第280話 市場
「おぉー!!」
港町サザンベールの市場はヤバい。
魚がある。
それだけで異世界の血が騒いでる。
でも、生の刺身は無理そうだな…。
「シーマ、何だか随分と目がキラキラしてるようだけど、何かいいモノでもあったの?」
俺の目の色がそんなに変わってたのか、セレナが問いかけてきた。
「あぁ。俺の知識がこれ買えこれ買えってうるさいくらいだよ笑」
「ふーん。まぁ美味しく食べれるなら何買ってもいいけど、興奮してアイテムボックスをバラすような真似はしないでね」
「それは大丈夫だ…と思う」
「本当に大丈夫なの? シェリル、シーマを厳しく見張っててね!!」
「任せて…って言いたいところなんだけど、シーマが買うものは『当たり』の可能性が高いからさ、ボクもきっちり見定めておかないといけないんだよねー」
「2人とも何でそんなに前のめりなのよ苦笑」
「しょうがないわよ、セレナ。その2人に任せておきましょ。私たちは美味しいものが食べられればそれでいいじゃない」
「そう…なのかな…」
俺もシェリルも当てにならないと、やたら心配してたセレナだが、どうやらフィリア王女に諭されて落ち着いたようだ。
だって目の前にはこんなにいろんな魚がいるんだよ。
興奮するなってほうが無理だ。
とりあえず、お店の人に聞きながらいくつか買ってみることにした。
・オルトロス → タコ?
・クラーケン → イカ?
・エビ → エビ?
・クラブ → カニ?
・マス → 鮭?
・シーバ → スズキ?
こんなところだろうか。
エビはエビなんだな…。
本当はいっぱい買いたいところだが、怪しまれても困るのでほどほどにしておいた。
これが当たりなら、ルート商会としてシェリルに買い付けてもらうつもりだ。
でもその前に嫁ズ+王聖女を味で納得させないといけない。まぁよっぽどのことがない限り俺が負けるわけはないのだが、セレナあたりは食べ慣れてないだろうからな…拒否感があるかもしれない。そこをどう上手く丸め込むのか、俺の腕の見せ所だ。
「ねぇシーマ、こんなに買っちゃったけど大丈夫なの?」
案の定、心配したセレナが俺に聞いてきた。
「あぁ、全然問題ない。っていうか俺的にはもっと買いたかったんだけど、目立つ訳にいかないからこれでも我慢したほうだぞ」
「本当に美味しいのこれ? ちょっと生臭臭かったけど…」
そうか。
フィリア王女はそう感じるかもしれないな。
王女様が生魚に触れるとは思えないし苦笑
「まぁ俺が調理したものを食べてみてよ。それでダメなら諦めるからさ」
「シーマがそこまで言うなら頑張って食べてみるよ」
「私もそうするわ。美味しいかもしれないものをみすみす逃すわけにはいかないもの」
どうやらセレナとフィリア王女については何とか説得出来たようだ。
「シェリルはどうだ?」
「ボクは商人として一応一通り食べたことがあるからさ、食材云々よりも、シーマがどう料理するのかが気になるかな…。それによって商会で取り扱うかどうかが決まるからね」
「なるほどな。でもそんなに期待されても困るぞ。俺は好きなように料理してみたいだけだからな。みんなの口に合うかどうかは別問題だし」
「シーマさんはそんなこと言ってるけど、セレナもシェリルも今までハズレたものなんてあった?」
「…あったっけ?」
「…ないかも」
「ほら見なさい。シーマさんが美味しいと思ったものはみんな美味しく感じるのよ。わかった?」
何で、ここにきてフィリア王女が微妙に逆ギレしてるのかがわからん苦笑
つべこべ言わずにさっさと作れってことなのかな?
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