第13話 青年、美少女JKにデートに誘われる。

 とにかくこのままでは、配信動画の収入が手に入る前に資金が枯渇してしまう。

 何か、売るものはないかな?


 俺はあたりを見回す。けれども値が付きそうなのはスマホと、つい最近購入した最新鋭カメラだけだ。


「はあ……」


 俺は頭をかかえる。


「ブヒブヒブヒ♪」

「ブフブフブフ♪」

「ブホブホブホ♪」

「お前たち、なぐさめてくれるのか?」


 俺は、3匹をぎゅっと抱きしめる。

 いっそ、実家に帰って農家をつぐか……とりあえず、3匹が大好きな柑橘類は売るほどあるし……。


 プルルルル……プルルルル……プルルルル……プルルルル……


 ん? 誰だろう? 俺はスマホを見た。


「え? ロカちゃん??」


 携帯には『露花つゆはなロカ』と表示されている。

 俺は大急ぎでスマホをタップする。


「も、もしもし?」

「ロカです。今、大丈夫ですか?」

「え? あ、うん」

「突然なんですけど、明日、うしとらのダンジョンに行きませんか?

 撮影に協力してほしいんです。

 ダンジョン配信をする予定だったんですけど、ADのおじさんに用事ができちゃって……」

「べ、別にいいけど」

「じゃあじゃあ、明日オープンする第4層~第6層を探索しません?

 あと、できれば、ハッちゃんたちも連れてきてもらえますか?」

「い、いいけど……」

「やったあ! ありがとうございます!!

 モンスター退治でゲットしたシェールストーンは、全部お兄さんにプレゼントしますから!」

「ええ?? 本当にいいの??」

「はい! アタシ、毎回欠かさず動画見てるんですけど、ハッちゃんたちの食費って、かなり大変そうなので、すこしでもお役にたてればなぁ……って」


 渡に船とはこのことだ。

 ロカちゃん、なんてやさしいんだ……。


「本当、助かるよ!

 なんだか、俺、ロカちゃんに助けてもらってばっかりだね」


 俺はうれしくて、ついつい涙ぐんでしまう。


「ううん、気にしないでください。アタシも今話題沸騰の『ケルベロスのお兄さん』とコラボできちゃうんだし。お互い様です♪

 それじゃあ、明日9時50分にうしとらのダンジョンに待ち合わせでいいですか?」

「うん! 大丈夫!!」

「やったあ! それじゃあ、明日よろしくお願いしますね。えへへ、楽しみだなぁ……」

「俺も、すっごく楽しみだよ! それじゃあね」


 俺はウキウキでスマホの通話モードをオフにする。

 ダンジョンでのモンスターハントは、正直、ギャンブル要素が強いんだけれども、それでも収穫ゼロってことはないはずだ。


 これでなんとか数日は食いつなげる。


 そして俺は、いまさらながら重大な事実に気が付いた。

 あれ? これひょっとしなくても、デート……じゃない??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る