第283話 たたみかける



「お次は、オルトロスになります。これも味付けはさっきのマスと同じですね」



俺がみんなの前にタコの唐揚げを置くやいなや食べ出した。

何もそんなに急がんでも…。


でも、何気にこのタコの唐揚げが今日一番の自信作だったりする。

異世界の知識がなければヌメりを取るのに苦労してたと思うが、特にこれといったも問題もなく、味付けや食感共にかなり良い仕上がりになったかと思っている。


果たして、みんなの判断はいかに…。




「これも美味しい」


「うまい。うまい」


「うん。柔らかくて美味しいわね」


「美味しいでしゅ」



まぁ、嫁ズ+王聖女はいつも通りの反応だよな。



「あっ、これイイ!!」



オッ!意外というと失礼だが、今まで何でも美味いって食べてくれてたノエルさんが『これ!!』と言って1品を称賛してくれたのは、おそらくこれが初めてじゃないかな?

これまでいろんな料理を出してきたけど、その人にドンピシャハマるものを出せたという事実。それは俺の中でも大きい出来事だ。自信を与えてくれるしな。


でも、これをクリスさんが作るのは難しいだろうな。イースさんとの共同作業で頑張ってもらうしかない。まぁ、ノエルさんのためなら躊躇うことなくやってしまうかと思うが…笑



「ほほぅ。あのオルトロスをこんな風に食べるなんてな。固くなり過ぎてないから食べやすいし味もいい。言うことなしだな」


「…自分ばっかり…チッ」



ロビンさんの反応も上々のようで良かった。

それにしても明らかにリンダさんのボヤきが強くなってきてるよな…。

大丈夫かな…。


さっきの鮭のムニエルにも言えることだが、普段から魚介類を扱っている人に対して俺の料理を振る舞うのは勇気がいる。

いくら自信があったタコの唐揚げであっても受け入れてもらえなければ意味がないんだ。



よし。いい調子だ。

次でラストだ。

たたみかけてやる。



「これが今日の試食の最後です。シーバの焼きものになります」


俺はみんなの前にスズキのムニエルを置いた。


味付けは塩だけなので至ってシンプルなのだが、あえて最後に持ってきたのには理由がある。

前の2品は濃いめの味を続けることで最後はさっぱりと感じさせること。そして、スズキという素材が持つ味をじっくりと堪能してもらいたかったからだ。



「うわー。とても上品な味ね」


「うんうん」


「王城でも出ないレベルね」


「美味しいでしゅ」



…。

嫁ズ+王聖女の反応は、まぁ予想通りかな…クラリス以外は。

クラリスはこれまでいったいどんな食生活をしてきたのかなー。忙し過ぎてろくなもの食べてないんじゃないのか? 機会があったら聞いてみるか…。



「うん。いいね」


「「…コクコク」」



エリシオン+イースさんは味を噛み締めるようにして食べている。



「ウチでも似たようなものは出しているがここまで上品な味にはならない…。これは特別なお客さんとかに出すにはもってこいだな」


「ねぇ? これなら食べても大丈夫そうじゃない?」



ロビンさんの言葉は素直に嬉しいな。

でも、自分で作る前に隣りのリンダさんを何とかしてくれ笑






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