第2話 2


時は流れて俺は大学生になった。

大学に行った理由はただ働きたくないと思ったから進学したまでで、決して勉強が好きで進学したわけではない。

学部は潰しが効くように経済学部にした。

能力に関してはいろいろ考えてはいるが金に換える手段をまだ確立はしていない。

下手に能力を見せびらかすと変な事に巻き込まれる恐れがあるのと、俺はあまり目立ちたがる性格ではないと言う事なので、俺は大学にはいると同時にアルバイトを始める事にした。

アルバイトの目的は能力を使って金を稼ぐには軍資金が必要なのと、18歳と言う年齢では実行できない可能性があるので20歳までの2年間で情報と金を稼ぐ事にした。


アルバイト先は飲食店や家庭教師そしてイベントでの裏方などだ。

その中で楽で金を稼げたのが家庭教師。


教える子供は小学校4年生の男の子で中学受験を目指しているとの事だ。

最初の面接時に母親と対面したが俺の中での印象はたぶん駄目だろうと予想したが、俺の予想に反して合格を貰えたのは正直驚いた。

後で理由を聞いた所、真面目そうで大人しそうだから安心できるとの事だった。

俺はその理由を聞いて面接合格は喜んだが、俺の能力で金を稼ぐ上でやはり見栄えが掛けている事を実感した。

俺はその事も踏まえてさらに作戦を練るのであった。


*


さらに時は流れて俺は20歳を迎えようとしていた。

季節は春。

俺は能力で金を稼ぐ準備を着々と進め準備をした。

俺が最初に目を付けたのが占いだ。

これは大型のショッピングモールに出かけた時に、上層階の渡り廊下の所で机と椅子だけでやっているのを目にした時に「これだ!」と閃いた。

占いなら当たっても外れても偶然をよそおえるのが大きなメリットで、さらに場所を借りるだけなので失う物は金と時間だけと言うローリスクなものだからだ。

20歳を待ったのは場所を借りるのに成人と言うのが関わって来る必要があったからだ。

俺は準備してきた物を再確認する事にした。


まずは服装だが身バレ対策として去年のハロウィンの時に店で購入した目と鼻の一部を隠すマスクをつける事にした。

少し怪しいと思われると思うが身バレ対策と、この少し怪しいと思わせる事で占いの信ぴょう性を上げようと言うのが狙いだ。

服装は中に黒のシャツを着て上着は白衣に似た薄地のコートを羽織る事にした。

最初白衣とも考えたが、流石に医者でもなく占い師が白衣はやりすぎと思ったからだ。


次に占い結果を記入する用紙も用意した。

本来占いなら【口頭】でのやり取りが基本となるが、俺の能力では上手く伝えられない事が発生する事態を想定して、紙とペンを用意した。

ペンの色は青色、黄色、赤色の3色だ。

見たままをそのまま記入するスタイルだ。

能力に全部頼るようだがこればかりはしょうがない。


そしてポスター兼値段表をパソコンで作成しプリントアウトした。

値段は、頭千円、両腕千円、両足千円、体二千円とした。

金額は高いか安いかは微妙な所だが、いろいろな出店の占いの値段を総合的に見た所、自分で妥当だと判断した。

キャッチコピーは『あなたの体の病気を占います』だ。

自分で見てもなんとも胡散臭い感じだが、俺の頭ではそれ以上の言葉が出てこなかったのが現状だ。

最後に店の名前だが俺が名付けた【シグナルスキャン】にした。


*


20歳になったある土曜日に初めて占いの店をやる事になった。

場所台は3万円+消費税だ。

俺は金額を聞いた時に直ぐに何人見たら元が取れる計算をしてしまった。

これはあきらかにダメになる前兆の考えだが、最初はそんなもんだろうと思い当日をドキドキしながら待つのであった。


占い店当日、俺は10時スタートだが9時には現地のショッピングモールに行き当日の確認契約を済ませた。

ショッピングモールは9時からは1階の食品売り場は開店しているが、その他の専門店等は10時開店の為上層階に客はいない。

俺は清掃のおばさん以外人がいない所でゆっくりと準備を始めた。

机の上に紙とペンを用意して、ポスター兼値段表は机の上と間仕切り部分そして、持参してきた折り畳み式の譜面台に張り付けた。

この譜面台は持ち運ぶ時に折り畳み傘と同じ位で、伸ばすと高さ1メートルくらいになる為、ポスター張りに丁度いい事から採用した。


俺は少し早いが着替えを済ませ顔には白いマスクを付けて椅子に座った。

サイドの鞄にはお茶を2本を用意した。

準備は整った所で隣にも人がやって来た。

年齢は40代くらいのおばさんだ。

ダボっとした体形がわからないような服を着ている事から、太っているのかなと想像したが俺は邪念を振り払った。


隣の人は俺を見ると少し顔をこわばらせたが何事も見なかったように準備をしていた。

隣はどうも占いではなく手相を見る店の用だ。

机には紫色のカバーが掛けられ、のぼり旗のような物も準備してあり、あきらかに手慣れている感じがした。

俺はそれを横目に見ながら静かに10時の開店を待った。


10時になると専門店のシャッターが開き土曜日だと言うのに、一気に客が専門店に流れ込んできた。

俺はその様子をドキドキしながら見ていた。

通り過ぎる客が俺の顔の仮面を見るなり、あきらかに可哀そうな感じの目を向けて来たが俺は正面だけを見たり、時折スマホでSNSをチェックしたりしていた。


11時頃になると隣の手相を見るおばさんの店に客が入り始めた。

手相は2千円で見てもらえるみたいで、客も中年のおばさんが多く客は真剣に話を聞いているみたいだった。

俺は横目で見ながら少しうらやましいなと思ったが、初日からうまく行くはずがないと覚悟していたのでダメージはあまりなかった。


12時になり結局誰も客がこなかったので、おれは机の上に『少し席を離れます』の立て札を置いて席を離れた。

俺はショッピングモールのバックヤードに入りそこで上着と仮面を外してショッピングモールに戻り、フードコートで食事をする事にした。

俺は食事をしながら考えていた。

客が寄り付かないのはやはり見た目が怖いからだろうか?

それとも値段が高い?

それか占いで病気は変?なのか?

いろいろと考えたが俺は全ての考えを捨て、数回やってダメなら他の手を考えようと。


食事を終えて店に戻り、なんとも言えない時間が経過し15時を迎えようとしている時に一人の客が店の前に立つのであった。

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