第287話 感謝



「ロビンさん、今日の夜は俺たちからご馳走させて下さい」



夕食を準備する頃になってロビンさんがキッチンに現れたので、そこで初めて今日の趣旨を伝えた。



「はぁ?! 何言ってるんだ? 客はシーマくん達なんだぞ? リンダの病気も治してもらったし、ご馳走しなきゃいけないのはこっちだろ」


「いや、ロビンさんには魚醤を大量に分けてもらったし、短い間とはいえすごく楽しく過ごさせてもらいましたからね。せめてものお礼ですよ」



そう。

今日の朝、そろそろ出発すると伝えたら、ロビンさんが魚醤を大量にくれたのだ。

「また作ればいいだけだから」って言ってたけど、結構時間のかかるものなだけに太っ腹な対応には感謝しかない。



「何だそりゃ。まぁいいや。そこまで言うなら、せっかくだしご馳走になろうかな笑」


「はい。そうして下さい。もうバッチリ料理してあるんで笑」


「リンダも呼んでいいのか?」


「もちろんです。大丈夫ですよ、リンダさん用のメニューも用意してますから。それに…」


「それに?」


「呼ばないと後でロビンさんが怒られるんじゃないですか?笑」


「ハハハッ、それもそうだな笑」





そして、夕食の時間になった。


俺たちの他には、ロビンさんとリンダさんだけだ。


改まってかしこまる必要もないのだが、何となくそれっぽい言葉があったほうがいいのかなって思ったので、俺は2人に向かって挨拶することにした。



「ロビンさんリンダさん、俺たちは明日サザンベールを出発します。短い間でしたけどいろいろとありがとうございました。ささやかながら今日の夕食を用意させていただきましたので、ゆっくりと楽しく召し上がって下さい」


「何言ってるのよ。私が今ここにこうしていられるのはあなた達のおかけなのよ? 私なんか、どんなにお礼を言っても言い足りないくらいなのに…」


「リンダさん、それはそれ、これはこれですよ」


「えっ?!」


「お2人にはそれぞれ思うことはあると思うんですが、俺としてはココで『魚醤』に出会えたこと、そしてお2人と出会えたことがすごく大きいんですよ」


「「…」」


「俺たちはクラリスを助けるためだけにエピリシアに来て、サザンベールに来たのも魚が食べたかったからでした。はっきり言ってしまえば偶然です」


「「…」」


「でも、クラリスを救えたからこそお2人にも出会えた。結局は必然だったんですよ」


「「…」」


「クラリスがお2人に懐いているのもあって、俺はちょっと後ろに控えてるつもりでしたが、お2人の優しさに触れたらクラリスと同じように楽しく接することができました。今、俺には親がいませんが…」


「「えっ?!」」


「…親子のように触れ合えたので懐かしい感じがしました。

クラリスのこともあって、すぐにはサザンベールに来れないかもしれませんがこれからも仲良くしてください」


「…そうね」


「…もちろんだとも」


「はいはい! それではみんなお腹が空いてると思うから早速食事にしましょう!!」



フィリア王女が話を切り上げるように声を上げた。

でも、みんなを犠牲にするのは良くないぞ。

お腹が空いてるのはフィリア王女だけかもしれないじゃん笑




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