第70話 70

70


場所は一生笑顔スマイリー教の教団内部。

応接室に城島じょうじま笑顔えがお万歳まんさいが対面していた。


「今日は報告があると言う事ですがどのような事ですか?」


そう声を掛けたのは城島じょうじまだ。


「実は野党の衆議院議員、浅原あさはら喜一きいちと宗教団体オクトパス 教祖 たこ海海かいかいがシグナルスキャンに接触した」


笑顔えがお万歳まんさいが答える。


「詳しく」


「詳細まではわからないが、浅原あさはら喜一きいちの配下がシグナルスキャンに依頼を出して、たこ海海かいかいの自宅へ招いたとの事だ」


「ほう、依頼ですか」


「どう言う経緯でそうなったかは定かではないが、浅原あさはらの配下が来た数日後にシグナルスキャン達は横須賀に降り立った。まあ、その日の内に名古屋へと帰宅はしたのだがね」


城島じょうじま万歳まんさいの話を聞きしばし思考した後口を開く。


如月きさらぎれいのスキャンダルでシグナルスキャンを消そうとした事が裏目に出たかもしれませんね」


「やはり、そう思いますか」


万歳まんさいは同意をするような返事をする。


「とりあえず、様子見でいいんじゃないですか?現状何かが動いた訳ではありませんので」


「わかりました。警戒を継続します」


「お願いします」


城島じょうじまは心の中でため息をつく。彼らは私の助けになるのか仕事を増やすだけなのか、意味がわかりません。早めに貸しを返してもらい、いつでも対応出来るようにした方がいいかもしれませんね。


そうして話し合いは終了した。


*


私の名前は涼子りょうこ、仕事はジャーナリストをしている。

以前から情報提供のあった宗教団体オクトパスを調査している。

そして以前教団に潜入しようとして失敗したが運よく逃げる事に成功した。

やはり教団は警備が硬いのだ。


そこで私は教祖 たこ海海かいかいの自宅を調査する事にした。

教祖の自宅は山の頂上付近にあり、周りを林で囲まれていて怪しいと言えば怪しい場所だ。ちなみにこちらの教祖の自宅付近の噂は、夜になると怪しげな声がすると言う物だ。どう怪しいのかは不明だが、声なら聞き耳を立てて居ればわかるような気がした。そして私は教祖の住む山に突入し…宗教団体オクトパスに拘束された。


彼ら曰く、不法侵入罪との事だ。

私は何処までが私有地かを調べてから入山したと訴えたが、人間の価値観で物事を判断するなと意味の分からない事を言われた。

ここまで来ると私は抵抗を諦めた。

私はたこ海海かいかいの自宅の地下室へと連れてこられて、下着一枚にされ牢屋へと放り込まれた。しばらくすると水とパンが運ばれてきて牢屋内へ入れられ、運んできた女性が声を掛けて来た。


「話をするなら食事の保証はするが、黙るならこちらも黙る」と警告してきた。


私は取引以前に命を優先に考え返答した。


「なんでも答える」と。


正直個人のジャーナリストでは大した情報は持っていないので問題ない。

しばらくして又赤いタコの絵が入った浴衣の女性が来て私に質問攻めを行った。私は私が知りうる限りを答えた。それからしばらくすると私に指令が与えられた。


赤いビキニを着て指示に従えと。

私は等々この体を凌辱される日が来たのかと覚悟を決めた。そして私は赤いビキニに着替えて目に黒い布を巻かれたまま連行された。歩いた感覚としては地下から一階へ上がった感じだ。そのまま歩いて部屋に入るなり命令された。


「スピーカーで指示が入り次第、口を開けて待機しろと言う物だ」


なんとも変な指示だったが私は待機し指示を待った。そしてスピーカーから声がし私は口を開けて待機した。

すると部屋に若い男性らしき人が入って来たのが声で分かったが、当然助けを求めるような命を捨てる行動はしない。

私はやり取りを聞く。


「俺はトイレに行きたいんですけど、ここは何ですか?」

「男性用小用トイレです。どうぞご使用下さい」

「俺は普通のトイレに行きたいのですがお願い出来ませんか?」

「男性用小用トイレは気に入ってもらえないみたいですね、残念です。男性用大用トイレにご案内します」


私は会話内容から自分がどのような状況かを想像出来た。そして男性が実行してくれなかった事に感謝した。

それから一週間後私に転機と言うかチャンスが訪れた。


水と食料を運んできた女性が私の牢屋の鍵をしっかり閉めて行かなかったのだ。牢屋の鍵は南京錠となっていて、穴に棒を差し込みカチッと言うとロックが掛かる仕組みだ。彼女は棒を差し込んだが音が小さい事に気づかなかったのだ。

私は心臓をドキドキさせながら夜になるのを待って牢屋から脱出し、一階に上がった先にあった小さな勝手用ドアから外に逃げ出したのだ。


私は必死で山を駆け下りた。木の枝が足や腕に擦ったりしてもお構いなく走り続けた。そして偶然にも通りかかった巡回中のパトカーに発見され保護された。


私の着ていた赤いタコの絵の入った浴衣は、枝に引っ掛かったりしてボロボロになっていてさらに、腕や足は切り傷により血がにじんでいた。私が最初に運ばれたのが病院だった。それから治療、警察からの事情徴収と目まぐるしく状況が変わった。


-


そして私の一言で警察は重い腰を上げた。


「私の他にまだ監禁されていた女性がいる」


数日後、警察は宗教団体オクトパス 教祖 たこ海海かいかいの自宅へと強制捜査に踏み出したのだ。

警察の必死の捜索にも関わらず監禁された女性は発見されなかったが、地下から私の供述通りの牢屋が発見された為、たこ海海かいかいは監禁容疑で逮捕された。


翌日、宗教団体オクトパスの教祖が逮捕されたニュースは日本中を駆け巡ったのだった。

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