第304話 エリシオン(イース視点)
「!!」
何これ。
物凄くしっくり来るんですけど!!
魔剣なんて触ったことないからよく分かんないけど、この剣は重さといい、持った感触といい、全てがいい感じだ。
ただ、クリスさんにはどうだろうか…。
速さ重視にするなら…。
「私が扱う分には問題ないですが、クリスさんには少し軽いかもしれません。剣の速さを求めるならピッタリかと思いますが」
「うん。やっぱりそうか。僕の見立てと同じなら安心だ。おやっさん、これも買いますね」
「お、おう。いいのか?今日はやけに太っ腹じゃねえか」
「僕達は今、大口の依頼を抱えているんでお金に見通しがあるんですよ。でも、その最中で失敗する訳にはいかないので、武器だけでもレベルアップしておきたいんです」
「わかった。そういうことなら文句はねぇ」
大口というのは、聖女クラリス救出のことだろう。フィリア王女も関わっているだけに確かに大口案件ではある。
でも、それはクラリスを連れてオルティア国内に入れた以上、それはもうほとんど完了しているも同然だ。
王都に戻ることまで考えているんだろうか。
肝心のフィリア王女には戻りたそうな気配がないんですけどね…。
「おやっさん、それじゃまた」
「おう。また来てくれよな」
購入した武器を受け取ったクリスさんと共に、店主に挨拶をしてから店を出た。
確かこの後は、ルート商会がやっている宿屋に向かえばいいんだったよね?
「2人ともちょっと待って!!」
「んっ?」
「えっ?」
「はい、これ!!」
「ありがと」
「何で…」
宿屋へ向かう最中、後ろを歩いていたクリスさんに声を掛けられて振り向くと、クリスさんは先程買ったばかりの杖と魔剣を私たちに差し出していた。
ノエルさんはともかく、何で魔剣が私?
クリスさんが使うんじゃないの?
「2人共この武器を受け取って、僕と結婚して欲しい」
「いいよ」
「え、えぇぇー!!」
ちょっと待って、
何、この急展開!!
何も聞いてないんですけどー!!
いや、ノエルさんはわかる。
誰から見てもわかる。
何で私なの?
そりゃ、クリスさんに言われたら嬉しいよ。
めちゃくちゃ嬉しいけど…。
「何で私なんかと…」
「剣は人を表すって言うだろ? 練習で剣を合わせてるうちにいろいろと分かってきてね…」
「…」
「シーマくんの周りはみんな幸せそうでさ、僕もノエルとイースさんをあんな風に幸せにしたいって思ったんだ。僕じゃダメかい?」
「そ、そんなこと…ないですけど…」
「けど?」
「ノエルさんは私がいてもいいんですか?」
「もちろんよ」
「実はね、今日こうすることはノエルには言ってあったんだ。この杖と魔剣は偶然さ。でもね、魔剣を持ったイースさんを見たら間違ってないって確信したんだ」
「わかりました。私、クリスさんと結婚します」
「よかったわね、クリス。イースもね」
私は覚悟を決めて、ノエルさんと一緒にクリスさんから武器を受け取った。
「ありがとうノエル。そしてイ、イースも」
「!!」
突然の呼び捨てはズルいよ。
キュンキュンしちゃうじゃん。
でも、良かった。
もう胸が苦しくならなくて済むのかな…。
「これからは3人でエリシオンだ」
そっか。
そうなるのか…。
あっ、
フィリア王女に何も言わないで決めちゃった。
どうしよう…。
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