第7話 青年、電気屋さんに行く。
俺は、自宅に帰ると、ハッちゃんたちを置いて、すぐに出かけることにした。
撮影用のカメラを購入するためだ。善は急げだ。何事もやってみなくちゃわからない。
「くーん」
俺がひとりで出かけることに気が付いたんだろう、ハッちゃんは切なそうな鳴き声をあげる。
「心配するな。ちょっと買い物をして帰ってくるだけだから」
俺は、ハッちゃんの頭をなでなでする。すると、
「くーん」
「くーん」
ナナちゃんとキューちゃんも起き出してきて、3匹そろってせつなそうな顔で俺をみてくる。しまった、余計出かけづらくなってしまった。
「くーん」
「くーん」
「くーん」
俺は、後ろ髪をひかれながら、家を後にした。
・
・
・
30分後、俺は、駅前にある家電量販店のカメラコーナーで、ボーゼンとしていた。
配信用カメラって、こんなに沢山あるんだ……。
実にフロアの半分が、カメラコーナーで占められている。
値段もピンからキリまでで、どれがいいのかさっぱりわからない。
わからないことをずっと考えていてもしょうがない。
俺はポケットからスマホを取り出すと、動物病院で出会ったJKダンジョン配信者の
プルルルル……プルルルル……プルルルル……ガチャリ
(もしもし?)
「あの、今日、動物病院で合った
(ケルベロスのお兄さん? どうしたの?)
「今、家電量販店にいるんだけど、実は配信用カメラの相談がしたくって……」
(ケルベロスの配信ですね! いいですよ!!
だったら店頭の様子見たいから、テレビ通話に切り替えてもいい?)
「わかった」
俺は、スマホをテレビ通話モードに切り替える。すると、
「えええ!?」
そこには、バスタオル姿のロカちゃんがいた。
パールホワイトの髪の毛をアップにして、湯上りなんだろう、ほんのりと顔があからでいる。
(ランニングから帰ったとこで、シャワー浴びてたかから)
ロカちゃんは、あっけらかんと話しながら机の上にスマホを置くと、椅子に座ったバスタオル姿のロカちゃんの全身が、俺の手の中のスマホの画面に映し出された。
目のやり場に困るよ……。
俺は、なるべくバスタオル姿のロカちゃんを見ないように気を付けながら、店頭に大量に並ぶ、配信用カメラを移す。
(あ、それ! アタシが使っているカメラだよ!)
ロカちゃんが勢いよく椅子から立ち上がる。程よいサイズのバストが大写しだ。
激しく動くモノだから、バスタオルは今にもずり落ちそうになっている。
本当に目のやり場に困る……。
「こ、このカメラ?」
俺はスマホの画面から顔を背けながら、店頭にディスプレイされてあるカメラを映す。
(そう、それ! AI搭載のカメラだから、移したい被写体とアングルをカメラに覚えさせれば、あとは空中浮遊モードで自動で撮影してくれるよ♪)
「へえ、今のカメラってそこまで進化してるんだ」
俺は、ロカちゃんに勧めてもらったカメラの値段を見る。
ぐ……結構お高い……。
(日常生活の配信もいいけど、ダンジョン配信をやるなら絶対このカメラがおススメだよ!)
「ダンジョン配信?」
(そう、ダンジョン配信! ケルベロスのバトルシーンなんて誰も見たことないから、絶対バズると思うよ!! アタシもコラボ配信やってみたい!)
「なるほど……じゃあ、思い切ってこのカメラを買うことにするよ! さっそく今日から配信を始めてみる」
(本当? 配信始めたら教えてよね! 絶対リアタイしたいから!)
俺はJKに勧められるまま、なかなかにお高いカメラを購入すると、スーパーに立ち寄って、ナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんたちが食べる大量の野菜やくだものと、俺が食べる用のカップラーメンを1個購入して家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます