはいろいろな理由があるのだろうと思い条件を飲んだ。
俺達はオオヤマさんの指示に従い部屋を回る形で病気占いを行った。
印象としては女性がかなりの割合を占めていて男性のかずがとても少なかった。
そして、病気だがほとんどの人が黄色の注意レベルとなっていて、います直ぐ治療が必要な人はいなかった。
だけど、人が一か所に居なくて部屋を回ったりしていたので、どんどんと時間が経過していて気づけば18時30分を経過していた。
その時にオオヤマさんが声を掛けて来た。
「私達の都合で開始時間が遅かったせいで食事時間帯になってしまいました。お詫びに今食事を用意していますのでもう少々病気占いの方をお願いします」
俺と安藤さんは顔を見合せた。なぜなら了承とか断る選択肢がないからだ。
後、何人占うのかも知らされていない以上、ここで断るのもどうかと思う。
それを察したのか安藤さんが答えた。
「お言葉に甘えさせて頂きます」
「ありがとうございます」
俺は何がありがとうなのか不明なまま占いを続行した。
そして19時頃に最初挨拶したリビングルームへと通された。
食卓には挨拶した、衆議院議員、
俺達も正面へと着席した。
「シグナルスキャンさん病気占いご苦労様です。遅くなったお詫びにささやかながらお食事を用意させてもらいましたのでご賞味下さい。飲み物は酒、ジュース等なんでもありますので申しつけ下さい」
「ありがとうございます」
俺はとりあえず礼を言った。そして飲み物を迷った。本当は今日は安藤さんと横須賀で一杯やりながら食事をする予定だったからだ。俺はチラリと安藤さんを見ると少し首を横に振っていたので俺はお茶を選択した。たぶん安藤さんなりに何か怪しい所があったのだろうと推測した。
そして食事が始まった。
食事内容はフランス料理風の料理と言った感じでとても美味しいのだが、その料理を不味くさせる事があった。
それは
ワイングラスを片手に延々と話しているのだ。俺達も食事をご馳走してもらっているので無視する訳にもいかないので、相づちを打ったりしながら食事をしたので味がどんどん低下する。
俺はやはり食事は気の合った人と食べるのが一番うまいと思った。
そして食事が後半に近づいた時に俺はトイレに行きたくなり断りを得て行く事になった。
案内してくれたのは後ろに立っていたオオヤマさんだ。
リビングルームを出て少し歩いた時に突然質問して来た。
「すみません、この家の男性用トイレは小用と大用が分かれておりまして、もし良ければ教えて頂きたいです」
俺はそんな家あるの?と、とても不自然に思ったが答えた。
「小用でお願いします」
「わかりました」
オオヤマさんは通路を進んで一番奥の扉の前に来た時に立ち止まり口を開いた。
「こちらが男性用小用トイレとなっています。どうぞお入り下さい」
俺は少し恐る恐る扉を開けると、とんでもない光景が広がっていた。
いや、広がっていた訳ではなく、常識を疑う物が目に飛び込んで来た。
俺が立ち止まり声を上げる前に、後ろからオオヤマさんに背中を押されてトイレ内へ一緒に入った。
目の前には赤いビキニを付けた女性が、目元を黒い布で巻かれて見えなくして口を開けて座っているのだ。
俺は直ぐに声を上げた。
「俺はトイレに行きたいんですけど、ここは何ですか?」
「男性用小用トイレです。どうぞご使用下さい」
オオヤマさんは平然と答える。
まず、トイレにオオヤマさんが居るのが変だし、目の前に便器じゃなくて人が口を開いているのだ。
「俺は普通のトイレに行きたいのですがお願い出来ませんか?」
俺は少し強い口調で言うと、オオヤマさんは残念そうな顔で答えた。
「男性用小用トイレは気に入ってもらえないみたいですね、残念です。男性用大用トイレにご案内します」
俺はオオヤマさんに続いて直ぐにこの変なトイレから脱出した。
そして5歩も歩かない内、つまり隣の扉の前で止まった。
「こちらが男性用大用トイレです。どうぞご使用下さい」
俺は恐る恐る扉を開けると、そこはいつも見慣れた洋式トイレだった。
俺は中に入り扉を閉めようとすると、オオヤマさんが声を掛けて来た。
「トイレのお手伝いをしましょうか」と。
「結構です!」
俺は直ぐに扉を閉めて鍵を掛けた。俺は小便をしながらなんて変な家なんだと思った。
俺がトイレから帰りリビングルームに帰ると安藤さんの姿はなかった。
そして2分程経つと安藤さんが姿を現したので声を掛けた。
「何処行っていたの?」
「トイレだけど何かあった?」
安藤さんは平然と答えていたので、どうも女性用トイレは普通なんだと思った。トイレの中はどう?なんて聞いたら変態扱いされるのも落ちだしね。
その後俺達はなんとか
帰りも国産高級車でオオヤマさんに駅まで送ってもらった。
当然だが、トイレの話は安藤さんには秘密にしてある。あれはトラブルの元だから話さない方が良いと思ったからだ。
俺達は駅に着いた時に話合った。
せっかくここまで来たのだからそのまま帰るにはもったいないと。もしビジネスホテルが空いていれば泊って、明日遊んで帰る事にした。
だが俺達の野望は打ち砕かれた。
なんでもイベントがあるらしく満室と言われたのだ。
俺達は夜遅くの新幹線で名古屋へと帰ったのだった。
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