第40話 40
40
宗教法人
母屋らしき所はまあまあの建物の大きさはあるが、その他に建っている建物全てはプレハブ小屋といっていいほど質素なのだ。
そして目の前を歩く人全てが満面の笑顔なのだ。
俺達は本当にヤバイ場所に来てしまったと思った。
「私が案内させて頂きますので付いて来て下さい」
そう声を掛けて来たのは入り口で俺達を出迎えてくれた女性だ。
俺達は指示通りに女性の後について行く事にした。
「こちらの建物は信者の住居になります」
女性が指をさした方向はプレハブ小屋だった。
「そして正面に見えるのが母屋になっていて、教祖様がいらっしゃる建物になります。丁度今の時間帯は教祖様による能力伝達及び説法が行われていますのでご案内します」
俺達は言われるがまま後について行くと大部屋の前へと進んだ。
そして女性が扉を開けると凄い光景が目に飛び込んで来た。
正面の壇上には太っていて落ち武者の様な髪形をした教祖様らしき人が居て、その前には50人以上の男女が座禅を組み頭の上にアンテナを生やした帽子を被っていて、さらに教祖様含め全員が白いスケスケの着物を着ているのだ。
安藤さんは両手で口を押えて目がこれ以上開かないぞと言わんばかりに目を開いて固まっていた。
俺達は女性の声掛けにより我に返り、女性の案内で左隅にある椅子へと誘導され座った。
そして教祖様の説法が始まった。
「
その後教祖様の意味のわからない説法を10分程聞いて、そろそろ終わる頃教祖様は立ち上がった。
そして、両足の間隔を広げ腰を落とし両手を前に出して叫ぶ。
「スマイリー!」
すると信者は座禅を組んだまま、同じ動作をして叫ぶ。
「スマイリー!!」
それから数回同じことが繰り返されて、そして最後の気合なのか教祖様が叫ぶ。
「ハァー!!スマイリー!!」
ブリッ。
俺達は聞いてはいけないような音を聞いたのか分からないが、俺と安藤さんは同時に鼻を指で摘まんでいた。
その後教祖様は静かに壇上から横の扉へと姿を消したのだった。
俺達はその光景を茫然と見ていた。
いったい俺達は何を見せられているのだろうか?変な感覚に
「これで能力伝達及び説法は終了です。今から教祖様の所へ案内します」
俺達は女性の声掛けで又も我に返り女性の後に続いた。
俺は気になっていた事があり女性に質問をしてみた。
「一つ質問なんですが、どうしてみなさん服装が薄着なんですか?」
女性は振り向いて俺に返事を返してくれた。
「私達が着ている服は白衣と言います。これ以上病気等に
「そうなんですか、ですがまじないにしては生地が薄いような気がするのですが」
「生地の薄さは教祖様より人間は男と女しかいない。そして付いている物も皆大差なし、ならば隠す必要がないとのお言葉で生地が薄く作成されています」
俺は思う、只のエロ爺じゃねぇーかと。
廊下を奥に突き進むと立派なドアが見えて来た。
「こちらが教祖様のお部屋になります」
そう言うと女性はドアを解放した。
部屋はごちゃごちゃと物が置いてある感じだ。
壁には鹿の首の飾り物や床にはトラの敷物など、よくわからない趣味の人だと思った。
そして部屋の中央のソフォーの真ん中に教祖様が座っていた。
あれ?さっきは白い服を着ていたのに、今は紺色の服を着ているから着替えたのか。
客と会う時は紺色なのか?
それとも…いや、詮索はやめよう、俺は思考を放棄した。
俺は安藤さんに迷惑は掛けないほうがいいと思い先に口を開く。
「はじめまして、シグナルスキャンです」
俺に続いて安藤さんも俺のサポート役と言う事で挨拶をした。
そして俺達はソファーへと座った。
「私が宗教法人
偽名、偽名だよな?俺もシグナルスキャンと名乗っているから同じなのか…。
「今日来てもらったのは占いのスペシャリストと言う事で、是非にその力をうちで発揮してもらえないかと思って呼んだまでだよ」
そこで俺が反論しようとすると、教祖様が右手を出して静止する。
「そう、答えを
「そう言う事なら尚更、俺の病気占い能力なんて必要ないじゃないですか」
「そうではない、信者の中には治る見込みがあるにも関わらず入信し病院へ行く事を辞めた者もいるのだ。そこでシグナルスキャン君が内に居れば説得の材料になるのではないかと思ったんだ。当然だがタダではない。それ相応の報酬とそうだな…教団での権力をやろうじゃないか」
一瞬だが良い話に聞こえるがここは騙されては駄目だ。
恐らくだが、教祖の言っていた施設内の占いが終われば必ず外回りと称して、俺を使い回すに決まっているからだ。
だが、病院へ行くのを辞めてしまった人は出来れば助けてあげたいが、それも又自分の人生、決めるのも人生の選択の一つだ。
だから俺は教祖へ答えを返す。
「申し訳ないですが、俺は人の下で働く気もないですし、慈善事業の様な事もしません」
教祖も俺の言葉で勧誘に失敗したと気づいたと思うが、まだ諦めてはいなかったみたいだ。
「これは今日お越し頂いたお礼ですので、是非、お持ち帰り下さい」
女性信者が教祖の目くばせにより紙袋を机の上に置いた。
「これは何ですか?」
「あって困るものでもないものだよ」
教祖がニヤリと口元を緩める。
俺は瞬時に悟った。恐らく『金』だと。
俺達は挨拶もそこそこにして、紙袋を受け取らずに足早に教団からの脱出に成功したのだった。
俺達は教団を出てから二人で顔を合わせて叫んだ。
「二度と行かねぇー!」と。
メールが鬱陶しいからと言って誰にでも会いに行くのは駄目だとの教訓を得たのだった。
-
しばらくすると又も仕事依頼メールが届いた。
差出人『名古屋の○○テレビのAD(アシスタントディレクター)の木田です。
特番へのご出演を考慮していまして連絡させて頂きました。
一度お話をさせて頂きたいと思いますので、直接木田へと連絡をお願いします。
000-1001-04510-194 木田』
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