第266話 お風呂
「シーマに鍛治スキルなんてあったっけ?」
部屋で俺が作業しているのを見て、シェリルが声をかけてきた。
「いや、ないよ。だからさっきエルピス様にもらってきた」
「あのね、シーマ。隣りの家から野菜分けてもらうような感覚で、神様からスキルをもらっちゃダメでしょ」
今度はセレナが俺の行動を窘めるように言ってきた。
「ダメ元でお願いしてみたらくれたんだよ。クラリスを助けたんだし、それくらいもらっても大丈夫だよ」
本当はもっとゲスな条件付きだったが、それを嫁ズに伝えるわけにもいかない。もっとも神様が聖女を乗っ取ろうとしてるなんて言っても信じてもらえないかもしれないけど...。
「そのスキルを使ってシーマさんは何を作ろうとしてるんですか?」
早くも嫁ズと仲良くなり、もはや俺よりもこの部屋の住人となりつつあるクラリスが聞いてきた。
「異世界の記憶にある魔道具を作ろうかなって思ってさ。適度に熱いお湯に体を浸けて疲れを取るんだよ。もし、これが上手くいけば新たに作る宿屋にも入れようかと思ってるけど」
「「「ふぅーん...」」」
さすがにどんなものかは分からないみたいだな。
浴槽はどうにでもなりそうだけど、問題は水の魔石と火の魔石の組み合わせだろうな。
この場合は、適度な温度でお湯を出すというよりは、水の魔石で一旦水を溜めてから火の魔石でそれを適度な温度まで温めるほうがいいんだろうな。前の世界でいうところの追焚き方式だ。五右衛門風呂方式か?
少し時間がかかってしまったが何とか形になった。
本当にクラフトスキル様々だ。
イメージしたものに対して魔力がどんどん使われてしまったが、何にせよ、待ち望んだお風呂が完成した。
浴槽は、今後の幅広い使い道を考えた上で、何人か入っても大丈夫なくらい大きいものにした。
えっ、何の使い道かって?
混浴に決まっているじゃないか!
男の夢とロマンだからな!!
いざ入浴しようとして、嫁ズたちが見守る中、浴槽に水を溜めていたらある事に気が付いた。
どんな格好で入ればいいんだ?
嫁ズはともかくクラリスに裸を見せるわけにはいかないよな。
水着なんて持ってないし...。
クラリスに部屋を出ていくように言うか?
どうしよう...。
そうだ!
湯浴み着を作ってしまえばいいんだ。
思い立った俺はすぐに、クラフトスキルでとりあえずトランクスタイプの自分の分と、ワンピースタイプの女性用の分を3つ作ってみた。
「わぁー」
「何これ、可愛い」
「すぐに着ていいんですか?」
嫁ズは感想を口にしてたが、何故かクラリスだけはすぐに着替えようとしてた。
ちょっと待て。
「お湯に入る時に着る用で作ってみたんだけど、とりあえず俺だけ着替えて入ってみるからちょっと待ってて」
「えぇ〜」
「自分だけズルい!!」
「この服が私に着替えてって言ってます」
おい、クラリス。何だそりゃ。
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