第5話 (まとも)という言葉を求めて

☆飯山右京サイド☆


何かお兄ちゃんが訳が分からない事を言っている。

今、私達は私の部屋で会話している。

どういう訳が分からない事かと言えば。

私が普通になれば恋人になる、と言ったのだ。


何故そんなに普通に拘るのか分からない。

そして私達が異常と言う。

何処がなのかさっぱり分からないが。

正直怪しかったが私はその条件に乗る事にした。

まあハーレム計画も大切だが.....だ。


「それで良いの。右京は」


「左京。貴方もこれだったら幸せになると思うから」


「.....何言っているの?右京。馬鹿じゃないの?計画はどうするの」


「.....左京。思ったんだけど。普通というものを目指してみない?」


「私は普通っていうのが分からないんだけど。今が普通って思っているし」


「.....それが違うって言っているしね」


左京は唖然としている。

私の様子に、行動に、に、だ。

そんな裏切る感じを見せるとは思わなかったのだろうけど。

私は左京を真剣な眼差しで見る。

だがその左京は、私は反対、と立ち上がった。


「右京がそう言うなら私は1人で全てやる」


「.....左京。それは駄目だってお兄ちゃんが言っているしね」


「私はお兄ちゃんと結婚したい。.....でも右京が好きになるなら私は見捨てられる。そんな事があってはならない」


「左京。それは分かるけど.....お兄ちゃんは独占しても何の.....」


「それを言うのはもう右京じゃない。.....私の話が通じないのも右京じゃない」


左京はそう言いながらそのままノートを見せてくる。

お兄ちゃんとの絆ノート。

私と左京とお兄ちゃんが幸せになる為のノートだ。

そのノートを困惑しながら見る私。

それから左京を見る。


「右京。見損なった。私は.....お兄ちゃんの為なら何でもするって思ったから」


「.....でもそれをすると私はお兄ちゃんに嫌われる。それは嫌」


「.....嫌われるって何。.....そんな事あり得ない」


「あり得るから言っているんだよ。左京」


「.....そんな事を言うなら私の右京じゃない。貴方は偽物」


「.....左京.....」


私は右京を信頼していたのに、と左京が言う。

その言葉に困惑しながら私は左京を見る。

左京は怒りながらそのまま部屋から去って行く。


バサッとノートを殴り捨てて、だ。

私は額に手を添える。

どうしたら良いのだろうか、と。


それから追い掛ける様に部屋を後にすると。

お兄ちゃんの部屋から声がした。

それは左京の声だ。

耳を澄ませると、お兄ちゃん。右京に何を吹き込んだの、と言っている。

やっぱりあの女?、とも言いながら。


「あの女は殺さないと駄目なの?」


「左京.....お前な。そんな言葉使うな」


「.....私は普通なんて要らない。そもそも私はお兄ちゃんと幸せになれればそれで良いのに。私の周りは変わっていく。何故?」


「それはそれじゃ上手くいかないからだ。この世界の構図が」


「お兄ちゃん。.....私はお兄ちゃんだけを独り占め出来ればそれで良い。だからこの世界は関係無い」


「あるって。.....良い加減にしないと怒るぞ」


怒る?寧ろ何で怒るの?、と左京が言う。

私はその言葉を耳にしながら壁にもたれ掛かってから座る。

それから顎に手を添える。


どうしたものか、と思いながら。

私がこの場で踏み込むのはおかしい。

左京の計画を応援したいから、だ。


だが何だろうか。

この胸の痛みは.....?

訳が分からない。


思いながら聞いていると。

左京が、ならお兄ちゃんをこの場で動けなくしてあげる、と言い始めた。

私は、止めろ!左京、と言う現場の中に入る。


「左京。もう止めて」


気が付くとそんな言葉を放って左京を止めていた。

果物ナイフを、結束バンドを握って暴れている左京を。

私自身も訳が分からない。

何故こんな事をするのか、だ。

だけど私は何だかこうしないと.....手遅れの様に感じた。


「何で止めるの。右京」


「.....私は.....何でか分からないけど何だかお兄ちゃんが傷付くのが嫌だから」


「右京。貴方は頭がおかしくなっている。駄目だよ。良いの?このままお兄ちゃんが他人に奪われても。それは私は許せない。絶対に嫌だ。穢らわしい」


「.....私だって嫌だけど。.....でもそれ以上に嫌なのはお兄ちゃんを裏切る気持ちかもしれない」


「.....嘘だ.....右京がこんな」


その隙に果物ナイフを取り上げてそして結束バンドを取り上げて。

それから私はお兄ちゃんの前に立つ。

そして左京を見る。

お兄ちゃんも複雑な顔で左京を見ていた。

左京は一人、追い詰められた様な顔をしてから絶望の顔をする。


「.....酷い。裏切り者。右京の裏切り者」


「.....左京.....もう止めろ。こんな事は」


「.....そうだ。右京が、お兄ちゃんが呪われたのは.....全部、お兄ちゃんの周りの女のせいだ。絶対に許さない。殺してやる.....!」


「.....左京.....」


左京は一人、ぶつぶつ言いながら部屋に戻った。

私は握っている果物ナイフを見ながら。

お兄ちゃんを見る。

これで良いの。お兄ちゃん、と聞いた。

すると、まともになったなお前、と苦笑気味の笑みを浮かべる。


「.....左京はどんどん暴走していくと思う。これは大丈夫なの」


「.....何としても止めるよ。.....俺はお前らの兄だからな」


「.....そう」


そして私は果物ナイフをバキッと折ってから。

そのまま捨ててから部屋に戻る。

因みにこの日から左京は私と話をしなくなってしまった。

その事で揺らいでいる。

私の感情が.....だ。

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拝啓、地獄の園へ アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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