【現代チート】病気がわかる能力を得たのだけど、聖人にはなれません
まさひろ
第1話 1
1
季節は冬の足音が近づいている11月。
俺は平日高校が終わり自宅に帰り制服から私服に着替えた後、母親の車で病院へ向かっている最中だ。
母はいつもは陽気な性格で笑顔が絶えないのだが、今日はその顔から笑顔が消えなんとなく話づらい状況にある。
事の始まりは数日前の電話から始まった。
俺の祖母つまり母親の母の容態が優れないので病院へ見舞いに来て欲しいとの母の兄から電話があったのだ。
母と父は直ぐに病院へ行く事が出来たのだが俺はその日用事があり、一緒に行く事が出来なかった。
病院から帰って来た母の様子が変わったのはその日からだった。
俺はなんとなく察したが、あえてその話題には触れなかった。
俺の名前は
平凡と言う言葉がそのまま姿をなしたのが今の俺の姿と言えば、大体想像がつく現在高校3年生の18歳だ。
俺は車の中でラジオとエンジン音だけを聞きながら病院へと到着した。
母は受けつけで面会の紙の記入を終えると俺と一緒に病室へと入った。
病室は4人部屋でそれぞれカーテンで仕切ってあった。
「お母さん入るね」
母はカーテン越しに声を掛けそっとカーテンを開けた。
母が俺に手招きをしたので俺は母と一緒に中に入った。
ベッドには白髪になったおばあちゃんが目を閉じて寝ていて、口元には酸素吸入用のマスクが着けてあった。
母はおばあちゃんの耳元に顔を近づけ小さな声で語りかけた。
「お母さん、孫の
母はベッドの横に置いてある椅子を寄せ俺に座るように合図して来た。
俺はそっとベッドサイドの椅子に座ると、母が布団の中から祖母のしわくちゃになった手を出し俺に握るように言って来た。
俺はおばあちゃんの手を両手で包み込むように握った。
おばあちゃんの手は冷たくそして小さかった。
俺はおばあちゃんの手を握りながら少しだけ昔一緒に遊んだ思い出や、美味しいご飯を食べた事を思い出した。
そして俺はまだよくわからない能力を発動させる事にした。
俺は心の中でそっと唱える。
「スキャン」と。
俺はゆっくりと頭の上から足元へと視線を動かす。
すると腹の下の方から紫色に光る所を見つけた。
俺はその紫色を見つめると頭の中に情報が流れ込んで来る。
【大腸がん】
情報はそれだけだ。
がんにはステージとかいろいろあったと思うがその情報もなにもない。
そんな感じで俺がおばあちゃんを見つめていると母から言葉を掛けられた。
「そろそろいきましょうか健一」
俺は母の言葉を受けおばあちゃんの手を布団の中にそっと戻して立ち上がった。
「お母さん又来るね」
母がおばあちゃんに声を掛け、俺と母は病院を後にした。
家に帰る車内で俺は率直に母親に聞いて見る事にした。
「ねぇ母さん、おばあちゃんの病気ってもしかして大腸がんなの?」
俺の言葉にビックリしたのか母は運転中にも関わらず助手席の俺の顔を見て来た。
俺はタイミングをミスしたと思い直ぐに声を掛けた。
「母さん危ないから前見て」
母は直ぐに俺の言葉で視線を前に戻した。
母はしばし黙っていたが口を開いた。
「健一もしかしてお父さんからおばあちゃんの事聞いてた?」
「いや、聞いてないよ」
「じゃあどうして…」
俺は少し早まったと思いつつ適当に誤魔化す事にした。
「実は少し前にドラマでそんな事があってもしかしてと思い言っただけだよ」
「そうだったんだ」
なんとも苦しい言い訳だったが、なんとかなったみたいだった。
「健一の言う通りおばあちゃんは大腸がんなの。余命いくばくもないと聞いているの。健一も昔いろいろしてもらったんだから、時間がある時にはお見舞いに行ってあげてね」
「ああ、わかった」
俺は返事をして帰路へと着いたのだった。
俺は家の自分の部屋に入るとそのままベッドへと寝転んで今までの事を考える事にした。
俺が能力だと気づいたのは中学生の頃だった。
母が体調不良を訴えた時にとても心配になり真剣な目で母を見つめた時にそれは発動した。
母の体が青く光っていて腹の中心、つまり胃にあたる部分が黄色く光ったのだ。
俺はその黄色く光った部分を見つめると頭に情報が流れ込んできた。
【胃炎】
「母さんもしかして胃炎じゃないの?」
俺は何も考えずに情報を口に出していた。
「大丈夫よ健一。心配しないであなたはテレビでも見てなさい」
母は俺を優しく見つめるとそんな言葉を掛けて来た。
それからしばらくして母は病院へと行き薬をもらって帰って来た。
俺は夜こっそりと薬の袋に同封してある薬の説明分を読んで確信した。
俺には病気を判別できる能力があると。
それからの俺はいろいろなテストを行った。
そして分かった事は病状が重いほど色が濃くなると言う事だ。
青が正常。
黄色が注意。
赤が病気。
紫が病気悪化。
俺はこれが分かった時はまるで信号じゃないかと思っただから俺はこの能力をこう名付けた。
【シグナルスキャン】と。
それから少し時が流れてその年の冬におばあちゃんは天国へと旅立った。
俺はこの能力を鍛えて人助け…いや、金儲けに出来ないかと密かに
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