第60話 60
60
私は
ドラマの撮影当日、私は朝早くの新幹線でマネージャーと共に名古屋へと出発した。
「よく眠れた?」
新幹線の中でマネージャーが聞いてきた。
「寝れたから大丈夫、体調に問題ないよ」
「それなら良かった。でもやっぱり若さかしらね」
「なんでいきなり若さなの?」
「歳を取ると中々回復しないからよ」
「そうなの?マネージャーは何歳だっけ?」
「女でも女に歳を聞くとはいい度胸ね」
マネージャーの視線が鋭いので私は話題を変える。
「あーなんかお腹空いたし朝ごはんもう一回食べよかな」
するとマネージャーは服の上から二の腕を掴んできた。
「ダメね、太ると価値が下がるから却下よ」
話題を反らす事には成功したけど、マネージャーの厳しい言葉に私は撃沈した。
-
名古屋での撮影は順調に進み二日目を迎えていた。
お昼休憩が終わった時に撮影スタッフが私達の元へ来た。
「すみません、午後から登場する俳優なんですが体調不良との事で撮影が明日に延期になりましたので、今日の撮影はここまでとなります。それで明日の撮影なんですが、今日の分を追加で撮影するので入りを3時間早めてのスタートになりますのでご了承下さい」
スタッフは再度謝り離れて行った。
私はここはチャンスと思いマネージャーに聞いた。
「ねぇ!今から占い師にお礼に行ってもいい?」
マネージャーは時計を確認した後答えた。
「ええ、今から明日の撮影確認を終えたら行きましょうか」
その後私とマネージャーは確認を行い、撮影場所から地下鉄に乗った。
私は携帯で占いのホームページで今日の個別占いの予約を確認し、マネージャーに声を掛けた。
「マネージャー、今日の個別占い16時からしかないから、たぶん16時30分には店が終わるんじゃないかな」
私は携帯をマネージャーに見せながら話した。
「行動が早いわね。でもこのまま行くと少し早いけどどうするの?」
「マネージャーは駅の喫茶店でコーヒーでも飲んでてよ。私はタクシーで店に行ってそのまま待機しているから」
「一人で大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。タクシーで行ってお礼を言って帰って来るだけだよ?遅くても17時までには喫茶店に戻るから」
「わかったわ。もし何かあったら直ぐに電話するのよ」
「うん、ありがとう」
それから地下鉄が駅に着き、マネージャーは喫茶店へと入り私はタクシーに乗り占いの店へとやって来た。
タクシーの中で私はマスクと帽子を取って手鏡でお化粧チェックをする。
タクシーの運転手さんがルームミラーで私を見ているけど無視。
口紅を追加で塗って今日も完璧。
時刻は16時30分。そろそろねと占い師の店のドアを見ていると、ドアが開いて占い師さんが出て来たので私はタクシーを降りた。
*
話は
個別占いが終わった時に安藤さんが声を掛けて来た。
「明日の個別占い休んでもいい?」
「どうしたの?」
「入院しているおじいちゃんのお見舞いに家族で行く事になったの」
「そうなんだ。休んでもいいよ。どうせ明日一人しか予約取っていないから一人でも大丈夫だよ」
「ありがとう、それじゃあ休ませてもらうわね」
-
翌日俺は問題なく詳細占いを終えてお客さんを送り出した。
安藤さんと一緒に仕事をする前はこうして一人で営業していたなと少し懐かしく思った。
そして店舗の戸締りをして表に出ると駐車場に一台のタクシーが止まっていて、そこから見覚えのある女性が降りて来た。
女性はタクシーを降りると俺の目の前小走りでやって来た。
走った時に茶色のロングスカートがヒラリとなびく、そんな些細な事で俺はドキリとしてしまった。
え!?何?なんで俺はドキリとしたんだ?と思ったが俺は女性と対面した。
「お久しぶりです。
「今日はシグナルスキャンさんにお礼を言いに来たんです」
「お礼?ですか?」
「ええ、シグナルスキャンさんの助言のおかげで私は元気を取り戻す事が出来たんです。それでお礼をしに来ました。それでこれ受け取って貰えますか?」
「ありがとう。ちなみにこれはなんですか?」
「これ私のプロマイド写真集です。シグナルスキャンさんの為にサイン入れて作ってきました」
「あっありがとう。大事にしますね」
そこで
俺もいつも安藤さん以外の女性と話さないので話題がない。なので俺はこんな言葉を掛けた。
「俺今から駅まで歩いて行くんですが一緒に行きますか?」
「行きます。チョット待ってて下さい。タクシー帰らしますので」
それから俺達は少し薄暗くなりつつある歩道を駅に向かい歩き出した。
最初は黙って歩いたが俺は思い出して声を掛けた。
「
「ん~どうですかね。私の場合はほとんど素の状態でやっているので、演技と言うよりセリフを状況に合わせて如何に上手く言うかって感じですね」
「それはそれで大変そうですね」
「そうでもないですよ。それじゃあシグナルスキャンさんはどうして占いをやろうと思ったんですか?」
「自分で病気が占えるとわかったので商売にしただけですよ。あと、俺鈴木って言います。シグナルスキャンって長いので呼びずらいですよね」
「鈴木さんですか?」
「同年代なんで呼び捨てでいいですよ」
「じゃ、鈴木君で」
そんなどうでもいいような会話をしながら駅へと歩いて行き、少し先に駅の明かりが見えて来た。
すると
それを見た俺は声を掛けた。
「変装しないとマズイですよね」
「そうなんです。ファンがいると囲まれちゃうし、マネージャーから怒られますから」
俺は少し前を歩いていたので咄嗟に
『カシャカシャカシャカシャ』
「大丈夫ですか?」
「すみません、ありがとうございます」
「それでは私は先に行きますので、鈴木君ありがとう」
俺は抱きとめた
-
一週間後、俺はいつものように店舗に来て掃除をしていた。
これは個別占いを始めてからの日課にしている。いつも安藤さんより早く来て駐車場と店舗内の掃除をするのだ。やはりお客さんを迎えるのに汚いのは駄目と言う事だ。俺が店舗内の掃き掃除を終えて一息すると、いきなり店舗の扉が開け放たれた。
そこには息を切らしてハアハアと息をする安藤さんが立っていた。
「やあ、安藤さん。もしかして駅からランニングでもしてきたの?ダイエットとか?」
俺は笑いながら声を掛けたが安藤さんは少し睨みながら声を掛けて来た。
「そんな冗談はどうでもいいの!」
そして俺の方へ歩いて来て俺の前に手で持っていた雑誌を見せつけて来た。
俺は雑誌へと目を通すと、とんでもない事が書いてあった。
『女優
○月○日16時45分頃、若い男性と歩く
雑誌の下には大きく
「なんだこれ!」
俺は雑誌を見て叫んだのだった。
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