第15話 青年、美少女と待ち合わせをする。

 今日は土曜日、時刻は9時30分。

 俺は、ロカちゃんとの待ち合わせ場所のうしとらダンジョンの前にいた。


 「ブヒブヒ♪」


 今日は、ケルベロスの3匹と一緒だ。

 今は好奇心旺盛なハッちゃんだけが頭をだして、興味深そうに辺りの匂いを嗅いでいる。

 ハッちゃんには、お出かけ用のハーネスを付けて10メートルまで伸びる伸縮式のリードで繋いでいる。

 首輪じゃなくてハーネスなのは、3匹がいつでも頭を出せるようにするためだ。


 ダンジョンアトラクションには、幻獣と一緒に入ることができる。

 幻獣にモンスターをハンティングさせることができるのだ。


 とはいえ、ハッちゃんたちにモンスターが倒せるか正直わからない。

 まだ、ハンティングの教育をしていないからだ。

 出会った時は、恐竜型から守ってくれたけれど、あれは緊急事態だったし。


 それにしても、ずいぶん早く来てしまった。

 というか昨日はぶっちゃけ緊張でほとんど眠れていない。


 なんてったって今人気急上昇のJKダンジョン配信者、露花つゆはなロカちゃんと、デート……じゃない、コラボ配信ができるんだ。

 緊張しないわけがない。


 ずいぶんと早く待ち合わせに来てしまって手持ち無沙汰な俺は、ロカちゃんのダンジョン配信動画を見始める。


「さあ、今日も始まりました! L・O・V・E・L・O・K・A! ラブロカチャンネル!! 応援よろしくね!」


 もう何度見ただろう、ロカちゃんはヘソだしミニ丈のちょっとセクシーな衣装を着て、笑顔でダンジョン配信をやっている。

 こんなカワイイ女の子なのに、このうしとらのダンジョンの最強モンスター、サイクロプス型と戦うんだもの。


 可愛くって本格派、人気が出ないわけがない。


「おはよう、お兄さん♪ ハッちゃんも♪♪」


 俺は、声をかけられて顔をあげる。

 そこには、大きめな白いシャツにベージュのショートパンツと黒のニーソックスを合わせた、カジュアルファッションのロカちゃんが立っていた。

 腰には、最新ダンジョンギアの、伸縮型レイピアを装備している。


「きょ、今日はいつもの撮影衣装じゃないんだね」


 うわ! 緊張で噛んでしまった……みっともない。


「せっかくのコラボ配信だし、気分を変えてみようかなって……どうですか?」

「カワイイ! とっても似合ってるよ!!」

「えへへ、嬉しいな♪」


 ロカちゃんが可憐にはにかむ。


「ブヒブヒブヒ♪」

「あはは、ハッちゃんもありがとう」


 ロカちゃんは、中腰になってハッちゃんの頭をヨシヨシする。

 ああ、なんて幸せなんだ。


「そろそろ並ぼっか」

「うん、そうだね」


 俺とロカちゃんはダンジョンアトラクションの列に並ぶ。

 さすがオープン初日。かなりの長蛇ができている。1時間近くならぶことになりそうだ。


「そういえばお兄さん」

「なあに、ロカちゃん」

「その、カメラが回っていない時は、『ケルベロスのお兄さん』じゃなくって、名前で呼んでもいい?」

「も、もちろん!」

「じゃあかぞえさん……ううん、数人かずとさんで! えへへ、なんだか照れちゃいますね」

「ブヒブヒブヒ♪」


 ああ、なんて幸せなんだ。

 俺はロカちゃんとハッちゃん。そうしてたまに顔を出すナナちゃんとキューちゃんと楽しくおしゃべりしながら行列待ちをしていると、あっという間に時間が過ぎ去っていった。

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