第26話 SDカード
私は再度、デービス教授に電話をしてみたが、繋がらなかった。
「係長、デービス教授、繋がりません」
「おう、そうか」
京子は真中さんに電話していた。
「係長ー、めぐみもデービス教授の居場所を知らないって言ってますー」
係長も飯島さんと大竹助手に電話して尋ねていたが、デービス教授の行方はわからないということだった。京子は引き続き千葉教授と増田助手にも尋ねたが、彼らもわからないと返答した。私はシュルツさんにも電話してみたが、繋がらなかった。
刑事課は静まり返っていた。そこへ、高木先輩から連絡が入った。
「おう、高木か。おう、おう、おう。本当かよ」
係長はメモを取り始めた。
「おう、おう、わかった。そっちはお前が向かってくれ、頼むぞ」
「どうでした、係長」
「おう、日の本通販で、例のデジタルカメラはたった二台しか売れてないらしい」
「そりゃー、そうですよー、スマホにカメラ機能があるんだから、デジカメはあんまり売れないでしょー」
「おう、磯田、まあ聞けよ。買った人物だが、一人は、繁華街のすぐ近くの◯◯一丁目の江頭という男だ。今、高木に向かってもらってる。で、もう一人は、大竹ただおだ」
「え!」
「マジでー!」
「ああ、住所も一致してる。間違いない」
「ということは、大竹助手が、ラボの監視カメラのSDカードを入れ替えた? ってこと……」
「おう、そうかもな。香崎、磯田、二人で大竹ただおの所まで行ってくれ」
「はい」
「はーい」
私と京子は急いで大竹助手の家へ向かった。
10分ほどで到着し、大竹助手のアパートで話を聞くことになった。小さなテーブルに着いて、さっそく話を進めた。
「確かに、そのデジカメ買いましたけど、SDカードなんて、他のいろんな製品にも使われてますよね」
「ええ、ですが、実験室の監視カメラに入っていたSDカードは、日の本通販で販売されているデジタルカメラにしか付属していない型番なのです」
「でも、デジタルカメラなんて、全国でたくさん売れてるだろうし」
「いえ、そのカメラが売れたのは、たった二台だけなんです」
「……え、いや、でも、もう一台のほうを買った人が、そうですね、例えば、ラボに忍び込んだ可能性もあるといえば、ありますよね」
大竹助手は襟足を指でくるくると触りながら言った。
「なんかー、屁理屈言ってませんかー」
「いえ、僕は可能性の話をしているんです」
「フィフティーフィフティーなんですけどー。でー、元々監視カメラに入ってたSDカードはどこにあるんですかー」
「いや、大学のパソコンとか実験装置とかにもSDカードとかUSBメモリをたくさん使っているので……どの装置にどれを使ってるかは、ちょっと、あれですね、わからないですね」
大竹助手は不自然に話した。そこへ、係長から電話がきた。私は少し席から離れて音量を下げて電話を取った。
「おう、香崎か。詳しい事情は話せないが、大竹ただおを県警まで引っ張ってくれないか。頼んだぞ」
係長は低いテンションで私にそう伝えた。振り返ると、大竹助手と京子がこちらを気にしながら話していた。私はどうしようかと考えながら席についた。
「大竹さん……」
どういうふうに話そうかと思って言葉に詰まってしまった。
「……大竹さん、今の状況では、どうしてもあなたに疑いがかかってしまいます。私たちが帰ってしまえば、あなたが証拠を隠滅する機会を持つことになりますので、家宅捜索令状が出るまで、私たちはここに待機せざるを得ない状況になります。なので、どうでしょうか、県警まで来ていただくわけにはいきませんか?」
「……」
「犯人の次の標的は、あなたかもしれません。県警に来れば安全です」
「……」
大竹助手は急に恐怖にかられたような表情になった。
「……はい、行きます!」
大竹助手は少し迷って、熱意を持って答えた。
「え?」
私は素で反応した。大竹助手は必ず断るだろうと思っていたのだが、県警に行く気満々で返答したのだ。
「あ、はい、えーと、では、さっそく行きましょうか」
大竹助手はスマホと財布だけを持ってすぐに部屋から出た。私たちは車に乗り込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます