第12話 青年、食費で首が回らなくなる。
ケルベロスのナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんとの生活を始めて1週間が経過した。
ピピピピ……ピピピピ……ピピピピ……
俺はアラームの音で目を覚ます。
無職の俺だけど、結局のところ俺は朝7時にアラームをセットしたままだった。理由は、
「ブヒブヒブヒ♪」
「ブフブフブフ♪」
「ブホブホブホ♪」
腹をすかせたナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんの3匹に、毎朝ご飯をあげる必要があるからだ。
ナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんは、朝昼晩、1日3回の食事と、午後3時のおやつと、午後10時の夜食を食べる。
つまりは1日5食生活だ。
俺は、ふらつく頭をしゃっきりとさせるため、台所にいって顔を洗うと、パジャマとしてつかっているヨレヨレのジャージを脱いで、ワイシャツとチノパンに着替えると、再び台所に行って冷蔵庫を開ける。
昨日買い出しに行った食料は、もうほとんどなくなっている。
「朝ごはんは、かぼちゃでいいか?」
「ブヒブヒブヒ♪」
「ブフブフブフ♪」
「ブホブホブホ♪」
甘いものが大好きな、3匹は大喜びだ。
俺は、レンジでかぼちゃを温めて切りやすくすると、包丁でサイコロ状にカットする。そうして、深皿を斜めにカットしたような独特の形状の3つのお皿に、かぼちゃを均等に入れる。
フレンチブルドッグやパグのような、短頭種用に作られたペット用の食器だ。結構な重みもあるから3匹がはげしくご飯に食いついても食器がずれることもない。
白いお皿が、顔が白いハッちゃん用。
黒いお皿が、両目に黒ブチがあるキューちゃん用。
最後に牛柄のお皿が、右目だけにブチがあるナナちゃん用だ。
俺はかぼちゃの入った3つのお皿をお盆に乗せて、部屋に戻る。
「ブヒブヒブヒ♪」
「ブフブフブフ♪」
「ブホブホブホ♪」
ケルベロスの3匹は、お盆を見ながら小さな尻尾をちぎれんばかりに左右に振って俺を追いかけてくる。
俺は、床にランチョンマットを3枚敷いて、白と黒と牛柄のお皿を置くと、3匹のテンションは最高潮に跳ね上がる。
「待て! まだだぞ!!」
俺は低い声で3匹に言い聞かせると、3匹をだっこしてカメラのスイッチを押した。
カメラはふわふわと浮いて、俺の首の下でピタリととまる。
「おはようございます! ケルベロスのお兄さんです。
今日の朝ご飯は、温めたカボチャです。甘いものが大好きな3匹は、テンション爆上がり中です」
「ブヒブヒブヒ♪」
「ブフブフブフ♪」
「ブホブホブホ♪」
「待たせてごめんな。よし! みんな食べていいぞ!!」
俺がパンと手をたたくと、3匹は猛スピードでお皿にむかっていく。
「ガウガウ♪」
「ガフガフ♪」
「ワフワフ♪」
俺は、スマホを確認する。
『おはよーございます!』
『今日もすごい食欲w』
『この食べている音がたまんないんだよねー』
『最高品質のASMRだよな!』
『お兄さんのイケボもね♪』
『とか言っている間に、あっという間に3匹とも完食!』
『お皿なめててカワイイ♪』
よしよし、今日は1000人近い人がライブで視聴してくれている。
一週間前から配信を始めた『ケルベロスのお兄さん』は、順調に視聴者が増えている。
なかでも食事動画が一番の人気動画だ。
「はい。今日もあっという間に完食です! つぎは12時のお昼ごはんのライブ配信を行うので、チャンネル登録よろしくお願いします!」
「ブヒブヒブヒ♪」
「ブフブフブフ♪」
「ブホブホブホ♪」
「ばいばいー♪」
俺は、カメラのスイッチをオフにする。
ふう。たった3分程度の動画だけれど、いまだに緊張する。
この1週間、ありがたいことにものすごいスピードでチャンネル登録者が増えている。おかげさまで、収益化のメドもたった。
でも、お金が入るのは2か月近く先だ。
俺は、3匹の食費とペット用品の購入でかなりの出費を強いられている。
目に見えて減っていく貯金に頭を悩ませていた。
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