第17話 青年、第6層で配信を始める。

 ダンジョンでは、すでに沢山のプレイヤーが、モンスター狩りに勤しんでいた。


「ギャオオオオオオゥ」


「いたぞ、恐竜型だーーー!」

「追いかけろ!」

「第6層の最強モンスターだ。あいつを倒せば大粒の『シェールストーン』ががっぽり手に入る!」


 体長2メートルの恐竜型を、何人ものプレイヤーが追いかけている。

 ネットで見たけれど、一番乗りは朝の2時から並んでいたらしい。

 俺たちは、開演後1時間も待ったから完全に出遅れてしまった。


「これじゃあ、今日はもうモンスターを倒せそうにないね……」


 俺が、しょんぼりと答えると、


「うーん……そんなことはないと思うけど。

 とりあえず、アタシたちは配信を始めましょ♪」


 ロカちゃんは、首をかしげてにっこりとほほえんだ。


(カ、カワイイ!!)


 こんなカワイイ女の子とデート……じゃないコラボ配信ができるなんて、俺はなんて幸せ者なのだろう。

 っと、感動にひたっている場合じゃない。撮影の準備をしないと。


 俺は、スマホでロカちゃんの写真を撮ると、カメラのAI機能に人物登録をする。

 これで、カメラが勝手にロカちゃんを画角に入れてくれる。便利だ。


数人かずとさんは、顔出しNGなんでしたっけ?」

「うん。俺のチャンネルはあくまでケルベロスの配信チャンネルだしね。それに俺みたいな平凡な顔を見たいヤツなんていないと思うし」

「えぇ? そんなことないと思いますよ? 数人かずとさんイケボだし、顔も塩顔系で結構イケてると思うんだけどなぁ。この日を境に、顔出し公開しちゃいません??」


 ロカちゃんは、スマホで撮影した俺の顔をながめながらつぶやく。


「そ、そんな、お世辞なんていいから! 早くNG登録してよ!」

「えー。お世辞じゃないんだけどなぁ……ま、いっか………………はい。NG登録完了しました!」

「よし、それじゃあ配信始めよっか」

「はい!」

「ブヒブヒブヒ♪」


 俺はカメラを地面に置くと、カメラの匂いを嗅いでいるハッちゃんを抱っこして2メートルほど離れる。

 そして俺のすぐ隣に、同じくカメラを置いたロカちゃんがスタンバイをする。


 俺とロカちゃんは、カメラを同時にオンにすると、2台のカメラはふわふわと浮いて、同じ高さで止まった。


 ロカちゃんをバストサイズで映して、ハッちゃんを抱っこした俺の顔がちょうど見切れている画角だ。


「さあ、今日も始まりました! L・O・V・E・L・O・K・A! ラブロカチャンネル!! 応援よろしくね! 今回はおじさんはお休みです!

 その代わりに、とってもキュートなゲストが来てくれましたぁ!」

「初めまして、ケルベロスのお兄さんです。ケルベロスのナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんとの生活を配信しています。今は好奇心旺盛なハッちゃんだけが顔を出している状態です」

「ブヒブヒブヒ♪」


 こうして、はじめてのコラボで、はじめてのダンジョン探索。

 はじめてづくしの配信がスタートした。

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