第16話 青年、美少女と幻獣だよりでダンジョンに挑む。

「次のお客さまー」


 ダンジョンアトラクションの係員が俺たちを呼ぶ。


「あ、はい」

「ふう、ようやくだね」

「ブヒブヒブヒ♪」


 俺とロカちゃん、そして好奇心旺盛なハッちゃんは受付へとすすむ。

 なかでもハッちゃんのテンションはマックスで、おねえさんの匂いを興味津々にかいでいる。


「ブヒブヒブヒ♪」

「あはは、かわいい! ダンジョンアトラクションに同伴ということは、このワンちゃんは幻獣ということでよろしかったですか?」

「はい」


 俺は、受付の人に、カードサイズの幻獣飼育許可証を見せる。

 俺と、ケルベロスの3匹が顔をだした写真付きの証明書だ。


「わぁ! ケロベロスなんですね! わたし初めて見ました」

「ブヒブヒブヒ♪」


 声のトーンが一段上がった受付のお姉さんに、ハッちゃんはさらにテンションがあがってお姉さんに向かってジャンプを繰り返す。


「はーん。めっちゃカワイイ!

 では、名残惜しいけど緊急用の『シールド装置』をお渡しいたします。

 気をつけていってらっしゃいませ!」


 俺とロカちゃんは、防犯ブザーサイズの『シールド装置』を受け取る。

 紐を思い切り引っ張ると、『シールド装置』がエアバックのようにふくらんで、固定設置型のシールドになる仕組みだ。

 危機察知のAIも搭載されてあって、手動以外にも持ち主の命の危険を感じたら自動的にシールドが設置されるすぐれものだ。


 ただ、一度シールドを張ってしまうとそこから動けなくなってしまうし、解除もダンジョンアトラクションの係員待ちになってしまう。

 でもって、結構なお値段をアトラクションに支払わなくてはいけなくなってしまうのだ。


 お金を稼ぐつもりが『シールド装置』が発動して、収支マイナスだなんて話はよく聞くことだ。


「ねえ、今日は何層を攻略する? せっかくだから、今日オープンした第4層〜第6層にしたいよね。

 アタシは第10層まで潜れるレッドライセンスがあるから、第6層でも全然へっちゃらだけど……」

「ブヒブヒブヒ♪」


 ロカちゃんは、ハッちゃんを見ながら俺に質問をする。


「せっかくだから第6層にしよう。

 出会った時、恐竜型に襲われそうになったのを、3匹に助けてもらったんだ」

「本当!? すごいねーハッちゃん」

「ブヒブヒブヒ♪」


 ちょっと怖いけど、今はなんたって明日の食費にも困っているくらいなんだ。

 ハッちゃん達にはじゃんじゃんモンスターを狩ってもらって食費を稼いでもらわないと。

(あと、プロのダンジョン探索者のロカちゃんにかなり期待をしている。ちょっと恥ずかしくて口には出せないけれど)


「よし、決まりだね! それじゃあ第6層にレッツゴー!」

「ブヒブヒブヒ♪」


 俺とロカちゃんとハッちゃんは『第6層』とプレートが掲げられた魔法陣に入り、ダンジョンへと潜っていった。

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