第262話 ボブ最強説



翌朝。

クラリスと入れ替わった為、俺は1人で起きていつものようにキッチンで朝食を作っている。



「あらあら、朝早くから準備してるんですね?」



クラリスが起きてきた。



「ブフォッ!!」



クラリスのその姿を見て、俺はたまたま口にしていたお茶を吹き出してしまった。



おい。

ちょっと待って。

髪がバッサリ切られてるぞ。


しかも、俺好みのボブ。


ピンクのボブはヤバいな。

どストライク過ぎて、むしろ敬遠級だ。


確かに昨日、髪を切るように言ってはみたけどさ…。それにしても早すぎね?



「クラリス、もう髪の毛切ったの?」


「はい。昨日の夜セレナとシェリルといろいろ話してたら、どうせならもう切っちゃおうかってなって…。思い切ってバッサリ切ってもらっちゃいました。どうです? 似合ってますか?」


「あぁ。スゴく似合ってるよ。もともとその髪型だったんじゃないかってくらいにしっくりきてる」


「本当ですか? よかったです~ 。聖女っぽさは消えますかね?」


「そうだね。ずいぶんと印象が変わってるから、マジマジ見ないと聖女クラリスって分からないかもしれない」


「よーし。それならこれからの逃避行も問題なさそうですね!!」



しかし、本当に思い切ったことをしたもんだな。

それをさせたのが、俺の言葉なのか彼女自身の心境の変化によるものなのかは分からないけど。



「自分で言っておいてなんだけど、本当に勇気のある決断をしたね」


「そうなんです。だから、責任取って下さいね❤」


「えっ?!」


「私、本気ですから!! 何だったら、フィリアよりも先に嫁入りしたいです」


「どうしてそこまで俺を?」


「うーん、そうですね…。まず、助けてくれた時がカッコよかったです。それと、エルピス様の使いであること。そして、料理が美味しいこと。最後に、みんながみんな楽しそうだということ。以上です」


「…」


よくもまぁ、そんなにすらすら出てくるもんだ。

たかが一日足らずなのによく見てるなー。


楽しそうか...。



「昨日の夜、セレナとシェリルとたくさんお話したんです。もちろんシーマさんのことも聞いたんですけど、セレナやシェリルのこともいっぱい聞きました。2人とも楽しそうだし幸せそうでもありました」


「...」


「私はこれまで、聖女としての使命感でいっぱいでした。それはそれで達成感もあったし、人のためになるという意味では幸せでした。でも、今回このような状況になって、監禁されながら改めて人生を振り返ってみた時に『女としての幸せ』はなかったことに気付いたんです」


「...」


「セレナやシェリルにはそれがあった。しかも私の救世主が2人を幸せにしてた。私もその中に入りたいって思ったので、その思いも2人に伝えました」


「2人は何て言ってた?」


「嫁が増えちゃうのは複雑だけど、シーマが選ぶなら仲良くやっていこうねって...」


「そうか...」


「で、どうなんです? 私ではダメですか?」


「元とはいえ、クラリスはエピリシア教国の聖女だったんだ。オルティアに連れて帰ったとしても何か問題があるかもしれない。フィリア王女はもちろんだけど、ゼスト国王の了承が得られないと難しいかな」


「そうですか...。私的にはゼスト国王様よりもフィリアのほうが手強いのですが、まぁそれでもシーマさんの言ってることは正しいと思います。もし、了承が取れた暁にはよろしいですね?」


「そうだね。逃げ場もなさそうだし...」


「えっ?! 何か言いましたか?」


「あ、いや、こっちの話だよ」


「よろしいですね?」


「はい...」


「やったー!!」



はぁ...。


ん? 待てよ?


結婚したら、あのおっぱいが揉み放題だぁ!!






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る