第11話 青年、ケルベロスにキャベツとバナナを食べさせる。
「それじゃあ、これで初回の配信は終了します。
明日もライブ配信をするので、良かったらみにきてください」
俺は、ナナちゃんとハッちゃんとキューちゃんをだっこしながら、終わりの挨拶をすると、カメラの電源をOFFにする。
ふう、なんとか無事に配信できた。
ぶっちゃけ、途中からは返答にこたえるのがやっとで、何をしゃべったかすら覚えてないけれど。
でも、たくさん質問も来たし、100再生くらいはいっているかな?
俺は、スマホを確認する。
「え、ええ? 1万回再生??」
本当に? いくらなんでも多すぎない??
俺は想像よりも桁がふたつちがう配信回数に驚きが隠せない。
そう言っている間に、再生数はあっという間に2万回を突破した。
なんで? いや原因はハッキリしている。ロカちゃんが配信を宣伝してくれたおかげだ。人気ダンジョン配信者の拡散力ってとんでもないんだな。
……ロカ、恐ろしい娘!
っと、白目を剥いて驚いている場合じゃない。
とりえあえず、今日は疲れた。
保健所に行って、家電量販店に行って、スーパーで大量の食糧を買って、最後に慣れないライブ配信をしてもうヘロヘロだ。
今日は、風呂に入って早めに寝よう。っとその前に、ハッちゃんたちにご飯を上げないと。
俺は、冷蔵庫を開ける。一人用の冷蔵庫は、スーパーで購入した野菜とくだものでパンパンになっている。
幻獣と呼ばれているケルベロスだけど、生物学上は、哺乳類イヌ科にあたる。つまりは雑食なんだけど、街中で飼う以上、なるべく肉類は与えない方が良い。
あと、甘いものを食べるほど穏やかな性格になることがわかっているから、なるべく糖度の高いくだものも一緒に与えるべきとされている。
「今日は、これかな?」
俺はキャベツ1玉を取り出して包丁で3等分をして、バナナを3房取り出す。
ナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんは、俺のことをずっと見つめている。
「お、おりこうにお座りしているな」
俺は台所の床に新聞費を広げると、その上に3等分したキャベツを置いた。
ナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんは、舌をペロリンと出しながら、物欲しそうにキャベツをみつめている。
「よし! 食べていいぞ」
俺がパンと手をたたくと、3匹はわれさきにとキャベツにかじりつく。
「ガウガウ♪」
「ガフガフ♪」
「ワフワフ♪」
よかった。キャベツ、気に入ってくれたみたいだ。
俺は安心してデザートのバナナを剥き始めた。バナナの甘い香りが台所にただよってくる。
すると……
「ブヒブヒ♪」
「ブフブフ♪」
「ブホブホ♪」
3匹はキャベツを蹴っ飛ばして、バナナを向いている俺の方へすり寄ってきた。
俺は、3匹が蹴っ飛ばしたキャベツを指さしながら、低い声でしかりつけた。
「ダメ! これはデザートなんだ。キャベツを食べきらないとあげないよ!」
「クーン……」
「クーン……」
「クーン……」
3匹が切ない声をあげてこちらを見てくる。
ああ、カワイイ。
でも、俺は心を鬼にして低い声でしかりつける。
「寂しそうな顔をしてもダメ! バナナはキャベツを食べないとあげない!!」
俺は、3匹にピシャリと言いつけると、3匹は渋々といった感じでキャベツをむしゃむしゃと食べ始める。
3匹は、もくもくとキャベツを食べ続け、ものの1分ですっかりキャベツを食べ終えた。そして、
「クーン……」
「クーン……」
「クーン……」
と、再び切なそうな声をあげる。
俺は、3匹の頭をわしゃわしゃとなでながら、今度は高いトーンの声で、思いっきりほめる。
「エライエライ! みんな食べきってエライぞ! ごぼうびのデザートだ」
「ガウガウ♪」
「ガフガフ♪」
「ワフワフ♪」
言葉の意味が分かるのだろうか、3匹は大喜びで、ジャンプしながら短い尻尾をブンブンと振り回す。
俺が、皮をむいたバナナを差し出すと、3匹は、バナナに食いついて、あっという間に食べきってしまった。
やっぱり、ケルベロスって甘いものが好きなんだな。
明日の配信は、3匹の食事シーンを配信してみようかな……。
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