第51話 51
51
場所は名古屋の西地区、薄暗くなった街の片隅を歩く二人の男がいた。
風貌は一般人とは少し毛色が違う様に見える男だ。
一人は少し背が高くスーツを着ているのだが、中に着ているシャツは柄物でネクタイはしてなくどことなく人を寄せ付けない雰囲気をかもし出していて、極めつけが頭髪だが、今どき余り見ない角刈りと呼ばれている髪型をしている人相はそれ程悪くはないが目つきの悪い男だ。
もう一人の男は見た目チンピラと呼ばれる分類に属する男だ。
革靴、黒ズボンそして赤い柄シャツ。
頭髪は坊主にしていて、どことなくいつでも喧嘩をしそうな雰囲気を出している。
そんな男がスーツを着ている男に声を掛ける。
「兄貴少し前に噂になった占い師は又現れますかね」
「さあな、だがもし現れたらみかじめ料はキッチリと払わさないとな」
「へっ流石兄貴ですね。どんな相手でもこの地区で商売をしたら兄貴からは逃れられないですね」
二人はそんな不穏な会話をしながら夜の繁華街へと消えていったのだ。
-
とある西地区の病室で一人の少女が入院をしていた。
少女はまだ11歳と若く人生これからと言う時に原因不明の病気で入院を余儀なくされた。
少女は薬が効いているのか静かに寝息を立てていた。
そしてその傍らにはあどけない少女とはまったくの正反対にある男が立っていた。
高級ブランドのスーツを着こなし腕には高級腕時計をした50代の男だ。
見た目は少し怖めのおじさんと言った風貌だが、頬に付いている傷が男の印象を悪くしている感じだ。
「ミヤ、なんでお前が病気にならないといけないんだ」
男の口からボソリと愚痴がこぼれる。
そんな中病室のドアがノックされてスーツを着た男が入って来る。
「
「ミヤ、又来るからな」
そして
車は
「今日の会合は西地区の境界についての話だったな」
「はい、前から問題になっていたショッピングモールの件についての話と伺っています」
「面倒だな。あのショッピングモールは暗黙の了解でお互い不干渉となっていたが、このご時世生きていくには銭を稼ぐには少しばかり生きにくい世の中になって来たからな、あちらさんは少し焦ってるかもしれんな」
「どうされるおつもりですか?」
「どうって…なあ、それより今のショッピングモールの状況は?」
「現段階ではお互い手出しはしていないと言いたいのですが、内の若い者が直接見た訳ではありませんが、向こうさんは既に少し手を付けているとの話が上がってきています」
「既に条約違反って訳か…それで手を出した店は?」
「それが店舗には手を出した訳ではなく、間借りして営業している店舗へ手を付けたらしいです」
「なるほどな。あいつらなら自営業同様にみかじめ料として巻き上げて居なくなったとしても、次のカモがやってくるからな考えたものだ」
「内も南を収める者として権利を主張しますか?」
「まあ、そうなるだろうな。だが内は当面みかじめ料は取らない方針で行く。そんな所で大々的にやったら直ぐに察が飛んでくるからな」
そんな会話をしている内に会合場所であるホテルへと到着した。
「今回は当初の予定通り二人だけで話すからお前はここで待て」
「わかりました。お気を付けて」
そして
ホテル内の個室で食事が取れるレストランへとやってきた。
「予約してある者だ」
個室には既に先客が居て瓶ビールを見つめながら考え事をしていた。
「待たせたな」
最初に個室に居たのは北を収める
最初はビールでの乾杯から始まり最近の状況から話合われた。
西地区の北と南を収める組は、昔からの付き合いで不仲ではない。
だが、当然お互いに意識はしており、探り合う様に話は進む。
「それでショッピングモールの話になるが内も経営が厳しくてね回収に入ろうと思うんだけどどうかな」
北を収める
「思うんじゃなくて既に手を付けているんだろ?」
「え?何を根拠に言っているか知らないけど、内は店にはまだ手を付けてはいないよ」
「言葉は言いようだな。店はまだでも間借り店には付けたんだろ?」
「あ~若い奴らが先走ってちょこっとね。そんなに怒る事でもないでしょ」
「あそこは不干渉の約束じゃなかったのか?」
「ああ、勿論。店には不干渉でやってるよ。まさか間借りしている店に少し手を付けた位で目くじらを立てているのかな?」
あ~忌々しい男だ。こいつの親父だった頃はこんな屁理屈でのやり取りなんかなかったのにな。
それから議論は行われたがショッピングモールの件については保留となった。
-
「
車に乗り込むと運転手が声を掛けて来た。
「おう、話し合いだが平行線だ」
「そうですか、残念ですね」
「話は平行線だが、明日からショッピングモールに若い者を数名向かわせろ。北へのけん制になるからな」
「わかりました」
「それで、頼んであった例の占い師とは連絡取れたか?」
「いえ、メールを送ったのですが音沙汰なしです」
「内容が悪いんじゃないか?」
「ホームページには3万円からとなっていたので、報酬は十倍でも問題ないと記載したのですが…」
「逆に怪しまれたんじゃないのか?」
「そうでしょうか。なんなら身柄さらって来て強引に占いさせてましょうか」
「バカ野郎!その行為がミヤの為になるならやるが、逆効果になるとわからんのか?もしヘソでも曲げられ分からないと言われれば手の打ちようが無くなる。脅し暴力も駄目だ。そう言う奴には心から訴えるのが一番効果的だ」
「わかりました。もう一度文面を変えてメールを送ります」
「そうしてくれ」
又してもシグナルスキャンの知らない場所で只ならぬ会話が行われていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます