第9話

 ひとつだけ、願いが叶うなら、俺はコレジージョと逃げ切りたい。


 コレジージョとリコルドは互角の力を持っていて、いつまでも勝敗が決まらないところを、王様が後ろからコレジージョを刺した・・・。


 え?刺した・・・?


 コレジージョは、その場に倒れこんだ。


 俺は泣くどころか、目の前が灰色の世界に染まった。 


「王様、あたしはやったのですよ」


「よかろう、帰るとしよう」


「待ってよ・・・。


どうして、こんなひどいことをするの?」


「そんなもの、お前が気に入らないからに、決まっておるだろう。


ブオテジオーネ」


 こうして、二人は俺に背を向けて帰っていった。


 この後、俺はギルド大量殺人事件の罪を、王様から着せられることになって、この世界で指名手配犯となり、常に追われた。


 この世界のすべてが敵となった・・・。


 逃げろ、逃げろ・・・。


 逃げるんだ・・・。


 逃げ切るんだ・・・・。



 俺は、賞金首にもなった。


 そして、ユウヅキとカルキの魂の行方は知らないけど、コレジージョの魂は俺の憑いていくことになった。


 これで、体が重くなるけれど、孤独にならなくてすむ。


 寂しい時は、コレジージョとの会話が、心の支えだった。


 だけど、厄介なことに魂だけの存在も、王様には見えてしまうから、俺はコレジージョを守るために、逃げ切らなくてはならない。


「ブオテジオーネ、あたくしはもうすぐ成仏しますわ」


「え?」


 成仏したら俺が孤立してしまうし、このまま憑いていたら、王様がどうしていくのかわからない。


「君は、死んでも大丈夫なのですわ」


「どういうことなんだ?」


「じきにわかりますのですわ。


君が何者で、どうしてこの世界に来たか、とか。


ですので、死んでもなんとかなるのです。

安心してくださいなのですわ」


「何を安心するんだ?」


 何も安心できないし、不安と恐怖でしかない。


「君の使命は、この世界の勇者と名乗る、悪役令嬢を倒すことなのです。


そして、君の持つ能力に、名前をつけましょうなのです。


それは、パラレルループなのですわ。


パラレルワールドの状態で、ループするのですわよ」


「さっきから、何を言っているのか、さっぱりわからないのだけども」


「いたぞ!


災いを呼ぶ、不吉な緑髪の水属性、ブオテジオーネだ!」


 兵士、騎士、軍隊などにとうとう囲まれてしまった。


「あたしの役目は、もう果たしましたなのですわ。


さようならなのです・・・」


 こうして、コレジージョは消えていった。


 俺は、たくさんの人たちにつかまり、死刑にされてしまった。

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