第2話

「そういうことなら、通れ。

ちなみに、どうなっても知らんぞ」


 通っていいの?


 俺とニーノは、研究所の中に入っていった。


 研究所が広く、どこに何があるのかもわからないし、どこをどう探せばいいのかもわからない。

 この研究所に対する地図もなければ、情報もない。

 入口の前で見張りをしていた人は、ただの雇われだから、それなりのアドバイスもできない。

 だから、手当たり次第、探す形となる。


 ここは、勘と運に任せよう。


「白衣を着ていないから、侵入者だ、多分」


 白衣を着た人が目の前にいたけど、多分って、確証もなく疑うなって。


「侵入者ですわ」


 ニーノが言うものだから、この子の口を塞ぎたい衝動が走ったけど、ここは冷静に対応しよう。

 俺が、不審者みたくなるからな。


「いえ、ここで働いている人です」


 自分でも、明らかにばればれな嘘だとわかるけど、とっさに思いついた嘘がこれだった。


「では、このチビだけ捕縛しよう」


 チビって、ニーノのこと?


 しかも、こんな簡単な嘘を信じるの?


 白衣を着た男の人が、ニーノに手を伸ばそうとしたけど、ニーノがその手を弾いた。


「触らないでくださいますの?」


「侵入者を見逃せるほど、甘くないんだぞ」


「こんなか弱い、小さな乙女に、触るなんて、非常識にもほどがありますわ」


 ニーノが怒っていたけど、非常識なのは君だ!

 まず、堂々と「侵入者です」って、明かしたのは紛れもなく、ニーノだ。

 この外見も、心も幼女が!


「ならば、今すぐ所長に会わせなくてはな」

 

「所長に会えば、何かご褒美がもらえますの?」


 なぜ、そう思った?

 このロリは「身柄を捕縛する」という言葉が、聞こえていないのか?


「ご褒美を期待するんじゃない、チビ」


 ご褒美を期待するとか、いつまで、幼稚園児や保育園児が持っているような発想を持ち続けているつもりだ?

 エルフは先祖代々かしこい種族と聞いたけど、クウォーターエルフまでくると、知能が落ちてくるのか?


 とにかく、事を大きくしないように・・・。


「つまり、従う必要すらもないということ・・・・ですわね?」


 何をしでかす気なんだ?


 雰囲気が急に変わった・・・。


 ニーノが剣を抜き、一撃で白衣を着た男性を倒した。


「倒しちゃったけど、いいの?」


 俺は、さすがに驚きを隠せないでいた。


「いいんですの、いいんですの。

目的は、ワンエイスの救出って、おっしゃられたではないんですの?


なら、どんな手段とかでも、問題ありませんわ」


 鬼だ、サイコだ。


 笑顔のまま、スキップするニーノの後を僕は追った。


 先頭きって歩いているけど、どこに向かう気なのか・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る