第18話 ケルベロス、レアモンスターをしとめる。

 俺は配信開始の挨拶を終えると、ハッちゃんを地面に置く。

 カメラは少し画角を変えて、ハッちゃんとロカちゃんを同時に映す構図に変わった。


 ロカちゃんは、なれた調子でこのダンジョンアトラクションを説明していく。


「今回は、今日オープンしたばかりの、ダンジョンアトラクションに来ています。

 だから、いつものコスチュームじゃなくて普段着です。どうかな?」


 ロカちゃんはカメラにむかってクルリと一回転をする。

 カワイイ。


「今日の服似合ってる? えへ♪ ありがとう!!

 そうそう。今日はアトラクションの方だから普段着にしたの。

 今日はショートパンツなの。普段はパンツルックが多いかな?」


 ロカちゃんはスマホに届いたコメントをチラ見しながら、カメラ目線を崩さずにコメントに返信する。さすがは人気ダンジョン配信者だ。


「第4層は1メートル級までのモンスター。

 第5層は1メートル50センチ級までのモンスター。

 そして、アタシたちが来ている第6層は2メートル級のモンスターが登場するの。モンスターの種類も、ライセンスが必要な第7層とほとんど変わらないから、ハイリスクハイリターンな階層だと思うよ」


 ロカちゃんがダンジョンアトラクションを説明しながら、赤茶色の岩山が乱立する第6層の様子を撮影しているときだった。


「キャンキャン!!」


 突然、ナナちゃんが顔を出して、木陰の茂みに向かって吠え出した。

 すると金色をした細いトカゲがものすごいスピードでカサカサと逃げ出していく。

 レアモンスターのゴールデンカナヘビだ!!


「ワンワンワン!!」


 好奇心旺盛なハッちゃんが大興奮でゴールデンカナヘビを追いかけると、


「バウバウバウ!!」


 のんびり屋のキューちゃんも目を覚まして、カナヘビハンティングに参加する。


「わ! ちょっとみんな?」


 3匹を繋いだリードは、あっという間に限界の10メートルになって、俺は大急ぎで3匹を追いかける。強烈なパワーでリードを引っ張られて肩が抜けてしまいそうだ。


「ガウゥ!!」


 ゴールデンカナヘビは、ハッちゃんの噛みつき攻撃をすんでのところでかわす。でも、


「バウゥ!!」


 キューちゃんの時間差噛みつき攻撃にあえなく捕まってしまった。


「キュー……」


 ゴールデンカナヘビは、はかなげな鳴き声をあげて霧のように消え去ると、宝石のようにキラキラと光る黄色い石に変化した。

 『シェールストーン』だ。しかもかなりの特大の!!


「でかした、みんな!」

「すごい! アタシもゴールデンカナヘビを仕留める瞬間をみたの、初めてだよ!!」


 あれほどの大玉だったら、換金をすれば、1週間分、いや2週間分の食費をまかなえる!

 俺とロカちゃんは大喜びで、3匹に駆け寄っていった。でも、


 パク!!


 ハッちゃんは『シェールストーン』を咥えこむと、口の中で「カリカリカリ……」とかじり始めた。


「コラ! ハッちゃん! 「ペッ!」ってしなさい!!」


 俺は大慌てでハッちゃんの口を開けようとする、けれど、


「グルルルル……」


 ハッちゃんは、強靭なアゴ力で絶対に口を開こうとしない。


 まいったな。せっかくの『シェールストーン』をこのままではハッちゃんに食べられてしまう。


 ……てゆうか、『シェールストーン』って食べて大丈夫なの??

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