第7話 姫花は『災厄の魔女』らしい
俺は空いた口を手で無理やり閉じさせると、混乱する頭を押さえる。
えっと……整理すると、俺が野橋の親を潰す為に社長室に来たら、野橋父が魔法使いで、俺が名前を言ったら、俺の妹が『災厄の魔女』とか言う魔女だった。
……さっぱり分からん。
「……俺の妹がその『災厄の魔女』とか言う厨二チックな二つ名を持っているのは本当なのか?」
俺は眉間を押さえながら野橋父に訊く。
「ああ。『災厄の魔女』、本名鈴木姫花。年齢は15で兄と同じ学校に通う中学3年生」
うん、完全に家の妹ですわ。
え、でも何で俺は姫花が魔女って気付かなかったんだ?
と言うかそもそも魔女って何?
「……色々と聞きたい事があるんだが……まずアンタの名前は?」
「私の名は
「失礼かもしれないが、何でアイツはあんな横暴なんだ?」
だって目の前の男は、正直野橋と違って普通の人だし、社長の仕事をしっかりとこなしているなら馬鹿でもないはず。
俺がそんな意図も込めて訊くと、野橋父は渋い顔をした。
「……私の妻のせいだろうな」
「妻? ソイツがダメなのか?」
「……ああ。妻とは政略結婚でな、妻は有名な会社の令嬢だったから私の父が私と妻を結婚させようとしたのだ。そして冷めた関係のまま出来たのが響也だ。私は仕事もあり育児は妻に任せて居た。そしたら……」
「気付けばあんな感じになって居たと」
「そういう事だ」
うわー……この世界にも政略結婚とかあるんだな。
異世界で何回か見てきたけど殆どは碌な事はないぞ。
「はぁ……まぁ野橋は俺達に関わってこなければどうでも良い」
「私からキツく言っておく。申し訳なかった」
そう言って頭を下げる野橋父。
まぁこの人も響也をほったらかしてたから非はある。
だが、一介の高校生に頭を下げれるのは凄いよな。
「よし、ならもう野橋の事についてはないも言わん。次だが……魔女とは何だ?」
何なら野橋の事はどうでも良くて、1番は姫花の事だ。
「それ程の力を持って居ながら何処にも所属して居ないのか?」
「魔法使いは何処かに所属しないといけないのか? と言うかどんな組織に?」
「魔法使い……は魔術師を指しているのか?」
野橋父から新たに知らない単語が現れた。
もう訳が分からなすぎて若干面倒になってきたんだが。
「……『魔術師』って何だ? 魔法使いと何が違う?」
「魔法使いがどうやって魔力を使うのか分からないが、魔術師は予め体の何処かに描かれた魔術式を使って魔力に属性を込める」
「え、何て不便」
「何? 魔法使いは違うと言うのか?」
「ああ。こんな感じで……【
俺の指先に火が灯る。
これは炎魔法の初期中の初期の魔法で、異世界の人間なら、適性さえあれば絶対に使える簡単なモノだ。
異世界ならこれを見せても調子に乗った初心者がいるな、程度の認識でしかない。
しかしこの世界の人間の反応は全く違った。
「お、おおおおお!! 魔術式が出現しない! 魔術式の変換なしに属性を付与して放出する事が出来るのか!?」
「お、大袈裟だろ……」
俺がテンションの違いに若干引いていると、野橋父はテンションMAXで豪語する。
「そんな訳ない! この方法なら無駄に魔力を消費しないで済むし、発動までの時間の短縮も出来る! 因みに何も言わずに発動は可能か?」
「あ、ああ」
俺は今度は無詠唱で火を灯す。
5本指全部に灯したのはサービスだ。
「おおおおおおおッッ!! 素晴らしい! 多重展開まで出来るとは! 魔法と言うのは何て素晴らしいんだ!」
「ま、まぁ魔法は使い勝手は良いけど、その分適性が無いと使えないぞ」
「む? それなら属性が偏ると言う事か……確かに魔術式ならお金さえあれば、全ての属性に変換出来る魔法式を体に描く事が出来る。いやしかし戦闘において———」
「———そろそろ魔女について教えろ」
俺はいい加減姫花がどんな立場に置かれているかが知りたい。
それによっては本気で対策を考えないといけないからな。
「す、済まない……少々興奮し過ぎていたようだ……」
ちょっとどころじゃなかったがな。
完全に異世界の魔法研究者とか言う結構イかれた奴と同じ反応をしてたぞ。
野橋父は恥ずかしそうに一度咳払いをすると、やっと語り出した。
「まずこの世界では魔術式が必要だと言ったのを覚えているか?」
「ああ」
「魔女と魔術師の1番の違いはそこだ。魔女は魔術式を使わずに魔術を使う。更にはその威力も魔術師の魔術を遥かに上回るのだ」
「……なら俺の魔法は魔女の使う魔術に似ていると言う事か?」
「……いや、似てはいるが全くの別物だ。魔女は普通の属性の魔術は使わない。そして必ず1つの属性に特化している。闇夜殿の妹君の属性は恐らく『消滅』だ。どんなモノでも消滅させる魔力を纏っている」
「『消滅』ね……」
これは異世界でも聞いた事のない属性だな。
それに効果が強力過ぎる。
異世界なら下手すれば即座に国に殺されてしまうほどだ。
「……もしかして俺の妹は命を狙われているのか?」
俺が恐る恐る訊くと、野橋父は神妙な顔を縦に振った。
「うむ。だが、殆どはその力を研究して自分達の力にするか、完全な操り人形にして敵対勢力を潰すことに使うだろう」
どうやら俺の仕事はまだ終わっていないらしい。
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下⇩⇩⇩の☆☆☆を★★★にしてくれると作者のモチベ上昇。
偶に2話投稿するかも。
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