第14話 幕間劇 ある男の一日。

 男の名前は逆村さかむら

 明日オープンするダンジョンアトラクションの最高責任者だった。


 遅れに遅れたスケジュールは、このご時世にふさわしくない、休日出勤とサービス残業を部下に強要して、どうにかこうにか工期内に収まった。


「凡人どもがw 苦労させやがってw」


 男は、人を小馬鹿にしとような笑みを浮かべながら、ダンジョンアトラクションの最終点検を行なっていく。


 モンスターがドロップする宝石のような物体『シェールストーン』。その中に閉じ込められてあるキラキラと光る『マナ』を抽出することで、エネルギー資源として活用できる。


 ダンジョンアトラクションは、『シェールストーン』を客に回収をしてもらう、画期的なシステムだった。


 ダンジョンに赴いてモンスターを狩る『モンスター狩り』は、程よいスリルを味わえるうえに、回収した『シェールストーン』を運営会社に買い取ってもらうことで現金に換金することができる。


 『モンスター狩り』は、レジャーとお小遣い稼ぎを兼ね備えた遊戯として大ブームになっていた。


 このダンジョンは、先祖代々、呪われた土地といわれていたうしとらの地に突然できたものだ。

 呪われた土地だなんてとんでもない。今では貴重な資源である『シェールストーン』を無尽蔵に生み出す金のなる木がある土地だ。


 うしとらのダンジョンは、第1層から第3層までが一般客が『モンスター狩り』を行えるゾーン。

 そして今点検をしている第4層から第6層までが、明日新しくオープンする階層だ。


 ダンジョンといっても、足元は綺麗に整備されていて、トイレや飲食施設も完備されてある。さながらテーマパークといった様相だ。


「うはw なんだ? こりゃww」


 男の足がとまる。

 青いビニールシートで覆われた、いかにも胡散臭い場所がある。

 男は、強引にビニールシートをはがすと、そこには、苔むした古臭い石塚があった。

 石には、うっすらと『庚申塔こうしんとう』と書かれてある。


「たく、なんでこんなもん残してんだよw

 つかえねー下働きどもがww」


 男は、石塚を一瞥いちべつすると、ちゅうちょなく蹴っ飛ばした。

 そういえば、第4層と第5層にも似たような石塚あったな。

 全部俺様がぶっ壊したけどww

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