第282話 いざ実食



「出来上がったから、早速みんなで食べてみようか………って、リンダさんこんなところにいて大丈夫なんですか?」



料理を持って食堂へ行ったら、先程のメンバーに紛れて、何とリンダさんが座っていた。



「えっ? うん、クラリスちゃんのお陰でもう大丈夫。美味しそうな匂いがしたから寝ていられなくて来ちゃった…。あら、その手に持ってるものがそうなの?」


「えぇ、まぁそうなんですけど、今のリンダさんには刺激が強いかもしれないので、見てるだけにしておいて下さいね」


「えー!! ダメなのー?」


「まだ体力が戻ってないじゃないですか。気になったものがあれば、今度ロビンさんに作ってもらえばいいじゃないですか…」


「………ロビン頼んだわよ」


「お、おう…」



ロビンさん微妙な返事だなー。

そんなに面倒臭い作業は無かったはずだから、どちらかというと簡単だと思うんだけど。



「どうせならクリスも料理覚えちゃえば?」



おいおい。

どんな嗅覚してんのかは知らないが、まるでこうなることを読んでたかの如く、いつの間にか戻ってきてたノエルさんがクリスさんにかなりの無茶振りをしてるぞ笑



「無理無理。ノエルが覚えなよ」


「私も無理なの知ってるでしょ? 全てが炭になってしまうわ。この際、イースが覚えるってのはどう? ちょっと手伝ったりしてたじゃない?」


「えぇ〜!! シーマさんの料理は難しいですよー」



うーん…。

最近イースさんがエリシオンと一緒に行動してることが多いとは思ってたけど、もしかしたら、そういうことになるのかな。

イースさんもお年頃だし、フィリア王女から離れてもう自分の思うように生きてもいいんじゃないかな。

でも、そうなったらフィリア王女の面倒はどうするか…。それは俺が考えることじゃないな苦笑


とりあえず今は食べましょうかね。



「まずはマスの焼きものからですね。ちょっとクセのある味付けになってる上、骨も多少残っているので少しずつ食べるようにして下さい。リンダさんは…これで我慢して下さい」



俺はみんなの前に鮭のムニエルを、リンダさんの前にはレモンの砂糖漬けを置いた。



「うん。ちょっと味が濃いかもしれないけど美味しい」


「そう? ボクにはちょうどいいけど」


「ただ味付けして焼くだけじゃないのは何故だい?」



みんなそれぞれガツガツ食べている中、ロビンさんが俺にムニエルにした理由を聞いてきた。



「焼き過ぎると全体が固くなるので、粉をまぶして表面はカリッと、中身はふわっとさせたくてこうしてます」


「なるほどな。実際にこうして食べてみるとそれがよくわかる。魚醤に『いんにく』を入れてさらに食欲をそそる味になっているよ」


「…自分だけズルい」



ボソッとリンダさんの恨み節が聞こえてきたような気がするが、ここは聞こえない振りをしておこう…。


さぁ次、次。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る