第6話 祥子にバレた
「告白、止まったね」
「そうだな」
「結城先生、ちゃんと、ばらしてくれたみたい」
「どうだろうか」
「でも、自分でも機転が利いたと思うんだけど、亳杓はどう思った?」
「驚いたさ。まさか䍃璃があんなことをいいだすとは思いもしなかったからな。あれは、一生、ふたりきりの秘密だと思っていたのだが…」
少し、亳杓が不貞腐れているのが解った。
「ふふ。亳杓。解りやすいね。でも、わたしひとりのひみつより、わたしたちふたりのひみつをひみつにしたかったの。わかる?」
「…!そ!そうか!そういうことか!なにやらすっきりした!!」
解りやすい亳杓に、䍃璃は微笑む。
「それより亳杓、じきに文化祭の実行委員を決める頃。どうやって、自然にふたりで実行委員になればいいかな?」
「なんだ。内申をよくするため、ではだめなのか?」
「わたしの内申はやばいでしょ。自殺未遂よ?この超進学校で、そんな問題児、もう内申をどうこう言ってはくれない」
「そ、そういうものか。では…」
「亳杓、あなたはそういうの考えても、きっと何も浮かばないタイプだよ。半年以上付き合ってきて、よくわかった」
「そ、それは面目ない。確かに、いつも作戦や機転を利かせるのは䍃璃のほうだからな」
「ううん。そうじゃない。わたしが楽しめるの。ひみつを共有するのはとても素敵なことだと思わない?」
「ん…。たしかに。しかし、実行委員の機転はどうなのだ?」
「まだ浮かばないんんだよねー」
とそこに…
「䍃、䍃璃!?亳杓!?あんたたち…!!な、なんで!!??」
裏庭でいつものようにふたりで話していた時、とうとう、恐れていたことが起きた。
「「しょ、祥子!!」」
★★★★★
「へー…なるほどね…。ふたりは付き合ってたんだ…。わたしでさえ、気付かなかったよ…」
「あたりまえでしょ。一番近い祥子には一番知られるわけにはいかなかったの」
「でも、みずくさいよ。わたしなら、ふたりの邪魔せずにもしかしたら、協力さえ出来るかも知れないのに!」
「それ、本気?」
「うん!!…てか、䍃璃、しゃべり方、ふつうだね」
「うん。あれは演技だから」
「そうだったの!?完璧な変人っぷりだったよ」
「…変人て…まぁ、そう思わせようとしてたのは、確かなんだけどさ」
「じゃあ!亳杓も普通なの!?」
祥子は、何故か瞳のキラキラが増える。
「当たり前だ。おれが変人な訳がないだろう。祥子、君が知っての通りのごく普通のおとこだ」
「「…」」
「ごめん、祥子、亳杓はただの、頭の良い馬鹿なの」
「…そっか…なんだ…。やっぱり亳杓は亳杓か…」
へにゃっと、腰を抜かした。
「そんなことより、祥子、このこと、黙っていて。おねがい!!」
「それは、もちろんそうするけど、でも、バレるのは時間の問題じゃない?」
「え?なんで?」
「亳杓への
「…そんな名称で呼ばれていたのか…。それは初耳だ。なんともよくわからぬ事件だな…」
「まぁ、事件名は置いておいて、その事件が、今度は䍃璃に起こるかも知れないの」
「え?そうなの?」
䍃璃は、驚いた。自分だけはうまく立ち回っていると思っていたから。
「あ、あぁ…そうか。あれか…」
「?䍃璃、なにか心当たりがあるの?」
「まぁね。率直に聞くけど、屋上惨事事件ルーフトップデスモーメントのこと?」
䍃璃は、いきなり、自分の過去に即席の名称を放った。
「あ…たぶんそれだ」
「やっぱり。亳杓への告白は止まったから、これからもしも、わたしのしたことに引かずについてくる輩がいるとしたら、これからかな…って」
「うん。男子は、密かに大騒ぎ。可哀想とか、守ってあげたいとか、支えて歩みたいとか、まぁ、奪い合いはもう始まってるよ」
「そう。困ったな…。せっかく切り抜けたと思ったのに…」
「あぁ…でも、まだ信じられないよ。ふたりがつきあってたなんて…」
「そうだね。わたしも、最初は本当に亳杓が嫌いだった」
「な、なに!?そうだったのか!?」
「ちょっと静かにしてて。亳杓」
亳杓を制止すると、䍃璃は続けた。
「祥子、あなたにこんなことを言っても、いい案は無いかと思うけど、わたしに告白するおとこたちは、呪われる…とか脅してもらえない?」
「そんなことしても無駄だよ」
「だよね…。あぁ…どうしよう…?」
あの䍃璃が頭を抱える。なんとも珍しい光景に、亳杓と祥子が驚きとともに、笑う。
「…ふたりして、笑うことないでしょ」
「もう、バラしちゃえば?」
「う~ん…。それも何度も考えたよ?でも、わたし、本当に、亳杓とはライバルでもいたいの」
「な、ライバル…?何故だ。おれたちが喧嘩する必要は、人目がある時だけでいいではないか」
「そうじゃないの。いい?亳杓、わたしはあなたに救われた。その亳杓に正々堂々と、生きてるって、頑張ってるって、示していきたいの」
「それは、今のままでも十分示されていると思うが…」
「ううん。感謝はしてるけど、まだ、頑張れてない」
「…それは、解る気がするな…」
祥子が、なんとなく、と頷く。
「祥子に解るの?」
意外、と、䍃璃は訊ねた。
「わたし、自殺しようとしたことがあるの…」
「「え!?」」
「ふたりのゆいいつの友人っことで、いじめられたのよ。それが辛くて…」
「わたしたちのせいで…?」
「そ、そうだったのか?祥子」
「言おうか言うまいか、迷ったんだけど…言っちゃった…」
そう言って、祥子は笑った。
この時、䍃璃の頭は怒りで煮えくり返りそうになっていた。
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