4.ミハイル・ル・ゼシニア

俺はミハイル・ル・ゼシニア、ミシラルエ帝国の四大公の一人ゼシニア公爵の跡取りだ。父は宰相としても活躍していて俺もいつかこんな風になりたいと父の真似をして3歳の頃からずっと書斎に籠っていた。

パーティーなどに行くと令嬢がハエのように群がってきて不快感が俺を襲った。

ある日、10の俺に婚約者ができた。

でも顔すら合わせたことがなくそれから2年たち婚約者と顔合わせの場が巡ってきた。正直言ってめんどくさかった。

他の令嬢のようにどうで俺に群がってくるだけの令嬢だろう。

それなら書斎に籠って本を読んだ方よっぽどマシだ。

父に無理やり生かされてクラウス公爵家の謁見室で一人待たされた。

遅れて入ってきたのは眩い金髪にサファイアの瞳を持った少女だった。

だが俺が見てきた中で一番綺麗だった。

だがどうせ顔がいいだけの女だ。


「初めまして、私はレイシア・ド・クラウスと申します。婚約者としてよろしくね。」


レイシアは優雅に礼をしてきたがそこらの女ができることだ。

だから俺はわざと冷たくしてレイシアの反応を見ることにした。


「なんだ、金髪頭?」


俺がそう言うとレイシアはニコリと笑んで1mmも驚かなかった。

なかなか忍耐力はあるようだな。

だが次に放たれた言葉は想像を絶するモノだった。


「あら?反抗期の子って大変ね、腐れ眼鏡。」


俺を『腐れ眼鏡』扱いしてきたのだ。

まあ確かに俺は眼鏡をしている、が今まで外見では『綺麗』だとか誉め言葉しか言われたことがない俺は衝撃を受けた。

しかも彼女はもっと驚く行動に出たのだ。


「そうだわ、腐れ眼鏡。これを見て頂戴。」


レイシアはそう言いながら本棚に合った本を見せてきた。

『王族』と『裏切り』。

レイシアが言いたいことは『私と一緒に王族を裏切りましょう?』と言うところか。

王族に思う所があるのは俺だってわかる。

だがまずは条件だ。


「これに協力してくれるかしら?」


予想通りの言葉が返ってきた。


「なぜだ?」


「今の皇太子、質がないでしょう?家庭教師を嫌ってただ遊ぶだけ、だから学力もないしそれ言え運動神経も無い。でも傲慢で金を使いまくっている。『コレ』が皇位についたらこの国『ジ・エンド』よ。」


レイシアの説明は一理あった。

確かにこの国は腐っている。


「婚約解消してくれるならいいぞ。」


まずは婚約解消だ。

レイシアには申し訳ないが俺は俺の道を行きたい。

でも正直言って王族を裏切ることは俺にとって願いでもあった。

それは王族によって父と母が隣国からの重圧で苦しんでいるのを毎日見ていたからだ。

でも自分に仲間が居るのは心強い。

だって誰も思っていても同情はしてくれなかったから。


「時期にね。今の私だと無力だから。」


レイシアが言うと何故か嘘だと疑わない。

何故だろう?

自分自身よくわからない。

でもこれだけは言える。


「分かった、この計画に載る。」


この言葉にレイシアは嬉しそうに本棚からノートを取り出しペンを渡してきた。


「いい?まずは戦略ね。どうやってこの国を没落させようかしら?」


レイシアの言葉に俺は考えていた案を提案した。



「俺たちは今は名声や権力もゼロに等しい。でも社交界に積極的に参加し貴族たちの信頼を得るんだ。そうしたら万一バレた時にも信頼で事実を塗り替えることができる。信頼は必須だな、で次は出来る限り皇太子の活躍の場を奪うんだ。世間では皇太子の噂もそれなりに酷いが活躍の場さえも奪ったらただの無能になる。そうしたら誰も助けてくれない、そんな皇太子を助ける奴なんて社交界には誰もいないからな。まず俺たちは皇太子が身動きできないようにしつつ信頼を得るんだ。なかなかハードだな。」


この案は実行には時間がかかるものの一番穏便に王族を排除できる方法だ。




 プランA:皇太子を無力化+罪を擦り付ける、貴族を柔軟しそのまま処刑。


 プランB:皇太子を操り罪を起こさせ裁判で証拠を取り上げ国外追放。


 プランC:裏で隣国に寝返り国ごと裏切る。



                                    』


俺がノートに纏めてレイシアに渡すとレイシアは嬉しそうに笑った。

でも人を殺す案に喜びながら賛成する令嬢が自分より年下だとはコイツが成長したらもっとヤバくなる気がする。


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